前回グラディウスIIIの記事において、かつてゲームを攻略するためには「ゲーメストの記事もしくはスーパープレイヤーの集まる店まで赴く」、基本的にこの2つしかなかった、と書いた。事実そうであったのだが、それらとは別に、これこそ最終手段として残されていたのが「攻略ビデオを見る」であった。
簡単にYouTubeを見ることが出来る今からでは想像もつかないだろうが、実はこのジャンルにおいてもビデオゲームは重要な位置を占めていた。その先駆けとなったのはやはりゼビウスである。VGMと同様、初の市販ビデオの発売のきっかけとなったのもやはりゼビウスであったのだ。アーケードゲームは基本、音楽、映像いずれも家庭には持ち込めない事が前提にあったから、メディアへの需要は家庭用のそれよりも高かったのだ。
そんな事情も相まったのだが、しかしビデオテープは生産コストも高かった事もあり、長くても30分だったので、当初は攻略よりも「環境ビデオ」としての側面が強かった。よって、私は見た事がないのであるが、この「ゼビウス」に関してもプレイヤーの腕前はいまひとつだったようである。
そんなアーケードゲームに対して、家庭用はビデオの需要は高くはなかったものの、それでもかなり初期から存在していた。初のビデオ化は覚えてはいないが、機器自体はファミコンであった事は間違いない。そして、その存在を有名にしたのはおそらく高橋名人絡みの攻略ビデオであった。最初は原作の知名度も相まって、「忍者ハットリくん」であったかと思うが、当の高橋名人自体はあまりアクションは得意ではなかったと記憶しているので、収録に苦労した逸話を聞いた事がある。
しかし、最初にビデオと言う存在を知らしめたのは、やはり「スターソルジャー必勝攻略法」ではないだろうか。かなり経った後に中古で購入し、今ではニコニコ動画などで見ることが出来るかも知れないが、夏のキャラバン直前ぐらいに発売されたソフトであったかと思う。純粋な攻略ビデオであるが、高橋名人はあらゆるメディアに出まくりで半ば芸能人に近い存在であったので、その喋りの上手さを聞いているだけでも面白い。
その後、家庭用はRPG中心となったので、存在したのはファミマガやファミ通、そしてゲームTV、通称GTVと言うゲーム紹介ビデオが中心だった。前者は販売専門だったので見た事はないが、後者はレンタルにも置いてあったので見た事のある人も多いだろう。今でもネットでいくつか見れるので、興味があればお勧めだ。
そして再びアーケード。当時のビッグタイトルはほとんどと言っていいほどビデオ化されたが、初めて攻略として機能したのはやはり「グラディウス」ではないだろうか。ゲーメストのシューティングプレイヤーとして名をはせた、「ああるじいぶう氏」によるプレイなのだが、途中編集もあるにせよ、見事な高次周のプレイが収録されている。特に、後にザ・ベストゲームでも紹介された、2周目以降のザブよけのパターンは見事である。これを見ればここでもう詰まる事はないだろう。
そして、ゲームのビデオ化の有効性を最大限に知らしめたのは、かの続編「沙羅曼蛇」であろう。こちらもゲーメストの元ライター、かつ全国的に名をはせたすぱいきっど大和氏の見事なプレイが収録されている。このパターンを完全にマスターすれば、1000万点も夢ではないかもしれない。それほどの出来である。
もう一つ、究極プレイが収録されたと言えばもうひとつのシューティングの雄、R-TYPEだろう。石井ぜんじ氏による復活を含めた2周目が収録されているとの事だが、あいにく私は未見である。しかし、PCE版発売時に、各出版社がこぞって参考にしたという事からも、その完成度の高さがうかがえる。
そして前回触れたように、キングレコードがグラディウスIIIとパロディウスだ!の「ノーミス1周かつ無編集」と言う究極のビデオソフトを1991年の元旦に発売した。1990年の年末頃に、ゲーメストのお店であるマルゲ屋が開店したのだが、その時の最大の目玉となったのがこれらのソフトだった。特に、前者は記録的なセールであり、マルゲ屋かつゲーメストの通販ランキングにおいて、数か月は1位だった事を記憶している。これより遥か前のAOUショーにおいて、ゲーメストが攻略に使用したビデオを流した所、ブースは黒山の人だかりになったそうなので、どれほどゲーマーらがグラIIIの動く後半面に飢えていたかが分かるというものだ。
キングレコードの勢いはさらに続き、同年夏には「ナイトストライカー」と「ワルキューレの伝説」のビデオも発売する。後者は未見であるものの、前者は全面オールパシフィストプレイと言う、東京の神保町にでも行かなければ見れなかったプレイが収録されており、こちらも伝説的な攻略ビデオとして名高い。
その頃には早くも「ストリートファイターII」もビデオ化されたが、「攻略」メインであるため、大半が投げはめに終始、と言った内容だった。反面、何故かファイナルファイトのビデオに関してはまるで発売の声が聞こえてこなかったので、遂にゲーメストが重い腰を上げて自社レーベルのビデオの販売に至る。こちらもまたハガーノーミスプレイ、と言う究極のプレイが収録されており、非常に完成度の高いソフトだった。
年末、「場外乱闘編」と称したストIIの新ビデオが発売、ストII人気も相まって大ヒットを記録した。その後もストIIはポニーキャニオンから製品化されていくが、1993年頃になるとゲーメストレーベルが本格始動化し、カプコンやSNKのソフトなどはほとんどそこから発売されていった。ビデオの低価格化もあり、餓狼伝説シリーズのビデオなどはかなり私も見返したものである。
その後も倒産するまでかなりの数のビデオがリリースされていったと思うが、私が最後にリアルタイムで購入したのは「極上パロディウス」だっただろうか。こいつによる1周、そして全キャラによるスペシャルステージクリアは実に見事なプレイであり、すでにスペシャル面をクリアしていた私にとっても大満足な一品だった。
今はもうYouTubeなどでいくらでも無料で見放題なのだから、当時を思えば凄い時代がやってきたものだといつも思う。しかし、ここに記してきたように、先人の苦労があったからこそ今があると言う事を、最近のゲーマーたちにも知ってもらいたいものだ。