PCエンジンを語る・その3 | ONCE IN A LIFETIME

ONCE IN A LIFETIME

フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

アーケードカードの発売は、当初は1993年の12月の予定であったのだが、そこまでにRAMが確保できないといういかにもNECHE的な理由により、結局3月に延期となった。ローンチは餓狼伝説2であったのだが、すでにゲーセンでは餓狼伝説SPECIALが主流であり、2は完全に過去のものとなっていた。まるで、PCE版のストIIダッシュが発売された時にはすでにゲーセンではターボ一色であったと言う、これもいかにもPCE的な間の悪さであり、期待された通りのヒットには至らなかった。

 

確かに、アーケード版のキャラパターンを完全移植、というのは当時の家庭用ユーザーからすれば完全に夢物語であり、それを唯一実現可能とさせたPCEはさすがだな、とは思ったのだが、正直まだまだ餓狼伝説2と龍虎の拳では、PCEユーザーへの求心力は弱かったのだろう。もしこれが餓狼伝説SPECIALであったならもう少し話が違ってきたのだろうが、さすがのSNKもそこまで早い移植は認めてはくれなかっただろう。

 

そう言う訳で、世間的には大コケしたこのアーケードカードであったのだが、当時ネオジオにハマりまくっていた私的には魅力的な事この上なく、わざわざ地元で一番PCEソフトが豊富なお店にまで行って買ったと思う。しかし、確かにアーケードのキャラパターンの完全移植には感動はしたものの、それを帳消しにするぐらいの欠点が満載であり、完全に満足、という所まではいかなかった。

 

BGMはもちろんCD音源であるが、予算の都合かそのアレンジがいまひとつだったり、ボイスに全てADPCMを費やしている事の弊害としてSEがショボすぎるなどが挙げられるが、やはり一番の不満点はロードの遅さだろう。これは等速ドライブである以上どうしようもない事なのであるが、2Mビットでさえ長く感じたのに、単純にその9倍となればそれは長いに決まっている。餓狼伝説2はデモ画面から読み込みが開始されるため多少はマシなのであるが、龍虎の拳に至ってはその画面にCD音源を使用している関係から、ロードが完全にロード画面のみで展開されるため、これが本当に長くて長くてどうしようもないのだ。

 

それでいて、たまに読み込みエラーが起きて最初からやり直し、なんて事も頻発するし、これではとてもゲームにはならなかった。結果的に、SUPERCD-ROM2が一定の成功を収めたのに対し、アーケードカードは明らかな失敗のレッテルを貼られる羽目となってしまった。6月に発売されたワールドヒーローズ2や、年末に遂にリリースされた餓狼伝説SPECIALなどは、極めてアーケードに近い感覚でプレイできる極上の移植であったものの、時すでに遅く、すでに次世代機の扉が開いた後であった。

 

もちろん、PCEもPC-FXなる32ビット機を用意していた。しかし、これがPCESGに動画再生機能をつけた程度の代物であり、時代のニーズを全く読み取れていない代物となってしまった。当時、PCE専門誌を中心に家庭用は読んでいたので、こればかり情報を得ていたのであるが、当時の自分でもこれでは競合他社に勝てるわけがないだろう、と思っていたものだった。結果的にそれは的中、発売直後に当時町田駅そばに存在していたキムラヤで本体を見かけた事はあったものの、それっきり。PS・SSに全く及ぶ事なく、公称11万台を売っただけで、歴史の海に消えて行った。

 

それでも、私自身は次世代機にはあまり興味がなかった事もあって、しばらく餓狼伝説SPECIAL中心にプレイをしていき、1996年3月には、未クリアのままだった天外魔境IIもようやくクリアする事が出来た。その後、レンズの読み込み不良によりCDシステムがご臨終してからは、プレイする機会を失ったものの、PCを購入してからはPC上のエミュレータでプレイする事が出来た。

 

現在、レトロフリークにおいてHuカードのゲームはプレイできるが、あいにくCDは対応していない。昨年3月、コナミよりPCエンジンミニがAmazon専売で発売され、私も購入したのであるが、どうもラインナップがWiiやPS3と被るものが多く、さらに誰もが望んでいたマジカルチェイスが未収録という事もあり、割と最近手放してしまった。ソフト自体はまだ手元にあるので、たまには実機で起動してみたいとは思うのであるが、さすがに今更中古のDuoまで買う気にはならないし、さらに状態の良いものとなるとそれこそ10万近く、PS5並となってしまう事からも現実的ではない。

 

唯一の希望の光であったPS3のPCEアーカイブスも、ハドソンがコナミに買収され消滅してからはほぼ打ち切り状態、一応今でも既存のものは購入は出来るものの、新作の発売は絶望的だろう。なので、それなりの普及を果たしたハードとしては、かなり不遇な未来を迎えていると言ってもいいぐらいなのであるが、私自身サターンやXbox360の次ぐらいに思い入れのあるハードでもあるので、なんとかもっとプレイ環境が改善されれば、と思っている。