香港と台湾の区別。 | ONCE IN A LIFETIME

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フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

最近、ファーストキッチンが香港発祥のメロンパンに台湾の名前をつけて販売するという、なんとも不愉快な事柄が起きていた。一応その後謝罪し、現在では抗議を受けて、元の香港メロンパンという名前で発売されているそうであるが、公式の謝罪によると、香港発祥という事は認識していたが、「台湾の方が日本人にとって馴染みがあるから」というとんでもない理由であり、再び炎上する騒ぎともなってしまった。

 

もっと端的に言えば、「大抵の日本人なんて香港と台湾の区別もつかないから、だったら馴染みのある台湾で売っちゃえ」と言う事なのかも知れないが、実に不愉快ではありながらも、実際にほとんどの日本人は区別がついていないのも確かなので、不快ながらもそれも一理ある、と思ってしまうのも事実である。

 

1980年代までは香港映画の圧倒的な人気もあり、香港の注目度は今とは比較にならないほど高く、現地ではホテルに日本語話者を用意するのはもちろん、警察ですら日本語対応可能な部署が存在していた。逆に台湾と言えば、まだ戒厳令のさなかであり容易には旅行に行けない地域だったので、現地の様子などはほとんどこちらに入ってくる事はなかった。唯一の例外は野球選手であり、1980年代前半に中日ドラゴンズが郭源治を雇い大成功を収めた事から、その後も何人かの台湾人が日本プロ野球に入団してきた。そして、当時はそのプロ野球そのものが、現在とは比較にならないほど注目度が高かったので、一般の日本人にもそれなりに知名度はあったかと思う。逆に言えば、アジアから唯一の野球選手の輸出先、という程度の認識しかなかったのだ。

 

それが逆転し始めたのは、1990年代半ばになってから。ジャッキー・チェンは相変わらず一線を張っていたが、彼以外の香港映画はほとんど上映されることはなくなっていった。それと入れ替わるように日本にやってきたのが、台湾からやってきたビビアン・スーだ。最初はあまり人気はなかったものの、のちのウリナリで大ブレイク、グループながらも紅白にも出演するなど、当時では間違いなく最も知名度のあった外国人タレントであったかと思う。

 

ただ、彼女に続くタレントはやってこなかったため、番組が終了し、ビビアンが拠点を台湾に移すと、ほとんど日本で台湾の事は語れなくなった。そして2004年頃、日本のメディアは某国の侵攻を受け、香港・台湾いずれの存在感も埋没してしまう。ただ、それでも台湾に関しては、李登輝が大統領になって以降の民主化政策により、旅行先としても身近な存在になり、そして日本のメディアでもハーリーズーという現地の日本贔屓の連中が紹介されたりするなど、少なくとも香港よりかは注目度は上にはなっていた。

 

そして台湾が改めて注目されるきっかけとなったのが、2011年3月の東日本大震災である。震災直後から祈りのメッセージが各所でアップロードされ、人口2300万人程度ながらアメリカに次ぐ世界で2番目に高い募金額を投じてくれるなど、ここで某国贔屓ばかりのテレビに憤慨していた人たちを中心に、「これからは日本を応援してくれる台湾を大切にしよう!」という流れに一変するのだ。

 

この辺りから、ネットでもやたらと台湾贔屓な投稿が目立つようになるが、正直私の感想で言うと、なんとなく向こうの人が日本を好きでいてくれるからこっちもそう言っておこう、的な空気の方が強かったように思う。私などはその年を最初として、計3回足を運んでいるし、台湾の歴史自体も勉強したものだから、一応一般的な日本人よりかは台湾については詳しいとは思うのであるが、やっぱりほとんどの日本人はそうではないと思うのだ。

 

実際、向こうでは日本のチェーン店ばかりだし、ナイトマーケットなどへ行ってもこちらが日本人と分かると、大抵は歓迎してくれるパターンが多い。なので、現地で日本の人気が高い事は間違いない事実なのではあるけれども、それでも現地に行かなければ本当に理解出来ない事もまだまだ多い。まあその際たるものが、台湾は可愛い子ばかり、とかなのであるが、確かに日本人好みの子が居るのは確かとは言え、当然皆が皆そうではない。5chのまとめなどでは可愛い子しか上げられないので、褒めるリプライしかついていない事がほとんどなのだが、実際に現地に足を運んだ私からすれば、いやいやそうじゃないよ、現実見ろよ、としか思えないのである。

 

ただ、表面上ではそうであっても、実際に1990年代とかに比べたら注目度は遥かに上がっているし、実際に現地に行けば日本人だらけである。対照的に、すっかり地味な存在となってしまった香港、同じ中華圏そして繁体中国語を使用している事もあり、最初から歴史に興味がない日本人にとっては、まあどっちがどっちだろうと関係ない、っていう感覚になるのも仕方ない事かも知れない。

 

しかし、当たり前であるが、実際に一度でも足を運んでしまえば、香港と台湾を混同する事は一切ないと言えるだろう。似て異なるどころか、正直似てすらもいない。それぐらい全く違う世界なのである。なので、数年前のちびまる子ちゃんの簡体中国語のシェーシェー事件とか、そして今回のメロンパン事件など、その違いが全く分かっていない事案というのは腹立たしい事この上ないのだ。

 

もちろん、自分も欧州の小国、特に旧共産圏などは良くわかっていない部分も多いが、少なくとも香港・台湾は近場であるし、しかもいずれも歴史上日本が大きく関わっている地域でもある。別に私のようにマニアになれとも言わないし、歴史を全部覚えろとも言わないが、少なくとも「全く別のもの」という認識だけは抱いてもらいたいものである。