2007年10月、一世を風靡したあのPRIDEが事実上の崩壊を遂げた際、その全盛期に徹底的な引き抜き攻勢をかけられた怨敵である前田日明は、ここぞとばかりに「ざまあみろ!」と快哉を叫んだ。
「因果応報すね、本当にね。天網恢恢疎にして漏らさずって老師の言葉があるけど、その通りじゃ。天は悪い事は見逃さないと、罰を与えると、その通りですよ。」
さすがに「ざまあみろ」発言は問題となり、のちに谷川貞治氏が謝罪するなどの騒動にまで発展したものの、やはりプロレス側の人間にとってはこの引き抜きによって外国人スターを失い、結果リングス崩壊の遠因ともなった訳だから、前田の気持ちというのは非常に理解出来るものだった。また、「天網恢恢疎にして漏らさず」という老師の言葉も、実はこの時の前田の発言で初めて知ったのだった。
前田は幼い頃から読書家であり、論語の本まで出したような記憶もあるので、この辺りの引き出しというのはさすがである。PRIDEの崩壊は、この前年にフジテレビから打ち切りをしかけられた事により、ある程度の予兆は見えてはいたものの、やはり「盛者必衰の理をあらわす」の通り、勢いのあるものは必ず衰えるの典型を表していた。
私自身、PRIDEは最初から見ていたし、特に桜庭和志の快進撃の際には快哉を叫んだものである。しかし、皮肉な事に「プロレスラー」を名乗る桜庭が活躍すればするほど、純粋なプロレスの人気は下がっていった。特に、この2005〜2007年辺りはまさに新日本プロレスの暗黒時代であり、G1クライマックスの決勝でさえ超満員にならなかったほどの低迷をしていたのである。逆に準プロレスを貫き通したノアは好調であったが、いかんせん三沢と小橋の後が続かず、小橋の腎臓癌、そして三沢の非業の死、マスコミや他団体に恫喝をしていた仲田龍氏もあっさりとこの世を去るなど、良い時代はあまりにも短かった。
PRIDEが崩壊した2007年も、まだまだ格闘技は好調であり、新日本プロレスは低迷を続けていた。なので、本音を言ってしまうと、この崩壊によって少しはプロレスにも風向きが戻るかな、という期待を抱いたものである。現実はそうもいかず、PRIDEから分裂したスタッフたちが新たな格闘技団体を興し、TBSなどが中継を続けていった。しかし、さすがにほとんどの外国人スターがUFCなどに移籍してしまっては、かつてのPRIDEのような華は微塵もなく、2011年頃には地上波も大晦日も撤退していったかと思う。
その後はブシロードの買収、そしてオカダ・カズチカの凱旋により完全に新日本プロレスが息を吹き返していったのはこれまで何度も触れた通りだ。あいにく、このコロナ禍によって、それまでの好調に水を刺された感じではあるのだが、WWEも遂に有観客を再開するというし、ワクチン接種さえ進めば元通りになるのもそう遠くはないだろう。
まあそれはさておき、ここで私が言いたい事は、因果応報は必ず起こる、という事である。前にも触れたかと思うが、例えば私の事をネットで誹謗中傷した女などは、もしやり返そうとすればこちらも出来ただろう。しかし、面倒だと思い、私が選んだのは完全無視、という形であったのだが、のちにその人は重度の腰痛となりしばらく戦線離脱していき、今では完全にフェードアウトされたようである。
また、あまりにもやりたい放題、自己中心的な人間もいたのであるが、そうしているうちに味方もいなくなり、同じく居場所を失いフェードアウトしていったものだ。もちろん、私は何もしていない。つまり、良い時は長くは続かず、いつかは必ず終わりを遂げ、報いを受ける、という事を自ら証明したに過ぎないのである。
他人に心ない暴言を吐いたり、好き勝手振る舞う人間に対しては、そのうち必ず因果応報の報いを受けるものである。つまり、実際に報いを受けた人間というのは、そんな簡単な事も学んできてこなかった無教養な人間に過ぎなかった、というものだ。