アーケードスティックのお話・その7 三和電子とセイミツ | ONCE IN A LIFETIME

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フィリピン留学から人生が変わった一人の男のお話です。

私がゲーマーだった1990年代、各メーカーの直営店を除けばほとんどのお店がセガのエアロシティ筐体とその後継機であり、そしてコンパネにはまず間違いなくセイミツのパーツが使われていた。

 

ファミコン初期、もはや伝説的名機とも言えるアスキースティックにはセイミツパーツが使われていたそうであるが、その後は私が覚えている限り業務用パーツがそのまま使われたアケコンは皆無、1996年にセガが当時としてはこれまた異例のバーチャスティックプロを発売するまでなかったと記憶している。

 

そして、当時私は全く意識はしていなかったものの、1993年に記念すべき初代バーチャファイターが発売された時にデフォルトとして採用されたのが三和電子のスティックとボタンだったそうであり、その後2が爆発的ヒットを記録すると、そのまま三和パーツが格ゲーのデファクトスタンダードとなり今に到ると言う。

 

当時はアケコンに1万円以上払うと言う概念は皆無であり、またネット通販も発達していないとなるとアーケードバーツを家庭用で使う事など夢物語に等しく、まあ要はその時点で三和電子とセイミツこそ本物、と言う認識が出来上がって行った訳だ。

 

そして、2004年に遂にHORIが三和電子のレバーを搭載した初代リアルアーケードプロを発売。コストダウンのためにボタンこそHORIのオリジナルではあったが、それでもアーケードそのままのレバーが使えると言うインパクトは非常に大きく、またガワの作りも金属製でしっかりしており剛性感もバッチリと言う代物であった。

 

詳しい販売台数は不明であるが、それに手応えを感じたか、限定版ながら全パーツが三和、もしくはセイミツのバージョンも破格の1万円で販売するなど、遂に家庭用でもアーケード環境を整えられるような時代が訪れ、さらにPS3、Xbox360時代になるとマッドキャッツと言う黒船も到来し、格ゲーの世界大会が開かれるようになるともはや高級アケコンはゲーマーにとって必需品とさえ言えるようになったのだ。

 

1990年代のストII全盛時代のコンパネは、いわゆる三角形配置のブラスト配置が主流であり、初期のRAPもそれに倣っていたが、ストIV時代はタイトーのビュウリックス筐体が主流となり、マッドキャッツや中期以降のRAPもそれに準じるようになっていった。

 

つまり、家庭用アケコンはほとんどが格ゲーで使われる事を前提としていたために、標準搭載パーツも全て三和電子製となっていた。しかし、私のような1990年代ゲーマーかつシューティングゲーマーにとって、アーケードと言えばまずセイミツの操作感覚が絶対であり、それよりも軽めのタッチかつ長めのスティックである三和レバーにはどうしても違和感を拭えなかった。

 

最初にそれを感じたのは、ネットの記事を参考に鉄拳4スティックを三和に換装した時だ。もちろんガワの剛性もあるが、正直換装前の方がやりやすいと思ったほど操作に違和感を感じてしまった。それで正直RAPにも不安を感じてはいたのだが、レバー台座の深さの違いと金属製と言う事もあるのかこちらに関してはそのままでも十分やり易かったのでそれは杞憂に終わった。しかし、やはり私のセイミツに対する拘りは強く、セイミツエディションが発売されるとすぐに予約して初代はヤフオクで売ったものだった。

 

そんな経緯があるので、マッドキャッツのアケコンを購入した時もすぐにセイミツに換装したものだった。当時はまだカバー付きのがなかったので、シャフトが剥き出しになる事に違和感を覚えてしまったが、やはりシューティングとの相性は抜群でありすこぶる使い易かったものだ。

 

それ以降はしばらくゲームそのものから離れてしまい、アーケードアーカイブスやりたさにPS4を購入すると、同時に2017モデルのhayabusaも購入していった。言うまでもなく、HORIはすでにオリジナルのパーツを採用していたが、もうそこまでの拘りもなく、特に違和感もなかったのでそのまま使用していった。

 

しかし、今年になってXboxOneXを購入したのをきっかけに、久々に当時のアケコンを使用していくうちに次第にハヤブサパーツに違和感を覚えるようになり、ファイティングエッジを購入した時もどうも合わずにすぐに三和電子に換装してしまったものだった。

 

その後に連射装置欲しさにRAPNも購入し、しばらくそれもそのまま使ってはいたもののやはり合わず、しかし三和にしてもエッジと被ってしまうのでフルでセイミツパーツに換装した。格ゲー以外をプレイする時はメインとして使用し、かなり重宝していったものの、その直後にAmazonUSAで初代パンテラの在庫が復活と言う情報を得ると思い切って購入し、大体10日ぐらいで届いてくれた。

 

正直、それなりにアケコンを購入していきながらも、操作感覚は全てパーツによるものとほぼ信じ込んでいた。つまり、ガワがなんだろうと結局は三和かセイミツを使ってしまえば一緒、と言う訳であったのだが、そんな固定概念を一瞬で吹き飛ばしてくれたのがこの初代パンテラだった。

 

とにかく、RAPVに三和を換装した時のようなかちゃかちゃとした感覚が一切感じず、とにかくスムーズに動き余計な跳ね返りなど一切感じず、なおかつ静音でありまるで別のレバーか?と思えるぐらい信じられないほど使いやすい。そのおかげで、ストVはもちろんの事、それ以上にドット単位の動きが要求されるシューティングゲームへの相性が抜群に感じたのだ。

 

ゲーセンであれば、使い込まれた三和レバーはとにかくグラグラなので、これならセイミツの方がシューティングに向いている事は間違い無いと言う事が分かる。しかし、個人のみが使う家庭用ではそこまで簡単にヘタれる事はない。なら当面の間は初代パンテラと三和レバーの組み合わせだけで十分いける、イコールこの瞬間に私の中でセイミツイコールシューティングと言う概念は一気に崩れ去ってしまったのだ。

 

もちろん、これは初代パンテラが凄すぎるだけであって、例えばRAPとかであれば大きくパーツに左右されるだろう。実際、両方で試した所やはりRAPでやる場合はセオリー通りにシューティングはセイミツ、と実感したものだった。それでも、完璧なガワがありさえすれば三和電子でもシューティングは全く問題ない事を、初代パンテラを通じて実感したものだった。

 

その後、我慢できずにオブシディアンまで購入し、こちらはレバー長の調整が必要だったものの、やはりパンテラと人気を二分するだけあってこちらもすこぶる使いやすく、パンテラを置き換えてメインに昇格してしまった。こちらのはパンテラほど静音ではなく、なんとなく音にゴツゴツ感もあるためパンテラとは明らかにフィーリングは異なるが、それでもRAPのような安っぽさはなく、価格なりの満足感とそしてモチベーションは間違いなく向上する。

 

そして、こちらも格ゲーオンリーではなく、シューティングへも違和感なく全くそのままいける。最近のスティックはPS3非対応も増えてきたが、幸い初代パンテラ共々対応しており、雷電IVやアーカイブスをそれらでプレイ出来ると言う意義も大変大きいものだ。アーカイブスの遅延を考えると、PS2実機でプレイするのが一番なのであるが、モノによっては許容範囲内のもあるし、何より実機ではそれらアケコンが使えない。なので、応答速度などを考慮するとPS4オンリーの方が良いのかも知れないが、前述の理由からPS3対応と言うのはまだまだ意義があると思う。

 

そして完全に三和レバーに慣れきった私は、マッドキャッツのアケコンをUFB仕様に換装すると、レバーも新品の三和レバーに再換装してしまった。いざ戻してみると、パンテラほどではないが筐体の剛性がかなりあり、三和レバーとの相性はもちろんの事、シューティングへの対応も全く問題ないものであった。

 

以上の事から、少なくとも家でやる限りは好みの問題である、と言う事を実感したものだった。ただ、斜めに素早い入力が必要な格ゲーにはタッチの軽い三和電子が楽である事は確かだったし、また高級アケコンであればオールマイティに使える事も理解したので、これからも三和電子がデファクトスタンダードであり続ける事には変わりはないだろう。