私は先日、平日の子供達が学校に通っているはずの時間帯に、ある自治体が運営する図書館で読書をしていた2人の中学生の女の子の事例を投稿しました。
   その表情はどこか暗く、どこか周りの様子を気にしているように見られたのですが、私の目には「『今の時間帯にここに居るはずのない自分達は周りからどう見られているだろう?』と疑心暗鬼になっているのではないか?」と映りました。
   さて、なぜ私が2人の気持ちを察したかと言うと、実は私自身、この3月に教職を途中退職してから、彼女達と同じような“負い目”を感じていたからでした。私は健康面の理由から退職したのですが、周囲はその内実は知らないわけで、単に「何らかの理由でドロップアウトした」という“社会的弱者”と捉えている人も居るかも知れません。そんな“疑心暗鬼”な気持ちがあった為、様々な公共施設に足を運ぶ毎に、どう見ても定年退職したとは思われない自分が、多くの高齢者の方々の中に混じっている事に対して抵抗感を感じていました。
   しかし、その思いは、月日が経つうちに変化していきました。まず、気が付いたのは、私と同じように高齢者の方々の中に混じって、何人かの学生若者達がいる事でした。彼らも何らかの理由があって、学校に登校していなかったり就職していなかったりしているのです。それまでは「不登校」とか「ニート」と言った社会現象は私の中ではニュースの中だけのものでした。しかし、実際にそういう若者を目にした事によって、ニュースの中だけのイメージだったものを現実的な“実感”として感じることができました。そう思うと、「以前の自分は実は何も分かっていなかった」という事に気付かされました。教師という多忙極まりない仕事に朝から晩まで忙殺されて、家には寝に帰るだけ、という閉ざされた世界の中でもがいていた自分がいたのです。そんな中、平日の図書館で読書をしていた中学生の“素の表情”を目の当たりにした事で、このような子供達をそのままにしておいてはいけないと思いを強くし、先日の投稿を思いついたのでした。
   
   退職した私は今、精神科医の岡田尊司先生が提唱する「愛着(愛の絆)」の考え方をベースにして、子供達が一生に渡って幸せに生活できる社会作り(30年後の“国難”の克服を含む)を目指して、その為の資料作りを進めています。現段階では、自治体と連携しての「『愛着』事業骨子案」も出来ました。そんな作業も、教職の道を退いたからこそ出来たことです。もちろん教師の仕事を続けていても、特に毎日の生活の中に暮らしにくさを感じて苦しんでいる発達障害の子供達のために尽力できる幸せはありました。その仕事もまた尊い仕事であったと思います。しかし、違う立場に立った今だからこそ、新たに自分に出来る事があると知りました。

   私は、そんな退職後の経験から、今現在、本意ではない理由で学校に登校出来ていない子供達に伝えたい事があります。それは、今でしか出来ない事をして、自分の将来につながる準備をして欲しいという事です。
   もちろん、子供達が抱えている問題が解決されて復学出来ることがベストです(その為に先の記事「暗い表情で平日の図書館にいた中学生 〜被害者が学校を休み、加害者が登校し続ける理不尽さ〜」を投稿しました)。しかし、仮に状況が変わらなくとも、通学していないからこそできる事があると思うのです。学校に行っていれば、毎日の授業やテストに追われる毎日ですが、登校していなければ、時間の使い方自由です。もちろん、高校入試を目指して自分のペースで勉強することもできますし、それ以外の時間を自分の将来についてじっくり考える為に使うこともできます。その為に考える資料は図書館に行けば山のようにあります。設置されている新聞を読めば、今の社会の中にどんな問題があり、どんな人達が困っているのかを知る事ができます。自分が一番重要だと思う問題の解決に寄与する為には、どんな仕事に就けばいいかを知りたければ、社会の仕事の一覧が載っているもあります。もちろん、自分が興味を持っている仕事の内情についても知る事ができます。
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   なお、義務教育の卒業の“認定”は必ずおります。“卒業認定”は、出席日数にかかわらず学校長の判断によって行われます。いじめの被害者になった為に登校できなくなった生徒の卒業を認定しない校長などいるはずがありませんもしもいたら訴訟ものです中学校を卒業後、高校入試を受けて高校に入学する道もありますし、それが叶わない場合でも、定時制高校に通えば高校卒業資格を取得できます大学卒業資格が欲しければ、通信制の大学で学べばこれも取得できます。専門学校に通う道もあります。
   様々な道が考えられますが、一番大切な事は、将来の仕事に対する意欲です。「親が行けというから」「友達が行くから」「今の自分の成績だと進学先はここしか無いから」そのような動機では、今の企業が学生に求めている“主体性”や“粘り強さ”を身に付ける事は難しいでしょう。それよりも、将来のことについてじっくり考えて決めた学生を企業は必要とするでしょう。
   考え方次第で、ピンチをチャンスに変えることもできるのです。

   なお、良ければ合わせて以下の記事もお読みください。不登校に陥りながらも充実した人生を見つけた体験者の話です。

(長くなってしまい申し訳ありませんでした。)