西岡利晃 ”偉大な敗者” | BOXING MASTER first 2006-2023

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輪島功一選手の試合に感動、16歳でプロボクサーを志し、ボクシング一筋45年。ボクシングマスター金元孝男が、最新情報から想い出の名勝負、名選手の軌跡、業界の歴史を伝える。

試合会場、米カリフォルニア州カーソンのホーム・デポ・センターには、ボクシング興行史上最多となる7665人の観衆で埋まった。リングサイドには、米ケーブルテレビHBO解説者、元世界4階級制覇王者ロイ・ジョーンズ・ジュニア、メキシコのテレビ局の解説者として元世界3階級制覇王者フリオ・セサール・チャベス、同マルコ・アントニオ・バレラら名王者の顔が。


13日(日本時間14日)、4階級を制覇しているWBO世界Sバンタム級王者ノニト・ドネア(比)に挑んだ、WBC同級名誉王者西岡利晃(帝拳)選手は9回TKOで敗れた。


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天才少年といわれた18歳でのデビュー当時は、「無敗のまま22歳で世界を取り、無敗のまま引退」と夢を口にした。しかし、天狗の鼻はすぐにへし折られる。2戦目で後のOPBF王者中村正彦(角海老宝石)選手に痛烈なKO負け。


世界初挑戦は2000年6月。辰吉丈一郎(大阪帝拳)選手からWBC世界バンタム級王座を強奪していたウィラポン・ナコンルワンプロモーション(タイ)には、都合4度挑戦するも2分2敗。その後、アキレスけんの断裂に見舞われ、「西岡、まだやってるの?」との声も聞えてくる。


5度目の世界挑戦は2008年9月15日。ナパーポン・ギャットティサックチョークチャイ(タイ)と、WBC世界Sバンタム級暫定王座を争い判定勝ち。プロ14年目にして、ようやく念願を果たした。


正規王者イスラエル・バスケス(メキシコ)が網膜剥離で戦線離脱し、正規王者へと昇格した西岡選手は、2度目の防衛戦で指名挑戦者ジョニー・ゴンサレス(メキシコ)の挑戦を受ける。敵地へ乗り込んだ王者は、ダウン挽回の逆転KO勝利。


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これはビッグな勝利だった。防衛を重ねた西岡選手は、昨年10月ラスベガス・MGMグランドのリングで、元2階級制覇王者ラファエル・マルケス(メキシコ)の挑戦を受け、明白な判定勝ち。ゴンサレス、マルケスの知名度の高い実力者に海外で勝ったことで、「ニシオカ」は評価を高める。


プロ18年目。キャリア集大成である最高の舞台は自らの力で掴んだ。そして敗れた。


江戸時代の剣豪・宮本武蔵を尊敬しているというドネアは、「ボクサーとサムライは重なる。勝利へすべてをささげる。たとえリングで命を落としても後悔はない。そんな気持ちで戦っている」


「西岡はこのクラスで最強だった」


戦ったドネアの言葉が全てだろう。


試合後引退を示唆した帝拳ジム・本田明彦会長は、「これでもかというほど、ひどい目に遭った。人生は平等」と、不屈の努力で世界一の座を掴んだ愛弟子を労わった。


そして、リングを降りた偉大な敗者は、共に世界を目指して歩んできた美帆夫人の胸に顔をうずめて泣いた。


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