■映画と涙
■東京・有楽町の映画館「丸の内ピカデリー」の入り口には、「悲しみが伝わってきて涙しました」
「何度見ても泣くと思います」
などと書かれたボードがある。
上映中の映画「私の頭の中の消しゴム」を見終わった観客が感想を綴ったものだ。
この映画は、若年性のアルツハイマー症で、徐々に記憶を失っていく女性と、彼女を愛する男性の物語。
10月下旬に公開された。
黙って肩を寄せ合うカップル、ハンカチを手に泣きはらした目をしばたたかせている女性。
映画館の担当者は、
「泣き顔を見せたくないためでしょうか、最後に配役などが流れるエンドロールが終わっても、立ち上がらない人もいます」
と話す。
「泣ける」という口コミで、尻上がりに入場者が増えているそうだ。
京都市の女性総合センター内にあるビデオ鑑賞ルームに十数人の男女が集まってきた。
20~40歳代が中心。
この日の「泣きネタ」は、日韓の高校生の恋愛と友情を描いた映画「チルソク」の夏」
約2時間後、目を赤くした人たちはスタジオ近くの喫茶店に集まり、それぞれの泣けた部分を教えあう。
「なかなか会えなかった二人がやっと出会えたところがよかった」
「主人公の女の子が、流しをしている父親のギターが壊れてしまったので、アルバイトをして買ってあげた場面に涙を流した」
他の泣ける映画や本など、新たな「泣きネタ情報」も交換する。
この会合を「みんなで泣こう会」と名づけている。
主宰者の音楽スタジオ店長は、
「窮屈になった心を泣くことで開放したい」
と話す。
もともと映画をみて泣くことが多く、涙を流す快感をみんなで共有したいと思うようになった。
さまざまな仕事の人たちが集まる異業種交流会で知り合った会社員などに声をかけ、この会を7月に作った。
ドラマの内容によってストレスが高まっても、涙を流すとストレスが解消されるという。
感情と野王はの関係を研究している東京工業大学の名誉教授は
「今はストレスが多い時代。
解消するには、こらえずに涙を流した方がよい」
(11月15日付読売新聞「涙の効き目」1.より)
■ため息の時間
- 唯川 恵
- ため息の時間
■2004年7月1日発行
■新潮文庫 ■定価: 500円
■面白度: ★★★★
短編9編。 どれも20分程で読み終える分量。不可はないけど、それ程可もない作品集。
彼女の作品は短編よりも長編の方が面白いことがわかりました。
■本は最高の娯楽
■今ちょうど、読書週間である。
私は少女の頃から読書が大好きだった。
娯楽の少なかった時代、読書ほど楽しいものが他にあろうか、と思っていた。
同じく読書好きだった3才上の兄の本箱には、本がいっぱい並んでいた。
「お前には、まだ早すぎるから絶対読むな」とクギを刺されていたが、兄の留守を狙って、こっそりと泉鏡花の全集などを読んだ。
当時、女学校1年生だった私に男女の機微などわかるはずもなかったが、とにかく読むことで満足した。
父には、
「子どものくせに本ばかり読んで」と叱られたが、寝床で布団をかぶり、夜明け近くまで読みふけったこともあった。
わずかなお小遣いを握って古本屋へ行き、目指す本を見つけた時のうれしさが今も忘れられない。
今、若者達の読書離れが言われるが、たぶん、他の楽しみがいっぱいあるからだろう。
孫達にも、事あるごとに読書をすすめるのだがテレビやゲームに夢中である。
京都市76 才女性
(11月9日付読売新聞投書欄「気流」より)