長距離TT備忘録 | 桜伐ル馬鹿梅伐ラヌ馬鹿

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北海道のサイクリング好きのブログ。

10月16日の宗谷岬TTは自分にとっては4年半ぶりの長距離TTだった。

それまで度々巡航の練習はしていたが、TTは勝手が違う。

来年以降のために記憶がフレッシュなうちに諸々記しておく。

自分独自の部分も多いと思う。

 

【安全第一】

これはどのライドも同じだ。趣味として自転車に乗っている以上、無用なリスクをとる訳にはいかない。

数百kmに及ぶ長距離でもTTとして走る場合にはそれなりの速度が出る。それゆえ万一の場合には負う怪我は重くなる。

そうなってはいけないので意識したことがいくつかある

 

①機材の挙動について知っておく

自分はTTではトライアスロンバイクをほぼDHバー握りっぱなしの状態で使っているが、その状態は前輪に対する荷重がロードバイクのブラケットポジションと比べて大きくなり、横風に対する挙動などが異なる。

横からの突風は予測不能なタイミングで発生する上に対処に時間的な猶予が無い。よって頭で考える前に体が反応してバランスを立て直す事が出来る状況になっておく必要がある。

そのために自分は1000km以上の距離を本番で使うバイクで走りこむようにした。

P5Xについては宗谷岬TT前に400km程しか走りこむ事が出来なかったが、Andeanでの今年6500kmの走り込みがあったのである程度最初から体になじんだ感じになっていたと思う。

 

②コースの路面状況や交通状況について知っておく

ルートごとに、舗装が荒い区間や交通量が多い区間、対向車線にはみ出してくる車が多い区間などがある。

それらについてはウェブ上に情報が無いので自分で体験して知っておくのが良いと思う。

例えば自分の場合函館や宗谷岬に向かう道についてはこれまでに何度となく走っているので、「この区間はまずい」という部分は予め避けるようにしている。

 

③コンディションの変化に対して臆病になっておく

どんなに機材が体になじんで走り慣れたルートでも、夜間や雨天では事故やトラブルの可能性が高まる。

自分の場合、夜間はなるべく避けるようにし、路面がウェットになった場合にも基本的には走らないようにしている。

外的要因だけでなく自分の問題としても、普段よりも変速のタイミングが遅れる、目線がキョロキョロ動く等、集中力が下がっている兆候がある時には即座に打ち切るのが良いと思う。

 

【走り方】

①休憩を削る

巡航練とTTは、維持できる限りの一定強度をキープする点では共通しているが、休憩をしっかりとる事が出来るかどうかが異なる。

自分はしっかり休憩をして巡航の質を上げながら走るのが本来は好きなのだが、TTではそれは出来ない。

 

②トルクを抜かない

TTでは区間全体を通して自分の出せる出力をロスなく速度に変えて行きたいので、下りや追い風でもトルクは抜かず、出せる限りの速度をキープする形になる。

普段の練習では、これを続けるために一番やりやすく体に普段がかからないフォームと重心位置について探るようにした。

 

③巡航出力は一定で加速時に少し踏む

巡航出力はムラが無い方が良いと思い自分も巡航練でそれを意識してきた。

宗谷岬TTでは平均出力228Wに対して加重平均出力が232Wとあまり変わらない形で完走する事が出来た。

不用意に筋力を使ってしまうと疲労が蓄積してある程度距離を走った時点でトルクをかけるのが難しくなる。②とも関連するが、常に脚に対して少し負荷がかかっている状態で、体重をかけてそれをキープするのが良いと思う。

ただし、勾配変化や登りきりで下りに差し掛かる場面など、速度が落ちていてなおかつその後に高速巡航が可能な場合などは巡航速度に短時間で乗せるために加速するのが良い。

 

④変速は早めに

アップダウンが続く区間などで変速のタイミングが遅れることでも脚に不要な負荷がかかる。

数百km単位で走る場合はその負荷が確実に後半のペースを落とす原因となるので、絶対にそれは避けたい。

アップダウンでは、下りで可能な限りの速度に素早く乗せて、平坦区間はケイデンスを落とさずそれをキープし、登りでもトルクが変わるまではギアを維持して回し続け、トルクが一定となるタイミングを見極めながら変速するようにした。

 

⑤エアロポジションをキープ

これは速度を維持するのには最も重要な事だと思う。

可能なら、短距離のTTを本気で走るのと同じセッティングとフォームで長距離も走り切るのが良い。

自分は距離にかかわらず、前面投影面積を極力小さくして体にあたる空気をスムーズに流すために、肘を狭くして頭を下げる事を常に意識した。

自分の場合、はじめは頭を下げたDHポジションを長時間維持することは若干辛く感じたが、1000km単位で走りこむうちにそれが最も自然と感じるようになった。

P5Xは十分に走りこむ事が出来たAndeanと比較して殆ど適応を進める事が出来ない段階での宗谷岬TT投入となったが、走行距離200km強の遠別あたりからは最も頭を下げて肘を狭くしたフォームが自然に感じるようになった。これもAndeanでの今年6500kmの走り込みが効いたのだと思う。

 

【機材】

①バイク

自転車は可能な限り空力の良いものを使うのが良い。

車体の空力だけでなく、落差をとって肘を狭めた空力の良いポジションを取る事が出来るジオメトリーのものを選ぶのが大切だと思う。

FDを外してフロントシングルにしたり、スルーアクスルをでっぱりの少ないボルトオンタイプのものに変更したり、細かい部分の空力改善を重ねていくのも効果がある。

ホイールはリムが深いもの、リアはディスクホイールを使う事が出来れば最高だろう。

空力以外の麺では、高性能なチェーンルブを使うのも効果的だと思う。

自分はP5Xにはまだ施工していないが、来年はMadoneやAndeanと同様abusoluteBLACKのグラフェンルブを使おうと思う。

 

②服装

服装については、TTヘルメット、エアロワンピース、アームウォーマー、シューカバー等、可能な限り凹凸が無く、表面も空気を流しやすい加工がされたものを使うのが良い。

費用的に、自転車の車体そのものよりもあれこれ試しやすい。

一見フィット感が良くても細かいシワや表面の素材などで風を受ける感じが大きく変わる事もあるので、強風下や高速下で実際に使うものを時間をかけて絞り込んでいくのが良いと思う。

 

【補給】

休憩時間を少なくするために、補給は車上で行うのが良い。今回はソフトフラスクにジェルと練乳を入れてスタート時点で背中に入れ、それを摂りながら進んだ。

自分が宗谷岬TTをする場合にはすべての行程を一気に走りだけの補給を持ち合わせる事が難しい。加えて体を少しほぐしたくもなるので2回停車したのだが、車上である程度エネルギーを摂ることが出来たことで停車の際に食べるものも少なくて済み、タイムロスを小さくする事が出来た。

TTとして走る場合には、停車時に摂るものは疲労感を飛ばすためのエナジードリンク、エネルギー源のゼリー、痛みの発生を防ぐための痛み止め、脚攣りを防ぐための2RUN辺りに絞るのが効率的だと思う。

一度エネルギー不足になってしまうとその時点で確実にペースが落ちる上に回復にも時間がかかるので、そううなる前の段階で十分に補給するのが大切だろう。

 

 

これらの工夫を積み上げた上で最終的にどれだけの速度で走る事が出来るかはライダーの維持できる出力によって決まるだろう。

距離にもよるが今の自分の場合半日維持できる出力となるとL2の上の方という事になる。

来年には今年以上にハイペースで走る事が出来るようになっていたいのでL2のゾーン自体を上に上げて行きたい。この冬も新たな目標を見つけてトレーニングにつなげたいと思う。