(元の話はこちら)



「で、マネージャーとラブホに入りました、と」



「うん」



「シャワーも浴びちゃいましたと」



「うん」



「で、ごにょごにょ、てことですか」



「何よ。ごにょごにょって。

 違うって言ってるでしょ? 

 最初から2人ともそういうつもりでホテルに入ったんじゃないんだってば」



「じゃあ、どうしたんだよ?」



「だから、私がシャワー浴びたでしょ。

 向こうもシャワー浴びたでしょ。

 そしたら、

 じゃあ、明日も仕事だし、もう寝ようかってなって」



「で? え、それで普通に寝たわけ?」



「ま、最初彼は、『オレはソファーに寝るから』なんて言ってたけど、

 別に何もないんだから、一緒に寝ましょうよって言って。

 2人でベッドで寝たわけよ」



「つーか、普通、会社の上司と同じベッドに寝るのって

 抵抗あると思うんだけどなぁ」



「でも、ほら、

 私寂しがりやだし」



「それは知ってる」



「で、マネージャーはさ、結構体を鍛えているのよ」



「うん」



「寝ている私の横に、

 がっしりとした腕とか、胸があるわけよ」



「うん」



「だから、えいえいって触るでしょ?」



「触らないって」



「こう、つんつんって」



「どさくさにまぎれて、オレの胸をさわるな」

(元の話はこちら)



○駅近くの大通り


告白した彼に振られて、なのにそのままご飯を食べに行くことになって。

一緒に歩いてたら手をつなぎたくなって、頼み込んで。

そして今、手をつないで歩いている。



「えへへ……」



「どうしたの?」



「なんか、やっぱ手をつないで歩くのは照れるね」



「ああ……」



「ああ?」



「いや、うん。そうだね」



「……ごめん、イヤだったりする?」



「何が?」



「手をつないでること」



「別にイヤではない、かな」



「そか」



「イヤじゃないんだけど、これでいいのかな? とは思う」



「どうして?」



「あー、えーっと

 まあ、察してくれよ。

 一応さ、さっきはゴメンって言って、傷つけたわけじゃん?」



「傷つく、ってほどじゃないよ」



「でも、そういうことしてて、

 今こうやって、手をつないで、ご飯食べに行こうとしてるってのが、

 これはいいのかなぁ? って思う」



「……迷惑?」



「そういうんじゃないよ。別にオレだって悪い気してないし」



「……」



「……ごめん。今のナシ。

 ずるい男だな、オレって」



「そんなことないよ。わがまま言ってるのは私の方なんだから」



「んー。あー。

 ちと、今日はコメントしずれぇな。何もかも」



「普通はさ、ふられた後に、その人と一緒にご飯食べたりしないよね」



「まぁ、たぶん」



「なのに未練たらしく一緒にいようとして、

 私をふって心苦しい気持ちにつけこんで、手をつながせて。

 ……きっと、ずるいのは私の方だよ」

○レストラン(昼)



「男の人ってさ、ときどき黙っちゃうことあるよね」



「あるかな?」



「うん。こっちが何言っても

 無視して全然答えてくれないとき」



「まぁ、ときには」



「あれ、恐いんだよね」



「なんで?」



「男の人が黙ってると、

 ものすごく怒っているような気がして、

 すごく恐いよ」



「だって、怒ってるんじゃないの?」



「うーん。

 なんか、単に機嫌が悪いときもあるし、

 元気ないだけのときもあるし」



「うん」



「でも、全部同じように、ムスッとした顔してるから、

 いっつもびくびくしちゃう。

 今日は何で怒ってるのかな?って」



「そんな。

 気にすることないのに。

 放っておけばいいんだよ」



「でも、ほら、一応、好きだし……」



「片想いの彼?」



(うなずく)



「そっか。そりゃあ、会えたら話したいもんねぇ」



「うん……」

(元の話はこちら)



「それでね、お店は夜の2時ぐらいに出たのよ」



「また、中途半端な時間だな」



「でさ、終電逃してまで、マネージャーと一緒に居酒屋に行ったわけじゃん」



「うん」



「じゃあ、どうしようかって話になって」



「タクシーで帰ればいいじゃん」



「そういう話もあったんだけど、

 それも面倒だね、ていうか眠いよね、って話してて」



「おいおい、まさか」



「ホテルに行ったのよ」



「ビジネス?」



「ラブ」



「ラブホかよ(笑) 

 あー、はいはい。そこでしちゃったわけだ」



「ううん。

 さっきも言ったけど、向こうも私もそんな気分じゃなかったの。

 第一相手は家族があるしね」



「不倫する相手は家族がいるもんだよ」



「純粋に、ホント、純粋に寝たかったのよ」



「ふーん。まぁ、いいや。で?」



「ホテルのシャワールームはガラス張りだったわ」



「だから、いらないって、そんな情報」



「あれ、絶対、私がシャワー浴びてるときに、裸を見られたわね」



「入ったのかよ」

○電車にて(昼下がり)



「いやー、去年は大変だった」



「あー。大変そうだったよ」



「しゃれにならないって。

 自分のことだけでも大変なのに、両親離婚するとか言い出すし」



「まるくおさまって良かったねぇ」



「それ以外にも、あれやこれや、ホント頭が痛かったよ」



「半分死にそうだったよね」



「マジ。死にかけた」



「ははは」



「今年は何もないでいいなぁ」



「何もないで?」



「うん。そう。

 平々凡々、いいことも起きなくていいから、何もないでいい。

 疲れたよ。あたしは」



「でも、あれだよね」



「なに?」



「僕も平凡な人生がいいって毎年思うんだけど、

 振り返ってみると、

 平凡な1年なんて、1度もないんだよね」



「ああー」



「きっと平凡にはならないようにできてるんだよ。1年って」



「そっかぁー。言われてみれば、そうかもねぇ」



「だから今年もきっと、平凡じゃ終わらないんだよ」



「はは。やだなぁ」



「そうでもないよ。

 いろいろ起きるってことは、きっといいことなんだよ。

 何かが今年も起きる、って思いながら過ごすのは、

 結構楽しいもんだと思うな」