オールアバウトナムコについて語ってみる。 | ONCE IN A LIFETIME

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フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

正直、元ゲーメスト読者であり生粋のアーケードゲーマーであった私であっても、この本の存在はTwitterでニュースを見るまでほとんど知らなかった。そもそも、ベーマガことマイコンベーシックマガジンを手に取った事すらもなかったので、それは当然かも知れないが、初版より35年、前回の復刻からでも26年ぶりとだけあって、4730円と言う高額ながらも売り切れ店続出、かなりの成功を収めているようである。

 

まず私が驚いたのは、初版が1985年10月、と言う事だ。「阪神タイガース21年ぶりの優勝」や、「清原の涙のドラフト」、そして忘れてはならない「日航機墜落事故」などで記憶されるこの1985年であるが、ゲーム業界にとっては9月の「スーパーマリオブラザーズ」発売をきっかけに、まさにファミコンが国民機となった年として記念されるべき年なのだ。

 

ただ、その時点ですでにファミコン自体の売り上げは他社をダントツで引き離しており、また子供向けのファミコン本も色々と出版されていた。しかし、当然その数は多くはなく、雑誌自体もようやく夏にかの「ファミリーコンピューターマガジン」が創刊された程度であり、後に天下を制する「ファミコン通信」などまだ影も形もない時代の事である。よって、まだまだ当時の子供たちはそんな専門誌ではなく、コロコロコミックや週刊少年ジャンプの袋とじなどがメインの情報源であり、今のようにゲームがジャンルとして本屋の一角を占めている事などはありえない時代だったのだ。

 

さらに、当時のビデオゲームは、当時の親世代にとっては「得体の知れない存在」であり、肯定的意見は皆無。ファミコンですらそうなのだから、「スペースインベーダー」の時代に数々の社会問題を引き起こしたゲーセンなどいわずもがな、まだまだ「ゲームセンター=不良のたまり場」と言う方程式が世の中の常識を占めていた。

 

そんな時代だったので、「オールアバウトナムコ」の復刻ニュースから、初版が「1985年10月発行」と言うのを知った時は正直驚いたものだった。前述のよう、ファミマがですらようやく姿を現したその時代に、アーケードゲームだけのムックが発行されていた事そのものが、当時の概念からするととても考えもつかないものだったのだ。

 

それだけいかに当時のナムコが別格的存在だったかがうかがい知れるものなのだが、前回触れたように、実際にリアルタイムでそれを体感していたのは最低でもゼビウス発売当時に中学生だった世代だろう。小学生以下でアーケードゲームとなると、駄菓子屋やスーパーの前に置かれていた筐体でないとほぼプレイする機会はゼロだったはずなので、余程環境に恵まれていなかった限りありえない話だったと思う。イコール、繰り返しとなるが私的にはハドソンやコナミのゲームの方が余程思い入れがあり、ナムコはそこまでの存在ではなかったのだ。

 

しかし、それでもPSでナムコミュージアムが発売されると、思い入れのある順とは言え6作全て揃えた。それまでの移植とは異なり、電源パターンまで再現した極めてアーケード版に近い出来となったこのシリーズである。もちろん、アーケード版の移植だからこそ購入し、もしこれが単純にファミコン版の移植だったらまずプレイはしていない。つまり、アーケードと家庭用の間に超えられない壁があった1980年代、同じナムコ社から出ているはずのソフトであっても、「アーケードこそ本物でオリジナル」と言う認識が当時は常識だった。今ではゲーマーと言えば全てを含むが、当時はゲーマーと言えばアーケードゲーマーのみを指す言葉に等しく、家庭用はあくまでユーザーと言う言い方をしていた。つまりは、家庭用はおもちゃみたいなものだから、「自分らアーケードゲーマーこそ本物のゲーマー」と言う、いわば選民思想的な考えである。

 

もちろん、自分も長年そのような意識が強かったものだから、「ようやく本物を体験できる」、そして偉大なるナムコのゲームの歴史を勉強するという意味合いも含め、PS版は全て購入していった。のち、後継機や他機種でも同名タイトルが発売されていったものの、どれもエミュレーターに過ぎず、またPS版ミュージアムのような気合の入った作りでもなかったため、今でもPS版が一番だと思っている。

 

前振りが長くなったが、要はナムコ世代でない自分がこの「オールアバウト」を購入したのも、ゲームの歴史を手に取っておきたい、と言う理由からである。大人の事情でポールポジションが収録されていないようであるが、個人的にはゼビウスとドルアーガだけでもお腹いっぱいと言った所だ。前者はPS版2種類で1000万点を記録した、と前回触れたが、ドルアーガも一度限りだったと思うが一応PS版でワンコインクリアは達成していたかと思う。しかし、当然宝箱の出し方を知っているからこそであり、当時手探りでプレイしていたゲーマーたちとは比較にもならない。

 

この本はAmazonでも購入できたが、自身はわざわざ先行販売2日後の秋葉原の書泉ブックタワーで購入した。別にそれ目的で秋葉原に行った訳ではなく、様子見程度で足を運んだのであるが、さすがに目の前に積まれているのを見ると、元アーケードゲーマーとしての自覚から「これは買わないといけないな」と言う事で購入に至った。かなり入荷していたし、また高額である事からもまさか完売続出となるとは想像も付かなかったが、やはりそれは今でも当時のナムコゲームが愛されている証明だろう。