アリvsフォアマン・キンシャサの奇跡! | BOXING MASTER first 2006-2023

BOXING MASTER first 2006-2023

輪島功一選手の試合に感動、16歳でプロボクサーを志し、ボクシング一筋45年。ボクシングマスター金元孝男が、最新情報から想い出の名勝負、名選手の軌跡、業界の歴史を伝える。

1974年(昭和49年)10月30日。アフリカ大陸ザイール共和国の首都キンシャサ。『5月20日・サッカー・スタジアム』。午前4時。世界ヘビー級1位モハマッド・アリ(米)は、無敵の世界ヘビー級王者ジョージ・フォアマン(米)を倒した。


「モハマッド・アリィ~が勝ちました!・・・」


40戦全勝37KO勝ち。1973年1月、アリが敗れていたジョー・フレージャー(米)を軽く2回で粉砕し、世界ヘビー級王座に駆け上がったメキシコオリンピック金メダリスト。ジョージ・フォアマン。9月の初防衛戦は、東京のリングでジョー・キング・ローマン(米)を初回KO。怪物の強さをまざまざと見せ付けた。


笑わない。その不適な表情は見る者を恐れさせた。74年3月、2度目の防衛戦では、アリのアゴを砕いた男ケン・ノートン(米)を問題とせず2回でノックアウト。3人目の挑戦者アリに勝ち目はないと見られたのは当然である。



世界中の専門家100人のうち99人は自信を持ってアリのKO負けを予想した。


「足を使わなければ負ける」


「ロープを背にしては勝てない」


脂の乗り切った26歳のチャンピオンに対し、32歳の挑戦者が世界王座に就いたのはもう10年も前になる。徴兵拒否で作った3年間のブランクは、取り返せないとされていた。


★EVERLAST ミニグローブ&キーリングス 「これいいねェ~!」具志堅さんから言われました!(~~)

ブログランキング

★プロボクサー減量着の決定版・軽い・汗が出る! ★デラホーヤ・タイソン・激レアお宝Tシャツ!


賭け率1-8。「殺されなければ幸運」とまで言われた世界ヘビー級王者ソニー・リストン(米)への挑戦。蝶のように舞い、蜂のように刺したアリは、世界中をアッといわせてみせた。「俺は人が不可能と言うことを可能にして今日の名声を築き上げたんだ。俺はミラクルメーカーだ」。


フォアマン戦の賭け率は5-2でフォアマン有利。リストン戦ほどではない。いかにリストン戦での勝利が番狂わせかがわかるが、今のアリに多くは望めない。「判定に持ち込むだけでも奇跡」。生きた伝説はもう終わったと見られていた。


ファイトマネーは双方500万ドル(15億円)。勝者に贈られるチャンピオンベルトは、15万ドル(4500万円)。会場には10万席が用意されるという。ザイールが国をあげて挑む一大イベント。


  BOXING MASTER/ボクシング マスター


当初9月25日に予定されていたこの試合は、試合10日前の練習中にフォアマンが右目上をカットし、延期されていた。共同プロモーターの一人ドン・キングも大きな被害を蒙った。その額は100万ドル(3億円)ともいわれる。世界75ヶ国10億人がTV観戦すると見積もられるスポーツ史上最高のビッグ・イベント。


フォアマンの負傷により、アリのジャブが新しい傷口を裂けば奇跡が起こる。アリの勝利を信じたい輩にとっては、意気あがる出来事であった。しかし、傷という弱みにしか勝利を結び付けられなかったのも事実である。


「アリはファンを自分の相手と敵対されるように仕向けるだろう」


「これはリング上の相手にとって、とてつもない圧力になる」


メキシコオリンピックで金メダル獲得。その後のリング上で星条旗をかざしたフォアマン。徴兵拒否のアリ。同じ黒人なのだが、ザイールの人々は、アリの熱狂的信者と化した。


「アリ・ブーム・マ・ヤ!!(アリ、ヤツを殺しちまえ!!)」

  BOXING MASTER/ボクシング マスター

午前4時。観衆6万人。5月20日スタジアムは、「アリ・ブーム・マ・ヤ!!」の大合唱。


「俺に、家でも何でも賭けてくれ!」


挑戦者は高らかに8ラウンドKO宣言。


試合開始。アリは動かない。勝利への生命線といわれた自慢のフットワークを使わない。それどころか、「ロープを背にしたら勝ち目はない」と言われていたのを無視するかのように、ロープを背にフォアマンに打たしている。顔面はしっかりカバーされているが、フォアマンの重いパンチがボディにめり込む。


”頭が死ねば胴体も死ぬ”。これはアリの持論である。


カバーの隙間から、時折鋭いショートストレートを打ち込むアリ。タイミングを計って放たれるブローは、徐々に命中率がよくなる。5回。疲れの見えるフォアマンだが、強烈な左フックがありのアゴ先をかすめると挑戦者はグラついた。ここぞとばかりに襲い掛かるチャンピオン。


ピンチを脱したアリは、得意のワン・ツーを炸裂させ形成を逆転させる。フォアマンはこれまでダウンオ経験がない。フレージャーの左フックをもらってもケロリとしていたものだ。6回、7回と試合はアリのペースになって来た。


運命の8回。アリは相変わらずロープを背に戦う。パンチを打ち込むフォアマンだが、その威力はやや色あせてきたか。確かに疲れた。そして、その時はやって来た。誰も予期せぬ突然に。


ロープ際から脱出したアリのワン・ツーが、やりのように鋭くフォアマンを打ち抜く。ヨロヨロと後退したチャンピオンは、あっ気なくキャンバスに崩れ落ちた。


「フォアマンが倒れた。信じられません!」

  BOXING MASTER/ボクシング マスター-未設定 BOXING MASTER/ボクシング マスター-未設定

中学生の私はこの試合を見る為に、授業が終わると即効で家に帰った。放課後の合唱祭の練習をすっぽかして。

「クラスの和とボクシング、どっちが大事なんだ」


「帰ります」(~~)


答えは明白である。クラスの和などに興味はなかった。


アリが叫ぶ。


「お前らを負かした!”絶対俺が勝つ”と言ったのに、だれも聞きやしなかった!」


8回2分58秒。またしても伝説を作り上げた大衆のヒーロー・アリ。


「実力の50%も出なかった」


力なく敗者はつぶやいた。並みのボクサーへと転落したフォアマンは、失意のうちに一時引退。だが、宣教師となって再びリング復帰。世界ヘビー級王座復帰を果たす。


キンシャサノキセキ っていう馬いるんだよなァ。シャイアンから聞いたよ」(~~)

「そりゃまた凄いですねェ」(~~)


「アリって凄いな」



毎日の”励み”に、応援よろしくお願い致します→  にほんブログ村 格闘技ブログ ボクシングへ  【TOP】 【目次】


MIZUNO SHOP ミズノ公式オンラインショップ