前回も触れたように、SSというハードは格ゲーとシューティングに大きなアドバンテージを誇っていた。なので、両ジャンルを愛好する私のようなユーザーにはこれ以上ないハードであったのだが、前者はまだネット対戦がなく、後者はすでにニッチなジャンルであるセールスが望めないと、会社的にそう旨味がある訳ではなかったのだ。
また、確かに格ゲーにはアドバンテージはあったものの、後発となったSS版ストリートファイターZERO2は、デモがムービー垂れ流しではなく、そしてαの隠しキャラが出現、という売りこそあったものの、すでにロード時間はさほど遜色はなく、そしてボイスがメガドライブのようにしゃがれ声が多かった事などから、SS版も微妙な点が実は多かった。
内蔵音源の質はSSも負けてはいないはずなのだが、最近読んだ本によるとそれを最大限に活かせるほどのメモリの容量がなかったらしい。それが原因だったのかも知れないが、当時はそんな事は知るよしもなかったので、その辺りから音源はPSの方が有利、というのが自然とインプットされてしまっていた。
それでも1996年は、同年最大の話題作であった「サクラ大戦」の発売もあったりなど、SSも決してPSには負けていなかったように思う。まあ、すでに「鉄拳2」や「バイオハザード」などのミリオンヒットがあったPSに比べると、確かに売り上げでは劣っていたのではあるが、まだ印象としては五分五分に近いものがあったのだ。それが、1997年になると、FFVIIの発売もあって一目瞭然なぐらいにPSにリードされていってしまう。
実は、この年は最もSSソフトがリリースされていった年であったらしいのであるが、オリジナル・移植ともに話題作を連発していたPS陣営と比べるとどうにも話題作に乏しく、どう見てもSSが劣勢なイメージは拭えなかった。私としては、「沙羅曼蛇デラックスパック」や、「ストリートファイターコレクション」など、私好みのゲームがSS先行リリースだったのは嬉しかったのであるが、それも少しでもSS版のセールスを増やしたいという苦肉の策であったに違いない。すでにSSだけ持っているというユーザーは多くはなかったと思われるので、同時に出したらそりゃセーブや周辺機器に安定しているPS版を選んだユーザーの方が多くなってしまっただろう。
ここでセーブの話が出たが、内蔵メモリは非常に容量が少ないので、「ときめきメモリアル」を購入した際にパワーメモリーも購入した。このパワーメモリーは逆に非常に容量があり、わずか128KBのPSのメモリーカードの何倍ものデータを記録出来たものだった。特に、シミュレーションなどをプレイしない私にとってはその容量は十分であり、記録で困るような事は皆無であったかと思う。
しかし、今では非常に有名な話であるが、このSSのスロットが非常に脆弱なのだ。付けっ放しのままならほぼ問題はないのだが、遂にそうはいかない時がやってきてしまう。それは、1997年11月に発売された「X-MENVSストリートファイター」のためである。これはSS初の4MB拡張RAM専用ソフトであり、キャラクターパターンの完璧な移植はもちろんの事、立ち上げ時のロード以外もほぼノーロードに近いという究極の出来であった。なので、ゲーム自体の評価は非常に高かったのであるが、当然パワーメモリーとの共用は不可能である。
ここで、パワーメモリー使用後では初めてそれを引っこ抜く羽目となったのだが、ここで初めてその脆弱ぶりを実感する事となるのだ。とにかくデータが壊れやすく、油断するとすぐに意味不明なセーブデータが埋め尽くしてしまう。数年後、ハードオフなどで中古の白サターンを購入、セーブ用と格ゲー用で分けるまでは、とにかく苦労させられたものだった。これにより、かなり貴重なデータを失った私は、以降マルチタイトルのRPGなどはほとんどPS版を買うようになっていったものだ。