いよいよ発売を控えた次世代ゲーム機であるが、売りのひとつとして4Kの120Hz出力に対応している、と言うのがある。つまりこれまで家庭用ゲーム機と言うのは草創期以来、どんなに画像が美しくなろうと1秒につき60フレームと言うのが常識であったのだが、この2020年において遂にそれが覆る時が来た、と言う訳だ。しかし、それを堪能するためにはそれに対応しているテレビを準備しなければならない。もちろん、PC用ゲーミングモニターであれば120Hzはもちろん、それを遥かに超えるリフレッシュレートを表示出来るモニターがすでに存在しているのであるが、ゲーミングモニターの平均的サイズはおおよそ24~27と、家庭用ゲーム機の一般的な使用を考えた場合は物足りない。
もちろん、大きいものでは40インチを超えるモデルもあるのであるが、PCに対応したスペックでそのサイズとなると相当な金額となるためそうそう手が出るものではなくなってしまう。結局、それは非現実的な選択となる訳で、一般的な液晶テレビから選択するしかないのであるが、なんと国内でそれに対応したテレビを販売しているのは現状LGだけなのだ。と言う訳で、次世代機発売を間近に控えた今、これまで使用していたハイセンスの廉価版テレビから、LGの55NANO91JNAへと新調した。
今年5月に発売された最新のモデルであるが、4K120Hzはもちろん、可変リフレッシュレート(VRR)にも完全対応しており、まさに次世代ゲーム機のために開発されたテレビと言っていい。もちろん、パネルも最も美しいと言われているIPSだ。平均12万円ほどであるが、これならもう少しだけ頑張れば有機ELが買えるので、正直本当はそっちの方が良かった、と言うのがあるのであるが、映り込みとそして最大の弱点とも言える焼き付きを考慮して、あえて技術が熟成している液晶のモデルを選択した。
まあ、実際焼き付きが出来るほど長時間使用はしないとは思うのであるが、まあそれでもすぐに買い替えられる代物でもないし、あくまでゲームメインなので液晶を選択した。サイズは5インチプラスの55インチ。正直、前にテレビを購入した時も55インチが良かったのであるが、あいにくハイセンスの該当モデルには相当のサイズがなかったので50インチで妥協した。本当言えば思い切って65インチでも良かったのだが、部屋のスペースと、また新たにテレビ台が必要ともなってしまうので、これはさすがに断念した。しかし、わずかプラス5インチであっても大分印象は異なる。正直、50インチだとまだ小さいな、と言う印象だったのだが、55インチでようやく目の前の視界が全てディスプレイ、と言う感じに至った。と言う訳で、50か55か迷っている人が居れば、スペースさえあれば迷わず55インチを選ぶべきだ。その方が絶対に後悔はしない。
さて、実際の使い勝手であるが、正直第一印象は「こんなもの?」だった。しかし、色々調整していくうちに、少なくとも4K対応のゲーム機に関しては驚くほどに綺麗な画像を映し出してくれた。また、前のハイセンスも廉価版ながらHDR対応であったが、正直画面が白っぽくなりすぎ、普通の画質の方が良いんじゃない?と言う感じでかなりいまひとつだった。しかし、やはりこちらはレベルが違う。HDR対応のソフトに関してはもうため息が出るほどの美しさだ。つまり、これでようやく真のHDRを堪能できた、と言う訳だ。
そして、さすがに次世代機対応を謳った事もあり、遅延もほぼ皆無、それこそゲーミングモニターにまるで劣らないほどの反応速度だ。ハイセンスも東芝同様、0.83msを謳っていたが、正直ゲーミングモニターと比較した場合若干の遅延を感じた。しかし、このLGに関しては全く違いを感じず、それこそ「わざわざ別にゲーミングモニターまで買ったのはなんだったのか?」と後悔の念さえ起きてしまうほど完璧な低遅延だ。さらにはサウンドも素晴らしく、これまでは5.1chシステムに接続しないと満足な音質を得られなかったのだが、サラウンドが不要であればそれもいらない、と言ったレベルだ。
UIにはもたつきを感じ、一般的なテレビとして使用するには正直東芝のエッセンスを受け継いだハイセンスの方が好みだった。もちろん、ハイセンスのハイエンドも考慮に入れていたのだが、やはりゲームに完全対応していなければ10万円以上は出せないので、現時点で一択のLGにした。しかし、ゲームに対しては完璧である以上、はっきり言って大満足である。購入直後に一気に値下がりが起きたのは正直納得いかないものがあるが、これは家電製品の宿命なため割り切るしかないだろう。それでも、繰り返しだがこのクオリティには大変満足だ。
ここで改めて思ったのは、高いものは良い、と言う事だ。前回テレビを買い替えた時は、まだ4K対応のゲーム機はもちろん、ゲームそのものに対しても本格的に再開はしていなかったため、とにかく安くBS4Kチューナー付きのテレビを買えればいい、と言う考えが最優先だった。しかし、2019年2月当時、それを積んでいるメーカーと言うのはほぼ東芝とハイセンスしかなかった。そして、前述したように55インチ以上が欲しかったのであるが、それだと東芝しか選択肢がなく、さらには最低でも11万円以上は必要だった。しかし、ゲームにまだ力を入れていないのと、日常テレビはほぼ見ない私として、テレビにそれだけ出す、と言う事は出来なかった。
そんな迷っていたある日、ハイセンスのテレビが突然7万円台前半まで値下がりし、その価格であれば、と言う事で50インチで妥協して購入した。液晶テレビと言えば大昔の残像感丸出しの印象が強かっただけに、初めてPS4を映した時の映像美には圧巻され、もちろんBS4Kの画質などは思わず笑みがこぼれてしまうほどの美しさだった。その勢いで翌月にXboxOneX、そしてPS4Proも一気に購入し、再びゲーム熱に火がつく、まで至った。ハイセンスはUIが優れており、おおむね満足であったのであるが、それでも50インチはやはり小さいな、とずっと思っていたし、またHDRも今一つだった事から、やはり妥協した事への後悔の念は消えなかった。
そして今回、12年ぶりにテレビに12万円出した結果、前述のように大満足と言う結果に終わった。そこで改めて思ったのは、テレビと言うものは簡単に買い替えられるものではないし、少なくとも数年使うものなのだから、後悔しないようにその時点で自分が出せる限界までお金を出して高いものを選ぶ、と言う事だった。これはスマホなどにも言える。2018年にiPhoneXSを購入した直後、もちろん満足はしたものの、スマホではゲームをしない自分には少しオーバースペックだと実感し、これならもう少し安いXRを買うべきだった、と後悔した事があった。しかし、スマホはもはや生活にはなくてはないもの、完全にライフラインのひとつであり、それこそ使用頻度で言えばPCやテレビの比ではない。それなら、妥協せずにその時点で最高の物を買うべきだ、と思うようになっていった。
「高いものは良い、安いものは悪くて当然」と言う考えは世界的には一般的なのであるが、「客は神様」と未だに信じて疑わない人間が多いこの日本、そんな市場原理を無視して今なお「安くて良いもの、サービス」を要求する日本人は後を絶たない。しかし、それは完全に間違いである。私のバイブルである星野博美さん著の「転がる香港に苔は生えない」から引用させてもらえば、「安いものは悪くて当たり前。それで惨めな思いをするならお金を出せないあなたが悪い。良い思いをしたいのであれば、もっとお金を出せば良いだけなのだ」。
確かに、素直な消費者心理としては安いものを求めるのは当たり前だ。しかし、高いものには必ず高いだけの理由がある。その辺の考えがもう少し日本人にも浸透すれば、もっと多くの人に住みやすい世界となる事だろう。