ゴメス25勝全KOvsサラテ55勝53KO | BOXING MASTER first 2006-2023

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輪島功一選手の試合に感動、16歳でプロボクサーを志し、ボクシング一筋45年。ボクシングマスター金元孝男が、最新情報から想い出の名勝負、名選手の軌跡、業界の歴史を伝える。

1978年(昭和53年)10月28日(現地時間)。プエルトリコ・サンファンで開催された軽量級怪物対決。55戦全勝53KO勝ちのWBC世界バンタム級王者カルロス・サラテ(メキシコ)が、WBC世界Sバンタム級王者ウィルフレッド・ゴメス(プエルトリコ)に挑戦。

バンタム級王座を8度KOで防衛しているサラテ。デビュー戦こそ引き分けたものの以後25連続KO勝利をあげているゴメス。こちらも5連続KO防衛中だ。予想はサラテやや有利。サラテ172cm、ゴメス165cmの身長差分だけ挑戦者優位と見られていた。

パーフェクトボクサー・サラテのボクシングはまさに教科書。26歳のメキシカンは新たな歴史を作る。私もそう感じていた。


ウィルフレッド・ゴメス。

この年1月19日、北九州市のリングでロイヤル小林(国際)選手を、3回素晴らしい左フックカウンターでキャンバスへ沈めたゴメス。その一撃は芸術的であったが、まだ何かスキがありそうな感じも残した。小林選手は、一発の威力ではゴメスを上回るとされ、大いに期待をかけられていたものでした。

朝の計量で挑戦者は2ポンド半オーバー。2時間半かけて1キロ余りをそぎ落とした。後からひどい発熱状態にあったとも聞いた。しかし、クーヨ・エルナンデス・マネジャーとの不仲説。練習不足、アルコールに溺れている等、よくない噂がバンタム級王者を取り巻いていた。

21歳の王者は1ポンドアンダーでパス。地元の試合とあって大張り切り。17万5千ドル(約3千4百万円)のファイトマネーも王者をやる気にさせた。

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最近、この試合の模様を見る機会に恵まれた。とみぃ・は~んず さんありがとうございます。さすがにこれは好ファイト。挑戦者のコンディション云々が伝えられているが、伸び盛り21歳のチャンピオンの動きのよさが目立った。

「サラテとゴメス知ってるか?」

「知りません。誰ですかそれ?強いんですか?」

「なんだよ全然知らないの。ホントかよ~」

もう31年も前のスーパーファイト。現代のボクサーが知らないのも無理はない。ただ、その戦歴を聞いた時の驚きようは面白い。

        

左で距離を取るサラテ。ファイターゴメスは、さして高くないガードで前に出る。少しでも接近しようものなら、挑戦者は両グローブをしっかり上げ固いブロック。ゴメスの強打を十分に警戒している。

4回、王者の右ストレートで挑戦者はダウン。立ち上がったサラテを猛攻のゴメス。再びダウンのバンタム級王者。大観衆の声援で、レフェリーにゴングが聞こえなかったのはサラテには不運。

 ペタしてね

「レフェリーがちゃんと止めなかったのが応えた」

5回。プエルトリカンはメキシコのアイドルに襲い掛かる。強烈な左フックで三度キャンバスへ崩れたサラテ。コーナーからタオルが投げ込まれたが、レフェリーハリー・ギッブス(英)はこれを無視。8カウントを数えた後、挑戦者の目を覗き込み、44秒ゴメスのノックアウト勝ちを宣言した。

 

バンタム級王座は保持したままだが、無敵サラテは7万ドル(約1千360万円)と引き換えに、痛い初黒星を喫した。無言のサラテに変わりエルナンデス・マネジャーは、「リターンマッチを望みたい」。

WBCホセ・スレイマン会長はバンタム級王者に、「90日以内。1位メンサ・パロンゴ(トーゴ)vs2位ルペ・ピントール(メキシコ)戦の勝者」との防衛戦を示唆している。

サラテと同じエルナンデス氏にマネージメントされるピントール。試合後。サラテとエルナンデス氏の関係はますます悪化。5ヵ月後バンタム級王座を3回KOで護り再起を果たしたサラテは、同僚対決に臨む事になる。

そして、”サラテ協栄ジム移籍!”というニュースが流れる。トレードマネーは2千万円。しかし、これは実現しませんでした。エルナンデス氏はサラテのマネージメント件を一時的に譲渡し、79年6月3日ラスベガスでサラテvsピントール戦は実現。


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サラテは王座を追われるのであるが、そのスコアリングは何とも奇妙。142-143が2者。145-133の12ポイント差でサラテ。ピントールはダウンも喫している。不可解な敗戦に怒ったサラテはエルナンデス氏をなじり、怒りの一時引退。7年の時を経てカムバックするが、Sバンタム級王座は遠かった。

勝者ゴメスは、試合後減量苦を理由にダニー・ロペス(米)の持つフェザー級王座挑戦をほのめかしたが、これは実現しない。83年の王座返上まで17連続KO防衛の快記録を打ちたてた。後フェザー級王座も手にするゴメスだが、サラテ戦後がピークだったのかもしれない。

両選手、明暗を分けた31年前のスーパーファイトでした。

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