ロイヤル小林・46日間の世界王座 | BOXING MASTER first 2006-2023

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輪島功一選手の試合に感動、16歳でプロボクサーを志し、ボクシング一筋45年。ボクシングマスター金元孝男が、最新情報から想い出の名勝負、名選手の軌跡、業界の歴史を伝える。

76年11月24日、WBC世界S・バンタム級王者ロイヤル・小林(国際)選手が、敵地韓国ソウルへ出かけて、前月9日リゴベルト・リアスコ(パナマ)を8回KOして奪ったばかりの、タイトル初防衛戦を行いました。

せっかく手にした世界タイトルを、僅か46日で失うとは・・・。なぜ、こんなに短い調整期間で敵地でやらなければいけなかったのか・・・。多くの疑問が残る、世界戦です。

しかも、挑戦者・廉東均が前チャンピオン、リアスコに挑んだ試合では、判定を巡って暴動が起こり、生命の危険を感じたR・ロサディラ(米)主審が、一度はリアスこの手を上げながら、試合後判定を覆し、廉の勝ちとするとんでもない事件が起こっています。(これは後日、正式にリアスコの勝利を認定)

10月16日に行われた洪秀換ーアルフォンソ・サモラの世界バンタム級タイトルマッチでも、判定に不服の観衆の1人がが、レフェリーをノック・アウトするという不祥事があったばかり。

この試合、テレビ視聴率は80%を超えるほどの人気で、騒ぎの一部始終も全国に流れています。

問題だらけの韓国リング。特に試合開催地は”韓国”と決められていたわけではありません。僅か46日・・・。

試合直前、これまで小林選手をずっと指導してきた佐藤光雄トレーナーが陣営からはずされ、セコンドにその姿はありません。オフィシャルは、レフェリー吉田勇作、ジャッジ森田 健 、もう一人は韓国人ジャッジ。

ウェートのきつい小林選手は、ソウル入りして以来1日1度の食事しか出来ず、100グラムの肉と僅かの野菜だけ・・・。前日は、食べる事が出来ないで当日計量。

試合は第1ラウンド、すべって自分で転んだところに、たまたま相手が打っていた左ジャブが、かすっただけの”ダウン”で勝敗が決してしまいます。

以後あせった小林選手、KO狙いの大振りに、一方の廉は、ポイント守りのフットワークだけで15ラウンド終了。吉田レフェリーは引き分け、韓国人ジャッジは4ポイント、同じく森田さんも2ポイント廉。

何とも淡白な試合で、あっけなくタイトルを失ったのでした。

「セコンドの指示通リ戦った・・・」、「ファンが、、ファイトしろと言っていたのは判ったが、小林に勝つにはこれしかなかった」廉選手の勝利は、”執念の勝利”と讃えられました。

「僅か100万出せば、日本で出来た」」と、この試合の事は聞いています。ウーン、マネジャーの腕?考え方?・・・。

世界タイトルと共に、トレーナーも失った小林選手。以後、エディ・タウンゼント氏がトレーナーに就任し、世界タイトル奪還を狙いましたが、これは相手が悪かった。

ウィルフレッド・ゴメス(プエルトリコ)、エウゼピオ・ペドロサ(パナマ)。当代一流の名チャンピオンと時代が重なってしまいました。そういえば、最初の世界タイトル挑戦も、アレクシス・アルゲリョ(ニカラグア)。

世界王者になった事は、運が良いと言うべきか、もっと防衛出来たのに、運が悪かったと言うべきか・・・。ロイヤル・小林は良い選手でした。