モラルについて語ってみる。 | ONCE IN A LIFETIME

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フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

日本人が中華圏の地下鉄を利用した際、嫌でもすぐに目に付くのは飲食禁止の罰金の高さだろう。国によって多少の差こそあれ、大体は日本円で5万円前後とかなりの罰金を科せられてしまう。何故こんな罰則が存在するのか、答えは簡単、法律でしばらないとみんな守らないからである。

 

私が生まれてこの方、少なくとも日本における電車ではこのような罰則は見たことがない。にも拘わらず、もちろんゼロではないとは言え、基本電車内で飲食と言う行為を見かける事は稀だ。それは何故か、単純に子供の頃から「それは恥ずかしい事」と刷り込まれているからである。もちろん、そこには日本人ならではの同調圧力が多分に含まれている事は間違いないとは言え、明文化されていないにも関わらず、皆が皆公共のルールに則っているというのは、少なくとも同じ東アジアの民族としては珍しい事であるに違いはない。

 

また、スマホの使用に関しては一切明文化されていないので、少なくとも香港のMTRではそこら中で電話しまくりである。ほぼ広東語やタガログ語なので、やかましくても意味としては頭に入って来ないのは救いなのではあるが、このおかげで帰国直後に電車に乗る度に、あまりの静けさに驚いてしまうというのもいつもの事だ。

 

これだけでも、日本人と言うのは罰則規定が存在せずとも、一定の公共のルールに則って行動出来ると言うのは誇れるべき事なのかも知れない。しかし、大多数の人はそうであっても、一定の割合でルールに従えない輩たちはどうしても存在してしまう。

 

2020年7月11日と12日、プロ野球に続き、新日本プロレスも大阪城ホールにおいて、ほぼ4か月ぶりに有観客大会を再開した。もちろん、政府が定めた指針に則り、非常に厳格な体制で臨まれた大会であったが、仮に一人でも感染者が発生してでもしまったら、それこそ世間からのプロレス叩きが始まるのは目に見えている以上、業界の盟主である新日本プロレスにとってそれだけは絶対に避けなければならない命題であった。

 

幸い、感染者は出さずに大会は終了したのであるが、残念ながらこの大会において、前述したように「モラルに任せるだけでは限界がある」案件が発生してしまうのだった。自分はFacebookにおいて、新日本プロレスをはじめとして、いくつかのプロレスグループに参加しているのだけれども、そこで、「声を出したいからマスクを外していた所、警備員、しまいには警官まで呼ばれ、”10500円を払っているのに”押し倒され退場させられた。」と言う観客のツイートの画像が貼られているのを見たのだ。

 

当然、この客は「お金を払っているのに退場させられた」事に不満をぶちまけた、つまりあくまで「お金を払っている」自分が正しい、と言う事を主張したかったのだろうが、言うまでもなくルールに従わなかったこの客が100パーセント悪い。もちろん、マスクの着用や、チケットに名前を記入する事などは当然の事ながら事前に告知されており、それに従えない場合は入場お断りと言う処置があらかじめなされていたため、それに違反した場合はペナルティを科せられるのが当然である。

 

この客のIDは隠されていたので、本人を見つける事は出来なかったものの、案の定すぐに消して逃亡したようである。UP主によれば、それなりのいい歳をしたオッサンとの事であり、それに関してもさらに呆れていたようであるが、接客業経験者であればそれも納得、一番たちの悪い客が50~70ぐらいの高齢者だからである。

 

この手の輩の言い訳として定番なのが、「お金を払っているのに」だからであるが、当然の事ながら金を払えば何をやってもいい、と言うのは壮大な客側の勘違いである。これも、某国民的演歌歌手の「お客様は神様」を真に受けてしまった典型的な例なのであるが、では極端な話、お金を払いさえすれば嫌いな奴を殺めてしまってもいいのか、とすらなる。

 

今回は口頭での指示ではなく、すでに明文化されていたルールに従えなかったから、と言う訳でモラル以前の問題ではあるのだが、それでも法律による強制力と言う所までには至ってはいないので、やはりこういう例を目にする度に、世の中にはどうしても個人のモラルに任せるだけでは限界があると言う事、そして何故人口13億人の中国が、共産党でないと支配出来ないのか、と言う2面を改めて実感させられるのである。


まあ、この時は新日本が毅然とした態度を示したから、他の観客、そしてプロレスも救われたものの、これから間もなく、新宿の劇場でクラスターが発生したのは記憶に新しい。この手の業界には詳しくはないので、詳細には触れないものの、ひとつ気になったのが、前方のひとりの客がマスクか何かの着用を拒否し、ルールとして明文化されていたにも関わらず、主催者が折れてしまいマスクなしの鑑賞を認めてしまったことである。そして、結果はご存じの通り、主催者側も演者も、そして観客すらも大バッシングを受け、同業者にも影響を及ぼすのはまず避けられない所まで来てしまった。

 

繰り返すが、もし新日本がその客に折れてしまい、マスクなしの着用を認めてしまい、結果クラスターが発生でもしてしまったら、新日本プロレスはもちろんの事、業界的にも致命的なダメージを受ける事となる。仮にそのような事案が発生した場合、その客はどうするつもりであったのだろうか。大体、このような行動を起こす原因の一つと言うのが、後の結果を想像出来ないから、と言うのがあるらしいが、悲しいかな、このような輩がどうしても世の中には一定の割合で存在してしまうのである。

 

非常事態宣言最中においても、多くの人間が自宅待機に従う中、越境してしまいその結果クラスターを起こす、と言う事案が日本中で見受けられてもしまったが、こういう例からしても、やはり個人のモラルだけに任せるというのは限界がある、と言う現実をまざまざと見せつけられてしまったものだった。