前回の記事で、このゲームを語るうえで絶対に欠かせない難易度について触れたが、それにも関わらず当時は取りつかれたようにプレイするゲーマーも続出し、今なお熱狂的なファンがいる事も事実である。確かにグラディウスシリーズと言うネームバリューの価値は間違いではないのだが、おおよそ10年ぶりの続編となったグラディウスIV~復活~がそこまでのファンがついていないことからも分かるよう、決して名前だけでヒットした訳ではない事も確かである。
それは難しいながらも、グラIIIだけが醸し出す特別な魅力がある事も確かであり、「伝説から神話へ」と言うサブタイトルが示すよう、発売当時からすでにある種伝説的な存在として扱われていた事も事実である。そして、ゲーメストの攻略か、もしくはスーパープレイヤーのプレイでしか攻略が望めなかった時代、グラIIIを1周出来るプレイヤーと言うのは常に尊敬の眼差しで崇められた。ゼビウスが流行っていた当時、1000万点というのはゲーマーの勲章とされたらしいが、このグラIIIにおいてもそれに近いものがあったのだ。
とは言っても、あまりの特殊性からプレイヤーを選んだ事も確かであり、初代グラディウスやIIなどが比較的多数のハードで移植されてきたにも関わらず、このIIIに関しては長らくPS2版と、シリーズ全てをまとめたPSP版のみであった。最も移植の可能性が高かったアケアカも、2016年4月のグラディウスIIのリリースから長らく音沙汰がなかったため、さすがのアケアカでも無理なのか、と私も半ば諦めていた所だった。しかし、今年2020年初頭に、グラIIIより1年ちょい後でリリースされた「出たな!!ツインビー」が発売された事で、もしかしたらまだ可能性があるかも知れない、との希望を抱いた。そして、とうとう200作目と言う記念のおまけつきで、遂に31年の時を超えてアケアカへと降臨を果たしたのだ。
前回も触れたように、ほぼDLと可能と同時に購入した。その感動と言ったらなく、またアケアカでお馴染みのオプションの異様なまでの拘りも相変わらずであったが、他シリーズのようにBGMのステレオ化オプションがなかったのが多少残念であった。PS2版発売当時のインタビューにおいて、音源のステレオ化も検討されたそうだが、何かしらの事情により断念されたと言う。PS2版はCD-ROMであったので、もしDVD-ROMであれば可能であったかも知れないが、90年度のVGM大賞を受賞したほどのVGMはとにかくレベルが高く、これは是非実現して欲しかった要素だった。
さすがにアーケード版のモノラル音源をほぼ無加工で収録したと思われるPS2版よりかは音質が向上しているのが救いであったのだが、このVGMの要素もグラIIIを語るうえで絶対に忘れてはならない。それは、当時の攻略担当であったバイオ氏が、記事の最後に「このゲームはものすごくVGMが良いので、ゲーセンの方は是非ヘッドホン端子をつけてください」とお願いしていたほどである。もちろん、2月に発売されたサントラも大ヒット、なんとオリコンで26位を記録した。パイオニアである「ビデオゲーム・ミュージック」の19位には及ばなかったものの、それでもアーケードゲームのサントラとしては歴史的な快挙である。これだけでもいかに当時のファンが待望していたかが分かってもらえるだろう。
そして、私が初めて購入したVGMのCDもそれであった。まだFM音源メインであったにも関わらず、シューティングゲームを超越しているそのあまりにも美しいメロディ、そして音色と、それはそれは何度も何度も聴きいってしまったほどだった。また、当時としては画期的だった、声優による開発秘話まで収録されており、これも長年ファンの間では語り草であった。
このアケアカで初めてグラIIIに触れる人が居るのかどうかは分からないが、まず間違いなく魅了されるだろう。YouTubeでも聴けるかも知れないが、個人的には是非オリジナルのアーケードサントラを購入してじっくり堪能してもらいたい。
そして、当時は当然YouTubeどころか一般的なネットも存在しなかったので、前述したように、攻略と言えば「ゲーメスト、スーパープレイヤーのプレイ、そして口コミ」ぐらいしか存在しなかった。グラIIIは難易度こそ異様なものの、昨今の怒首領蜂のラスボスのような無理ゲーとは異なり、R-TYPEのような初見殺しの完全覚えゲーであった。なので、つまりはやればやるほど先へ進める事が出来ると言う意味であり、その辺りが多くのプレイヤーを引き込んだ理由でもあったのだ。
しかし、それでも今と比べれば攻略を知る機会は圧倒的に少なかったのも事実。しかし、発売から1年後、おそらく全グラディウスIIIファンが待ちに待った製品が発売された。それこそ、ゲーメストの全面協力の元、キングレコードから発売された攻略ビデオである。当時のグラIIIのトッププレイヤーのCVM氏とHIR氏が招かれたのであるが、このビデオにおける最大のコンセプトと言うのが「無編集ノーミスによる1周クリア収録」。つまり、復活前提の9面ですらミスが許されないという超絶的に過酷な条件の元に撮影が行われたのだ。
元々は、このグラIIIがCVM氏、そして同時発売のパロディウスだ!がHIR氏の担当の予定で行われたのだが、前者が何度プレイしても9面でハマってしまった。前述したよう、9面は復活前提のバランスだから、普通に1周するだけではそれが普通であるのだが、繰り返しになるがこのビデオは無編集ノーミスと言うのが最大の売りだ。つまり、9面でミスをしたらまた1面から撮り直しなのである。9面を繰り返すだけでも心が折れるのに、これはあまりにも過酷な条件だ。
結局、9面1ミスが最高であった彼のプレイは、2周目のダイジェストプレイにおいてでしか使われる事はなかった。それと対照的であったのがHIR氏である。最初は彼のパロディウスも上手くはいかなかったのだが、友人を連れてきて和ませる事によってノーミス1周を果たした。それで調子づいた彼は、グラディウスIIIも裏面2つを含むノーミスプレイと言う快挙を達成したのだ。
現在、このビデオはYouTubeで見る事が出来るが、正真正銘の完全無編集ノーミスプレイである。相変わらず「これは編集済みの詐欺ビデオ」などと言う、嫉妬からくるクソコメもついていたりするが、断じてそれはないという事をここで明言しておく。因みに、紹介が遅れたがCVM氏は2周目10面、そしてHIR氏は、無敵発覚前の公式レコードである、EDIT装備で3周目5面という、超絶的な記録を残した伝説的なハイスコアラーでもあった。
前回も触れたように、並みのゲーセンであれば3面後半でギャラリーがついたほどのこのゲーム、それが1周どころか2周以上ともなれば、彼のプレイ時にはどれほどのギャラリーがついたのか想像に難くない。今でこそそれ以上の記録が出ており、もちろんそれらも凄いのであるが、情報が限られた当時と今ではやはり同列に比較は出来ないだろう。よって、リアルタイム世代にとって、今なお彼の3周目5面と言うのは、ベーブ・ルースの本塁打記録よろしく今なお燦然と輝く大金字塔なのである。
私自身もどうしても動いている先の面が見たく、運よく町田のCD屋で売っている所を購入した。何度も何度も見返していったおかげで、壁であった3面もクリア、その後6面まで行けたのだがその時点でとうとう筐体が撤去されてしまった。それから数年はプレイする事がかなわなかったのであるが、2000年1月に、ミカドやHEYが出来る前のレトロゲームの聖地であった「トライアミューズメントタワー」へと足を運んだ時に久々にプレイ、なんと勢いで、しかも7面で不利と言われるD装備でありながらそれもクリア、いきなり9面まで到達してしまったのだ。
さすがに復活パターンもままならぬ当時ではそこで終わってしまったものの、運よく最寄りのゲーセンにも入荷し、しばらくの間プレイしていったのであるが、やはりどうしても9面が超えられなかった。その後PS2版を購入し、遅延がありながらもこちらは正攻法で無事1周クリアを達成する事が出来た。なので、一応1周クリアの腕前自体はあるのであるが、さすがに反射神経の衰えもあるのか、このアケアカ版ではなかなかそうもいかず、なんと未だに5面がやっとである。
もちろん、途中セーブも出来るのであるが、やはりいざやってみるとリズムが合わず、結局スタートからやり直してしまう。その辺りの習性は、やはりアーケードゲーマーとしての血が未だに流れている事の証明なのかも知れない。