当時、お茶の間の人気をさらっていたのはキック・ボクシング。TV局からプロレス業界へ流れるお金は年間5億円。キックボクシング界へは2億を上回るお金が入るという時代。斜陽化したプロボクシング界にTVの定期放映はなくなっていた。
興行を盛り上げるために、人気絶頂のキックボクシングと国際式ボクシングを一緒に興行する。ムエタイの本場タイではごく当たり前の事である。国際式とムエタイ掛け持ちで交互にリングに上がる選手もいる。日本へもそんな選手は来ている。
日本期待の本格的ヘビー級・西島洋介山選手の去就が取りざたされた時、IBF日本は西島選手獲得に動いた。先代会長の意を汲んだ私はJBCライセンスを返上しスカウトに動いたものだが、実は他からの以来も受けていた。
K-1石井和義館長(当時)である。スカウト条件は全く同じ。K-1興行で西島選手にプロボクシング試合をさせたいというものであった。あれから10年以上の時間が過ぎた。今となっては、よい経験をさせてもらったと思うばかりです。
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72年2月。全日本ボクシング協会副会長の座にあった金平会長は、その職を辞す。各ジム会長と個別に会見。地固めをした上で、3月、併用論を協会側へ提案するも、あえなく却下。そればかりか、協会除名処分に発展した。
「第一にファンを考えなければいけない。今、ボクシングに満足しているファンがどれだけいますか?試合の入場人員を見れば一目瞭然。ボクシングに籍を置く人間としてさびしく恥ずかしいですよ」
4月27日後楽園ホール。東洋ウェルター級王者 龍 反町(野口)vs世界3位サーマン・ダーディン(米)の組み合わせで発表された観衆は1600人。前年人気回復の為にファイトマネーの公開、メキシコ製グローブの使用、試合予想懸賞等を導入したボクシング界であったが、起爆剤にはならなかった。
反対の理由はJBCルール。協会規約。他のスポーツに携わったり、従事する事は禁止されている。しかし、「規約はわかります。でも、こういうものは改正しても悪くないでしょう」と金平会長。
「百万人に一人出るか出ないかわからないスター、パンチ力があって、スタミナ、根性を備えた男の出現を待っているんですか。そして、その時までボクシングファンに待っていてもらうんですか。変身も必要なんです。」
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世界フェザー級王座を失った西城正三(協栄)選手は、半年間考えた末併用論に納得し、キックの練習を始めた。元東洋バンタム級王者金沢和良(アベ)選手も一緒にタイへ修行へ向かう。現役の日本フェザー級1位歌川善介(勝又)選手もキック転向と報じられている。
昭和47年。金平会長のキック併用論、カシアス・クレイvsマック・フォスター戦開催等がごちゃ混ぜになってボクシング協会は分裂した。
「かえってサッパリして行動を起こしやすくなりましたよ。企画実現にコツコツやりますよ」
そんな金平会長に賛同するジム会長は日増しに増える。併用興行は実現する事はなかった。いや、JBC得意の”特例”で一度だけ認められた過去がある。除名処分の余韻覚めやらぬ昭和51年新春。それは、名門野口ジム25周年興行として行われた。
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野口一門25周年記念写真。
国際式野口ジムマネジャーから転進し、スーパースター沢村 忠 (目黒)選手要するキックボクシングの始祖野口 進 氏は、”ライオン”野口 進 会長の長男。野口ジムは次男 恭 氏が継いでいた。
1月12日後楽園ホール。観衆2500人。セミファイナルには東洋ライト級チャンピオン沢村選手が登場。メインはWBA世界Sフェザー級タイトルマッチ。王者ベン・ビラフロア(比)vs8位柏葉守人(野口)。ボクシング試合はに10回戦一組、4回戦四組。
金平会長のいう所が取り入れられた格好になった特例興行。王者ビラフロアは網膜はく離を克服しての試合でもあった。今、キックボクシングの人気がどれ程のものなのかは、失礼ながらわかりません。
つい先週。通りがかりの後楽園ホールチケット売り場には、かなりの若者が行列をなしていた。
「なにこれ、ボクシングか。そうじゃないよなァ」(~~)
ポスターを見る。貼られていたのはプロレス。アントニオ猪木vsタイガー・ジェット・シンの時代は知っているが、現在のプロレス模様はとんとわからぬ。しかし、素直に感心しました。
「すごいなァ、プロレス」
新しいファン獲得は必要不可欠、大事である。しかし、浮気しないコアなファンをもっと大事にする事で、新しいファンは増えていくのではないか、そんな事を考えたりします。一時は年間興行ゼロとなったハワイプロボクシング界。久々の興行には、目を輝かせ、毎ラウンド熱心にスコアを付ける老ファンの姿が。
「いいファイトすればお客さん(ファン)は帰ってくる」
それは万国共通ですね。
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