ファミコン以来、私が最も愛したハードは何かと問われたら、迷わずセガサターン(SS)と答える。SSの発売日は、忘れもしない1994年11月22日の事であったが、ローンチの目玉が当時すでにゲーセンでは旧作であった初代バーチャファイターというのは少々弱く、さらにその後ゲーム自体にあまり興味を抱かなかった事もあってしばらくその情報すら得ていなかった。
1996年3月、突如として真っ白なボディにモデルチェンジしたSSは、同時に20000円に大幅値下げされた。当初の価格が44800円と言う事を考えたら、いかに内部回路を見直してコストダウンを図ったとは言っても、これではどう考えても赤字であっただろう。しかも、今のようにネットで課金も出来る時代ではなかったのだから、尚更だ。まあそれはともかく、ほぼ同時期に待望のグラディウス・デラックスパックが発表されたので、タイミングとしては絶好であったのだが、自分としてはどうしても「ナムコミュージアム」もプレイしたかったので、4800円ほど割高でありながら初代PSを選択した。
この時、同時に「極上パロディウスだ!デラックスパック」も同時購入したのであるが、見た目の移植度自体はさすがに次世代機、と唸らせるものがあったとは言え、アーケード版をやり込んだ私としては、やはりまだローンチという研究不足な頃だけあって細部の粗が目につき、また若干の操作遅延も感じたためにやや不満を募っていた。そんな時、たまたまある雑誌を目にし、半年遅れで発売されたSS版の方が出来が良い、という記事を目にする。初代PSでは当然セガのゲーム、特にバーチャファイターをプレイできないというジレンマもあったし、次第にSSに興味を抱き始めて行った。
そして遂に、当時相模原にあった行きつけのゲームショップで中古のSSを購入する。デザイン的にあえて初代のグレーを購入したが、この時点で既に14800円ぐらいとかなり安く購入できた。もちろん、同時に購入したのは極上パロディウスと、そしてバーチャファイター2である。すでにどちらも2000円台前半だった。当然、アケコンも必須であったのだが、当時は今のような高級機など望むべくもない時代であったため、選択肢はセガのものとHORIの2択だけであった。前者はバーチャスティックプロと言う、アストロシティのコンパネをそのまま流用したかのようなトチ狂ったアケコンまでリリースしていたが、当然そんなものはオーバースペックであったので、無難にHORIのファイティングスティックをこれは新品で購入したと思う。
今のようにAmazonなどない時代なので、自分で探すしかなかったのであるが、HORIのアケコンに関してはそれなりに出回っていたので、大きめのゲームショップであれば大体置いていた。また、前述のバーチャスティックプロは24800円と言う、高くても6000円程度だった当時のアケコンとしては考えられないような価格付けであったのだが、今やそれが普通の高級機レベルであり、4万超えまで存在するのだから時代は変わったものである。
そして、肝心の極パロの出来であったが、別の粗があったとは言えさすがに2Dに強い事もあり、PSのそれを完全に超えていた。さらに、当時はコンポジット出力であったのだが、メガドライブの弱さとは対照的にかなり高画質であったため、同じく弱かったPSを凌駕していたのも満足だった。対照的に、バーチャファイター2は、さすがに1994年当時としては最高レベルの基板であったモデル2そのまま、とはいかなかったのであるが、アーケード版をほとんどプレイしていない私としては十分楽しめた。のち、オリジナルをプレイしてからはさすがにあまりの違いに呆然としたものであるが、さすがに初代VFでさえ完璧ではなかったのだからどうしようもなかった。
その後、アーケード版の移植は割とSSの方が先にリリースされていく事が多かったので、この辺りからは完全にSSメインであった。1997年1月に発売されたファイナルファンタジーVIIはさすがに発売日に購入し、それがきっかけで世間的にも完全にPS優位、対照的にSSの勢いは目に見えて落ちて行った。それでもSS贔屓な私であったが、さすがにミリオン連発する全盛期のPSとはあからさまな勢いの違いを感じ、1997年の年末頃になるとSSはすでに末期臭が漂っていた。
しかし、それでもまだ私はSS贔屓であり、PSソフトはほとんど購入した記憶がない。翌年はウィザーリィリルガミンサーガや、鉄拳3などを購入していったものの、FFVIIからそこまではほとんどないのだ。もちろん、単純に興味をそそられなかったゲームが多かった、というのもあるのだが、それ以上にPSが一般層向けにシフトしていったのが私の性格的に受け入れる事が出来なかった。
このあたりになると、FFVIIの成功によりムービーを前面に押し出したゲームが多くなって行ったのであるが、当然それはゲーム本来の面白さの本質とはかけ離れたものだ。つまりは「ゲームとは本来こういうものなのだよ」という、ゲームがゲームの持つ本来の面白さを示す事が出来ず、結果的にムービーに釣られて購入しただけの一般層に、ゲーム離れを起こさせてしまうきっかけを作ってしまったのだ。これは、FFXIが前作よりも大幅にセールスを落とした事からも分かるだろう。
しかし、それはしばらく経ってのお話。とにかく1997年になってからはSSの凋落に歯止めがかからず、完全にPS、そしてN64の後塵を拝していた。年末になると、4MBRAMを使用したX-MENVSストリートファイターや、デビルサマナーソウルハッカーズ、そして大作のグランディアなどで攻勢をかけるが、それでも100万はもちろん50万セールスにも届く事はなかった。
で、このような硬派なゲームが受け入れられなくなったセガ陣営はどうしたかと言えば、以前PCEが辿った道と同じ運命を迎える。そう、ギャルゲーの連発である。AV、特に裏ビデオがVHSの普及に大幅な貢献を果たしたように、男性ユーザーが主となるジャンルにおいての最終兵器とも言える手段がエロである。当然、PCと同じクオリティは発売不可能とは言え、もはや割り切ったかのようにそのジャンルで占められた。
家庭用ゲームにおいて、ギャルゲーというジャンルを確立させたのはもちろんかの「ときめきメモリアル」である。同時期に、エルフの「同級生」と始めとするシリーズも発売されていたが、さすがに家庭用では規制があり、そしてまだ「そういうもの」に偏見を持つユーザーも少なくなかったため、決してメインストリームとはならなかった。それが受け入れら始めたのは、やはり前述のようにときメモ、特に初代PS版であっただろう。
のちにSS版も発売され、しばらく経って私もグリーンのバックアップRAM同梱版を購入した。当然、ときメモはエロの要素は皆無であるものの、やはり記念碑的なゲームだけあって相当ハマったものである。しかし、そんな私でもあまりのギャルゲーの乱立には抵抗があったため、プレイしたのは比較的ときメモに近いテイストの「下級生」ぐらいだった。結局、「SS=ギャルゲー」という方程式はもはや避けられないものとなり、他機種のユーザーからは大きな偏見の目で見られるようになってしまった。
しかし、熱烈なSSユーザーの私に言わせてみれば、もちろんSSはそれだけではない。セールス的には不発であったとは言え、SSもPCE同様にシューティングゲームの宝庫だったからである。ケイブや彩京シューはもちろんの事、すでにアーケードでは過去作品であった「ダライアスII」や「メタルブラック」、そして東亜プラン最後のシューティング「BATSUGUN」までリリースされていったのはありがたかったし、かの「ダライアス外伝」も、Switch版が発売されるまでは家庭用で最も出来が良かった。
そして、1998年にはシューティングの歴史に燦然と輝く伝説的名作が2作発売、しかもどっちもSSオンリーである。一つ目は、弾幕シューティングの幕開けを開いたと言われる「バトルガレッガ」。ゲーム本来の出来はもちろん、SSでは考えられるだけのオプションを搭載した移植の見本であった。そして7月に発売されたのが、「レイディアントシルバーガン」だ。ゲーム雑誌において大絶賛、特にセガサターンマガジンでは狂ったようにプッシュされ、流通量に対してそのあまりの出来の良さから手放す人も少なく、中古市場では瞬く間にプレミア化した。
そして、長らくこの2作品がプレイ出来たのが、何を隠そうSSオンリーであったのである。ぶっちゃけ、贔屓目で言わせて貰えば、この2作をプレイできるだけでもSS所有の意義があり、かつPSソフト100本以上の価値があると言っても過言ではなかった。のち、シルバーガンは2011年に遂にXbox360に移植、ガレッガは2016年と2017年にPS4とXboxOneにそれぞれ移植されたため、プレイへの敷居は大分下がったのであるが、それまでは本当にSSだけだった。また、シルバーガンはXbox陣営オンリーのため、現状この2つのソフトをプレイできるのは、XboxOneとXboxSeriesX/Sのみという事にもなる。つまり、Xbox360もSS同様にシューティングが豊富であったため、SSユーザーには事実上の後継機に等しかった。もちろん、360がSSの次に思い入れのあるハードである事は言うまでもない。
PS3で起動できる初代PSとは異なり、SSはリアル実機が必須なのでおそらくここ10年以上はまともにプレイはしていない。もちろん、エミュレータという手段もあるものの、今やそれを好まない自分にとってはそれすらも数年以上は起動はしていない。ポリメガという機種も発表され、割と最近ようやく発売されたかと思うのだが、それでもレトロフリークのように手軽に購入できるまでは至っていない。このまま埋もれさすにはあまりにももったいないハードであるので、どうにかしてHDMI接続、かつ遅延なしでプレイできる環境を望みたいものである。