突然もっと軽い自転車を求めはじめた私は、2005年の6月頃に、どこのオンラインストアかは覚えてはいないのだがGIANTのOCR2を9万円ほどで購入した。しかし、いざ乗ってみると思ったほどの爽快感はない。それもそのはず、当時ジャイアントが販売していたOCRシリーズというのは完全にコンフォート寄りであり、スピードよりも街乗り向きのロードバイクであったからである。
まあ、最低でも15万は出さないとまともなロードは買えないロードバイクの世界なので、9万と言う価格からしてもうそれはお察しの通りではあるのだが、これはまさにロードの知識がほぼ皆無でありながら通販に手を出して失敗したといういい例である。
この辺りが、今なおスポーツ自転車が対面販売メインな理由だ。1台目を求める客はほとんどスポーツ自転車の知識などは皆無なので、細かい知識までカバーしてくれるプロフェッショナルのサポートが絶対に必要となってくるのだ。もちろん、あえて高い自転車を薦めてくる可能性もある、と言うかほとんどそうなのであるが、同じメーカーであれば「高い=良いもの」と言う方程式が完全に成り立つので、お金さえあれば妥協してはいけないのが業界の絶対的な習わしだ。
と言う訳で、あいにくではあるがこのOCR2でロードの楽しさに目覚める事は出来なかった。スペック的にも、フォークこそさすがにカーボンではあったが、振動吸収性皆無に近いスローピングのアルミフレーム、コンポもまだ9速時代であり、105以上とは圧倒的な性能差があったティアグラ、もちろんブレーキはコストカットのためのテクトロブレーキであった。このブレーキはとにかく性能が悪く、ほとんど効かないと言っていいレベルだった。
さすがに命に係わるパーツなので、すぐに105グレードに交換はしたのであるが、リアがワイドバージョンなのに気付かずにそのまま使ってしまい、ヤフオクで売った時にブレーキシューがタイヤに当たって擦れてしまっていた、と言うクレームを受けてしまった。幸い、ロングキャリパーの新品が通販であったので、落札者の住所に送って事なきを得たものの、スポーツバイクはプロによるアドバイスがないまま購入するとこうなってしまう、と言う見本を地でやらかしてしまったのだった。
まあ、さすがにそれでもMTBよりかは快適ではあったのだが、半年近くも経つとさすがにもう少し良いバイクが欲しいと思うようになってきた。そこで、6年前に訪れたセオサイクルへと向かい、当時お世話になった店長に2006年度、新たに10スピードとなった105を搭載したTREK1400などを薦められた。
当時のTREKは、ランス・アームストロングの拘りによって、サイズ52以上は全てホリゾンタルのモデルだった。私自身も、OCRのスローピングの振動吸収性の悪さに辟易していたし、またその形状自体もMTBを彷彿とさせたため、まだ「ロードバイク=ホリゾンタル」と言う強い拘りを持っていた頃だった。
そんな理由もあって、再びTREKの購入を考えたのであるが、正直言うとその年のディスカバリーカラーのペイントがあまり好きではなかった。今見ると十分かっこいいのであるが、自分的には前年度のUSPSカラーの方が好みであり、特にマドンSL5.9と同一カラーの1500がお気に入りだった。コンポはアルテグラの9速であり、10速化への猥雑さを考えたら2006年モデル一択であったのだが、店長のお勧めがあったにも関わらず、結局在庫処分で割安となった1500を、サイクルヨシダの通販で購入してしまった。
TREKは対面販売が絶対であり、実際にヨシダのサイト上でもそう記してあったのであるが、実際は建前であり普通に発送してくれた。ペダルはまだMTBのSPDを使用していたと思うが、それだけ取り付けて漕いだ所、OCR2とはまるで違う乗り心地に驚き、「これが本当のロードバイクなのか」と感動してしまったほどだった。
実際は、当時のTREKのアルミフレームは大した売りもなく、またフォークもOCLVカーボンでもなかったため、振動吸収性は昨今のEmondaなどに比べれば大きく劣るものだった。実際、ロングライドをやる度に、身体中にダメージが残って仕方がなかったほどである。しかし、それでも楽しくて楽しくて仕方がなく、それはそれはロードバイクの魅力に取りつかれていったものだった。
当然、コンポにも詳しくなっていったものだったが、やはり乗っているうちに10速化の欲望が生まれてきた。とりあえず、STIレバーとチェーン、スプロケットさえ変えれば10速化は出来たのであるが、やはりフロントの変速がうまくいかず、結局フルアルテグラの6600へと変更してしまった。もちろん、それなりに金がかかったものであるが、その度に古いパーツをヤフオクで売り飛ばしていったので、割と最少額の負担で何とかなったものだと思う。
当然、その性能は素晴らしく、特にフロントの変速が気持ちが悪いぐらいにすっとHiに登っていったものだから、それはそれは感動したものであった。そして、さらに欲望の尽きない私は、ディレイラーやチェーンクランクをデュラエースに変更。前者はほとんど差がないのであるが、後者は剛性感に大きな違いがあり、これはあからさまにアルテグラとの違いを感じたものだった。
しかし、やはり最も性能に差が出るのは当然フレームである。当時、あるスポーツバイクチェーン店に潜り込んでいた私は、TREKマニアとしてはやはりマドンが欲しくなり、特に同じUSPSカラーが欲しかったのであるが、2007年のある日それがヤフオクに出品され、12万円ほどで落札できたのだ。