ゲーミングモニターのお話 | ONCE IN A LIFETIME

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フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

PCとは異なり、家庭用ゲーム機は一般的な民生用テレビに接続する事を大前提としている訳であり、大抵の人は普段使っているテレビにそのまま使っている事だと思う。つまり、ゲーム専用のテレビを導入する人は極めて稀な存在なのであるが、もちろんそういった一部の「大抵」に当てはまらない人たち向けの需要も必ずある。それが、いわゆるゲーミングモニターである。

 

もちろん、アーケードゲームの筐体に組み込まれているモニターは全てゲーム専用であり、つまりはアーケードゲームの歴史イコールゲーミングモニターの歴史、という事にもなるであろう。しかし、当然の事ながらアーケード筐体は家庭向けへの販売は全く考慮されていないため、筐体を丸ごと購入するような酔狂な輩以外には限りなく無縁の存在だった。アーケード基板の業者は80年代から存在していたが、それも家庭用テレビに映せるコントロールボックスに接続してプレイする事がほぼ前提となっていた。

 

それが次第に崩れ始めたのは、21ピンマルチRGB端子のテレビがそれなりに出回り始めた80年代後半ぐらいだったと思う。その中でゲーマーにとっての憧れのモニターが、ソニーが販売していたプロフィールプロであった。テレビチューナーを内蔵せず、完全に外部の映像を映す事に最適化したモニターであったが、その画質は圧倒的であり、個人が持てる最高のゲーム用モニターとしてはこれに尽きた。しかし、当時の最先端だけあって価格も一級品、1996年当時発売されていた29インチでなんと298000円!そんな金額を容易に出せるゲーマーなどそうそういるはずもなく、大抵の人間にとっては広告を眺めるだけで終わっていった。

 

もうひとつの流れとしては、当時NECが発売していたPC-TVシリーズのディスプレイにも21ピンRGB端子が搭載されていた。こちらも14インチながら最低120000円ほどする代物であり、学生ゲーマーには手の届かない代物ではあったのだが、自分は運良く2000年代になって購入する事ができ、そしてこれが私の人生において最初のゲーム専用モニターでもあった。

 

もちろん中古であったが、非常に状態が良く、価格も20000円弱とかなり手頃だった事もあって即決、本厚木のPCショップから手提げをくくりつけてもらい電車で持ち帰ったものだった。14インチとかなり小柄ではあったが、さすがにリアルRGBの画質は綺麗な事この上なく、当時はまだ古くS端子すらないテレビを使っていた事もあって、ゲーム機はほぼ全てPC-TVでプレイするようになっていった。モノラルというのが難点ではあったが、それも電波新聞社のセレクティ21からステレオ音声をとる事によって解決した。

 

しばらくはこのモニターを使用していったが、やはり14インチと言うのは迫力に欠けるものがあったのは否めなかった。そこで次に目を付けたのが、ソニーが発売していたWEGA、ベガシリーズであった。

 

こちらは普通に家電量販店で売られている一般的テレビなのだが、初代PSに搭載されていたAVマルチ端子が内蔵されており、専用のケーブルで繋ぐと滲みのないRGB画質で表示出来るというものであった。もちろん、PS以外の機種はそのまま接続は出来ないのだが、それも業者が変換ケーブルを発売していた事で解決。以降、薄型テレビ時代になるまで、ゲーマーにとってはベガ一択の選択肢が続いていった。

 

次第にDVDも見るようになっていくと、さすがにD2端子以上のワイドテレビが欲しくなり、PS3購入時にはD4端子付きのワイドテレビと、アナログRGB専用の旧機種とでテレビを分けるまでに至ってしまった。そして地上デジタル時代を前に、いよいよデジタルチューナー付きの薄型テレビに買い換える事にしていったが、当時の液晶はまだまだ残像感があり、ゲーマーとしてはプラズマ以外に選択肢はなかった。

 

ここでブラウン管時代には皆無だった、今なおゲーマーを悩ます「操作遅延」の問題が遂に出てきた。しかし、当時はさほどゲーム熱は高くなかったせいもあったのか、なんとそれに関して調べる事は一切なく、ソニー以外ではパナソニックがお決まりだった家庭の伝統から、何のためらいもなくそのプラズマテレビを購入していった。

 

今となっては見劣りするものの、2009年当時HDMIケーブルによるHD画質はまさに圧巻であった。さらに、D端子接続オンリーとなったPS2などは、後々の検証により多少の遅延が発生する事に気付いたのだが、ブラウン管と比較しない限り普通にシューティングもプレイ出来るレベルであり、後々購入したWiiやXbox360も普通にプレイする事が出来た。

 

おそらく液晶テレビを買っていたら遅延は避けられなかったと思うので、偶然ながら実に幸運な選択肢を選んで行ったのだと思う。その後はゲーム熱も下がっていくが、4Kテレビが10万を下回るようになると、いよいよそれへの興味も湧いてきた。

 

当然の事ながら、さすがにこの時においては吟味を重ねた。その結果、ゲーマーにとっては最速0.83msのゲームモードを搭載する東芝しか選択肢がない事が分かった。欲しかった55インチで11万円ほどであったが、あまりテレビを使う機会のない私としてはすんなり出せる金額とは言い難かった。そこで他に目をつけたのが、同じレグザエンジンNEOを搭載しているハイセンスのテレビだった。50インチとわずかに小さかったが、10万を軽く切る金額は非常にコスパが高く、Amazonで7万円前半になった時に購入した。

 

 

 

 

初めての液晶という事に不安こそあったものの、さすがに10年前のプラズマとは比較にならないほど綺麗であり、また4K画質も大変素晴らしく、製品自体にはとても満足したものだった。そして肝心のゲームモードであるが、正直な所以前のプラズマとそうそう変わらない感覚であった。確実にこちらの方が早いはずなのであるが、プラズマもそれに引けを取らないぐらいであり、正確なフレームこそ分からないものの、つまりはそれだけ優秀だった事に今更ながら気付いたものだった。

 

さて、この最速0.83msという反応速度であるが、速いことは間違い無いのだが、普段使わない単位なだけにそれがどの程度の速さなのか良くわからない部分もあった。それを検証するために、今なお残してあるブラウン管にPS3を接続してみた事もあったのだが、HDMI接続とアナログの違いもあるだろうが、やはりはっきり分かるほど圧倒的にブラウン管の方が速く、特にグラディウスVなどPS2のアーカイブスでそれは顕著に現れた。

 

また、RPGとかならともかく、アクションなど全体を把握するゲームでは、決して画面が大きければ良い、というものでもなく、また目線の関係からしても縦スクロールシューティングにも不向きであった。

 

ゲーム熱が高まった事もあり、そこでいよいよゲーミングモニターの購入を検討し始める。家庭用ゲーム機オンリーなので、リフレッシュレートは考慮せずにあくまで反応速度と遅延に拘った。その中ですぐに候補になったのが、アイオーデーターのギガクリスタの24.5インチ版の最新モデルだった。レグザエンジンを軽く上回る0.6ms、遅延も前者の0.05に対してわずか0.02と、少なくとも公称されている中では最速だった。これをさらに上回る0.5ms, 0.01フレームの機種も存在するのだが、現時点で27インチしか存在しないので断念している。

 

わずか0.03フレームの違いであるが、それでもストVのコンボの目押しなどは明らかに感覚が異なる事はすぐに気付いたし、PS3のアーカイブス系ソフトも、そして遅延ハードとして名高いSwitchのゲームなどもそれは同様であった。さらに、最近になって汎用型の回転式モニターアームを購入し、遂に縦画面環境も手に入れた事もあって、改めてゲーミングモニターの優位性を実感したものだった。

 

発色はテレビ用に比べれば落ちるし、さらにやはりディスプレイという事で、家庭用よりもPCでゲームをプレイしている感覚に近くなってしまう事などは残念な要素として残るものの、やはり本格的にゲームをするにはゲーミングモニターが必須である事を実感したものだった。ここまで来るとほとんどブラウン管と比べても遜色ないレベルに来ているとは思うのだが、それでもPS4版の沙羅曼蛇やR-TYPEのように、ゲームそのものに遅延がある状態はどうしようもない。それを考えると、遅延などまるで無縁だった初代PSやSS時代が今なお古き良き時代と感じるものだ。