○学校の中庭(昼休み)



「なんかねー。2組の男子いるじゃん?」



「だれ?」



「ほら、あの窓際に座ってる、茶髪で髪を立ててて」



「ああ、はいはい。

 そいつがどうかしたの?」



「昨日、帰りに呼び出されて、告られた」



「ええー!? なにそれー

 いいなぁ、あんたばっかモテて」



「別に、そういうんじゃないけど……」



「なんて、言われたの?」



「オレの女になれ、って」



「あはははははは

 あははははははは」



「そんな笑う?」



「だって、あんたそれって、マンガの読み過ぎでしょ

 高校生が調子乗ってるんじゃないわよ」



「そうかなぁ」



「あー、マジウケる。

 で、なんて言って断ったの?」



「え、あ、

 付き合おうかって思ってるんだけど」



「ええーー!?

 だって、あんた彼氏いるじゃん!

 付き合って2ヶ月目の」



「うん」



「もう飽きたの?」



「ううん。全然好き。昨日も2時間電話した」



「じゃあ、新しい男と何で付き合うのよ」



「てか、もう付き合うって言っちゃったし」



「……」



「言っちゃったし……」



「要は二股するってこと?」



「うん。だねぇ」



「なんで、そんなことするわけ?」



「彼は私のこと、好きって言ってくれたから

 私も彼のこと、好きだなって思って」



「じゃあ、あんたは自分のこと好きって言ってきた人、全員と付き合うわけ?」



「だってさー

 断れないじゃん。

 悪いもん。好きって言ってくれたのに」



「でも、それは! ……でもね」



「それに、好きって言ってくれる人、たくさん欲しいもん。

 それだけで幸せになれるでしょ?」

(元の話はこちら)



○飲み屋



「で。そもそも何で不倫は始まったわけ?」



「聞きたい?」



「いや、別に」



「聞きなさいよ」



「話したい?」



「話したい」



「……どうぞ」



「その人は職場のマネージャーでね。

 今まで何度かお昼ご飯を一緒に食べたり、

 ときどき飲みに行ったりしてたの」



「ほう」



「でも、なんていうか、仲の良い同僚って感じだったんだけどね」



「向こうはわからないよ?

 あわよくば、って思ってたかも」



「それはない、って言ってたわ。この前」



「あそう」



「それで、この前、

 夜遅くまで仕事してたら、2人だけになってて」



「うん」



「あと10分で終電も出ちゃうし、急いで帰ろうってことになって、

 一緒に帰りだしたのよ」



「終電には間に合ったの?」



「ううん。間に合わないよ」



「なんで?」



「その帰り道で、あたしが

 『今から飲みに行きません?』って言ったから」



「……」



「だって、急に飲みたくなったんだもん」



「いや。それで、終電逃してまで飲みに行ったわけ?」



「そうよ」



「それで?」



「居酒屋のお通しは、エノキの梅じそ和えだったわ」



「いらないって、そんな情報」

○居酒屋にて



「まったく。お前もそろそろ彼氏作った方がいいぞ」



「はあ……」



「オレとさ、こうやって飲むのもいいけどさ。

 適当な男探して、誘わないとさ、

 いつまでたっても彼氏できないぞ」



「まぁ」



「ま、とはいえ、毎回こうやって誘ってるのはオレなんだけどな」



「そうですね。先輩からですよね」



「どうしたら彼氏できるのかなぁー。

 お前に彼氏ができないと、心配だよ、オレは」



「あ、ありがとうございます」



「もう、じゃあ、さ、この際オレと……」



「実は最近バイトを始めたんです」



「へっ? バイト」



「あ、えっと、すいません。聞いてませんでした。

 なんですか?」



「あ、オレのことはいいよ。で、バイト?」



「はい。カラオケ屋なんですが、

 そこで私のことを好きだって言ってくれる人がいて」



「ほ、ほー」



「もしかしたら付き合っちゃうのかな、と」



「へー

 よ、良かったじゃん。

 そいつのこと好きなの?」



「いや、まだ、そういうのはよくわからないんですが。

 でも、まぁ、ときどきご飯に行ったりして」



「あ、そうなんだ。

 行ってるんだ。

 うん、そうだよー、オレ以外ともどんどん行った方がいいよ」



「一応、明日遊びに行くことになってて、

 返事聞かせてとも言われてて」



「そうかそうか」



「とりあえず、って言ったら変なんですが、

 思い切って付き合っちゃった方がいいんですかね?」



「お、おう。いいよー、いいと思うよ。お前のためにも」



「ですよね……。うん、そうしよっかな」



「……そうか」



「ん?」



「あ、いやいや。

 じゃ、お前と飲むのもこれが最後になるかもな。

 彼氏に悪いし」



「そんな。先輩とはまた飲みたいですよ。

 これからもいろいろ教えてください」



「……ああ。

 うん、ああ、いいよ。

 もちろんだとも」

○帰り道



「どうしてあの人は、足を引っ張ろうとするんだろう」



「足引っ張るの?」



「引っ張る。てか、引っ張る」



「はは」



「せっかく文化祭でさ、みんなで楽しくやろうっていうのに、

 なんか私を目の敵にして、

 『あの子の言うとおりにするの?』とか、

 私に聞こえるように言うんだよ?」



「ふーん」



「別に私の言うとおりにしろなんて言ってないよ。

 あんたがやりたいようにやればいいじゃん」



「うん」



「そうでしょ?」



「そうだね」



「……聞いてるの?」



「聞いてるよ(笑)」



「何が気にくわないってんだろ」



「さぁ」



「また明日も言われるのかなぁ」



「言われるんじゃないの」



「準備だって遅れてるんだから、

 頼むから足を引っ張らないで欲しい」



「黙って私の言うこと聞いて欲しい?」



「そう。……あ、いや」



「そういう雰囲気が出てるんじゃん? お前から。

 それが気にくわないのかもしれないね。

 どーよ?」



「そんなこと、ないと思う、けど……」

「どーよ?



「……気をつける」



「うん。よしよし



「なんで満足そうな顔してるのよ?」

「別にぃ

元の話はこちら


「嫌いじゃないけど元カノが忘れられない」と告白した彼に振られたけれど、

なんかそのまま別れたくなくて、

一緒にご飯でも食べよう、なんて言っちゃってた。




「どこ行く?

 駅前にファミレスとかってあったっけ?」



「あー、えっと、あったかな」



「それより、飲んじゃう? ちょっと早いけど」



「飲むのは、違う、かなぁ」



「なにー? 私のやけ酒に付き合ってくれないの?」



「やけ酒って。てか、オレに言う?」



「あはは。冗談よ」



「きっつい、冗談だなぁ」



「なんにしようか。軽く食べられるようなところでもいいけど」



「喫茶店とか行く?」



「うん……」



「じゃあ、こっちだ」



「あの、さ……」



「ん?」



「手、つないでもいい?」



「え」



「いいでしょ?」



「いいでしょって……」



「いいじゃん、どうせ今はフリーなんだし。

 イヤ?」



「別にイヤじゃないけど……」



「……じゃあ」