テレビ朝日について語る。 | ONCE IN A LIFETIME

ONCE IN A LIFETIME

フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

一般人がテレ朝に抱く印象とはなんだろうか。それは人それぞれだろうが、少なくとも自分にとっては今も昔もまずは「ワールドプロレスリング」であり、次点でドラえもんと言った所であろう。新日本プロレスの旗揚げは1972年3月、テレ朝の放送が始まったのがそれから1年後の1973年4月と言うのはファン的には常識であるが、「ワールドプロレスリング」と題したプロレス番組はすでに日本プロレス時代から始まっており、かれこれ50年近く放送している超長寿番組でもあるのだ。

 

2000年代前半のプロレス暗黒時代、各民放が格闘技に走る中、テレ朝だけはそちらに浮気する事はなく、俄然として新日本のみの放送をし続けてきてくれた事だけでも我々ファンには感謝しかなく、それはもう本社に足を向けて寝れないぐらいの存在なのである。しかし、その反面、早々と全日本プロレスを30分、そして打ち切りに至らしめた日テレとその系列が、ダウンタウンDXなどにやたらとプロレスラーを起用していたのとは対照的に、テレ朝的には新日本のレスラーを起用して、知名度をアップさせようという試みなどはほとんど伺える事がなかった。

 

元々、当時の新日本の首脳陣らが、興行成績にあぐらをかいて、そういう将来的なビジョンが皆無だった、と言う事もあったのだろうが、日本で最も歴史のあるプロレス番組を放映しているのにも関わらず、基本テレ朝はプロレスに冷たかった、と言うのがファンの本音だ。特にニュースステーションが放映されていた頃にはそのイメージは強かった。

 

それは何故か、ずばり言うと久米宏がプロレスが嫌いだったからである。これはファンには常識であり、日テレがスポーツ番組で多少なりともプロレスを扱ってくれるのに対し、テレ朝はそうでなはなかった、と言う一つの要因が彼である、と言うのはファン共通の認識であった。それがはっきりと証明されたのが、久米宏が夏休み中の1999年10月11日、あの形式上では1.4のリベンジ戦となった東京ドームでの橋本VS小川戦がNステで速報されたからである!

 

それも単なる速報ではなく、わざわざプロレス好きの角澤アナがドームまで出向き、現地から直接取材と言う力の入れよう。プロ野球がない月曜日と言う事もあったのだろうが、普段最もプロレスとは縁が遠いはずであったNステがこれほどまでの特集を組んでくれた事に対して、ファンは歓喜したものであり、同時に、決してテレ朝がプロレスに冷たいのではなく、あくまで久米宏のせいであった、と言う事もはっきりと証明がされたのだ。

 

それを裏付けるかのように、翌年久々のゴールデンタイム生中継された同じく橋本VS小川戦が、Nステで流れた際、久米宏がいかにも触れたくなさそうにあっさりとスルーした事からもそれは伺える。これ以降、新日本が暗黒期に突入した事もあり、自分が覚えている限りNステでプロレスが扱われる事はなかった。

 

そんな状況であったのだが、ただひとつ例外があった。それはジャイアント馬場さん絡みの件である。1997年ぐらいに、「最後の晩餐」と言うコーナーで、馬場さんがゲストに呼ばれた事があったのだが、我々ファンは久米宏の事をよく存じていたので、これにはちょっとした驚きであった。そして、1999年1月に亡くなった時には、トップニュースとして扱われ、翌日には当時は幻の映像とされていた、79年プロレス夢のオールスター戦の映像まで流れるなど、2日トータルで40分ぐらいの特集として扱われたのだ。単純に馬場さんは好きだった、と言う事であるが、ビデオを撮っていなかったにも関わらず、この時の様子は今でもはっきりと覚えているほど、自分には印象深い放送であった。

 

2004年、そのNステが遂に終了、そこから今も続く報道ステーションが開始されるが、ご存じのようにメインキャスターには久米宏とはまるで正反対の存在とも言える、プロレスとは絶対に切っても切れない存在である古舘伊知郎氏が抜擢されたのだ。我々ファンにとって、「いつか来る猪木のために…」とか勘ぐったものであったが、幸いその瞬間はやって来る事はなかった。ただ、暗黒期と言う事もあり、新日本が特集される事は皆無であっただろうが、橋本や小鉄さん、そして大木金太郎らの訃報に関しては自身のエピソードも含めて深く語ってくれてくれたので、それだけでもプロレスファンには涙物であった。

 

そして、2012年以降、新日本プロレスは劇的な復活を遂げ、それとは対照的に他局の格闘技番組はほぼ消滅していった。唯一、RIZINが未だにゴールデンで放送されてはいるようだが、視聴率は御覧の通りである。プロレス人気が復活した途端、あれほど格闘技推しであったTBSがさんまの特番で棚橋をクローズアップする点などは露骨すぎて嫌なものを感じてもしまったが、TBSは案外プロレス好きな局でもあったし、最後に勝つのはプロレスと言う事を改めて証明してくれた感もあったので、トータルでは気分が良かった。

 

そして、このコロナ禍で多くのプロレス大会が断念されるなか、先月6月、遂に盟主である新日本プロレスが無観客ながらも、一旦は中止に追い込まれたかと思われたニュージャパンカップから無事再開を果たしたのだが、何とその興業の当日に報ステで特集が組まれたのだ。

 

地上波こそ未だに深夜帯の30分であるものの、新日本プロレスワールドの好調、BS4Kでの旗揚げ記念日やそしてドーム2連戦の生中継、そしてBSながらも金曜夜8時の復活と、最近になっての新日本推しはもう嬉しい限りの事であるのだが、それでもやはりテレ朝の看板である報ステで特集が組まれる、と言うのはちょっとレベルが違う。正直、世間のどれだけの人たちが新日本に関心を持ってくれるのかは分からないが、少なくともテレ朝スタッフのプロレス愛は十分に感じる事が出来た。

 

同時に、日テレのスッキリも新日本の興行再開のニュースを流してくれたそうだが、こちらもオカダカズチカをMCに呼んだり、さらには中邑真輔までゲストに呼んだりと、どう考えてもスタッフにプロレスファンが居るとしか思えないレベルであるのだが、少なくとも今の制作に携わるスタッフの年代は、闘魂三銃士や全日本の四天王直撃の時代であった事は間違いなく、プロレス押しと言うのは決して不思議でもない。さらに、元ファイトの井上譲二氏曰く、日テレとテレ朝のアナウンサー志望の男性は、ほとんどがプロレス実況希望だったと言うから、やはり潜在的にこの2局にはプロレス好きは多いのだろう。

 

私は新日本プロレスワールドはもちろん、WWEネットワークにも加入しているので、基本プロレスはネットで見るもの、と思っている。しかし、それだとコアなファンにしか注目されないし、間口を広げる意味と言う意味では今でもやはりテレビの影響力は絶大だ。そういう意味でも、是非今後もテレ朝には期待していきたいものである。