PikuminのCancer Staging Manual -10ページ目

PikuminのCancer Staging Manual

がんのステージングは治療や予後判定において極めて大事なものです。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/jgca2009/200903/509751.html

日経癌Expertの記事(おそらく登録読者のみ閲覧可能)


要するに胃がん取り扱い規約のステージングをUICC-AJCCのものに合わせるという方針が確認された。
来年の取り扱い規約からそうなる。

それはそれでいいんだが、私が恐れるのは、「TNMに合わせたはいいが、取り扱い規約にUICC-TNMに関するいろいろなトンデモ解釈が書かれて、胃がん取り扱い規約しか読まない病理医や臨床医がそれを読んで大きな誤解を広めてしまうことだ・・・

う~ん。おそらく避けがたいね。

pTis/Mの問題は、おそらく(いや、絶対に)改善されることはないだろうな。


なぜ、胃癌取り扱い規約がUICC-TNM型のStagingに変更するかというと、胃癌取り扱い規約のStagingが役に立たないからだ。


知らない人はビックリするだろうが、胃癌取り扱い規約は、胃癌をどう治療するかの方針を立てたり、治療をどう標準化するかの知識を蓄えたりするのには優れているが、予後を予測するにはさっぱりなんだ。


詳しくは

Comparative Evaluation of Gastric Carcinoma Staging: Japanese Classification Versus New American Joint Committee on Cancer/International Union Against Cancer Classification

Ann Surg Oncol. 2004;11:203-206. by Chikara Kunisaki,

う~ん。

肺癌のTNM分類は少しの問題があるけれど割とまじめに行われている。


でも、やっぱりもんだいがある。それはこれからpaperで明かなっていくとして・・・・

肺癌学会は来年初めからTNM第7版で臓器がん登録を開始するそうな・・・

確かにtextの大枠は既に定まった。

しかし、どんな記載になっているのか、どんな細則がつけられているのか

General ruleと臓器別ruleの矛盾は発生していないのか

さっぱりわからない。

わからない状態は2010年1月の段階で解消しているとは思えない。


せめてsupplementが出るまで待つべきだ。

失敗するな、これは

ま、いろいろとあるでしょうが

海の見える別荘に引退して毎日、泳いだり,騒いだり、飲んだりして、のんびり暮らす・・・とか


職業的に考えると、摘出された標本を見て正確にその予後を予言することにつきる。

その為に、『必要な所見項目のリスト』をもち、できるだけ完璧に『所見を採り』、できるだけ完璧に『その所見を予後と相関させることのできる表を手に入れ』たい。


アメリカにはCollaborative Stagingというのがある。

皆が思うようにTNMだけではもはや充分ではない。組織型・表現形(immunophenotype)・遺伝子型(genotype)等を組み合わせて、予後が予測する。
それも単一施設ではなく、アメリカのがん登録データ(要するにアメリカの殆どのがん)に関して予後に関係するようなデータを収集し、究極の多施設共同で悉皆性の高いデータを取る。

結果は、全ての人に公開。


これは、完璧にその所見を予後と相関させることのできる表を手に入れたいと思う病理医にとっては見逃せない杖。

しかし、TNMでは充分ではないが、TNMが最も大事な基本データである点は変わりがない。TNMがつけられないようでは、使う権利すらない。また、そんなデータが元になってはColllaborative stagingの成功はおぼつかない。

しかも、まだまだ日本に導入される日は遠い。

だれもCollaborative stagingなんてしらないでしょ?


Collaborative stagingの解説↓

http://www.worldcancercongress.org/doc/abstracts/S-578%20Edge.PDF

例えば乳癌は2cmがT1とT2の境、5cmがT2とT3の境。

肺癌は3cmがT1とT2の境。

甲状腺は2cmがT1とT2の境。


サイズがTの決定因子であることは多い。NもサイズでN2N3が変わる臓器がある。


その場合、必ず境目を挟んで、『以下』と『それを超える』と定義されている。『以上』が定義になるのはFIGOの定義を取り入れた子宮体癌のみ(例外はまだあるかもしれないが・・・)。


これはUICC Geranal rule No4と同じ観点から作られたルールだ。

即ち『どっちかの境目は軽い方に分類』ということ。覚えておくと悩まないですむ。

医者、あまっさえ病理医ですらCarcinoma in situの和訳は上皮内癌で問題ないと思っている。

これは噴飯もの(古い表現だが)の誤訳だ。


上皮内癌とは、そのものずばり、『がんに相当するような強い異型細胞が上皮内に増生している様な上皮内腫瘍』をさす。その正しい英訳は、intraepithelial carcinomaになるだろう。


対して、Carcinoma in situは”in situ”=『その本来の場所』にとどまるcarcinoma、という意味だ。

たとえ少々(微小な)浸潤を伴っていても極めて浸潤の乏しいもので、予後に与える影響も極めて低いものは、carcinoma in situとされるし、TNM systemではTisとされる。

例えば、大腸では粘膜内癌は、『大腸の上皮が本来あるべき場所』=『粘膜内』にとどまっており、切除されれば生命への危険も殆どないので、粘膜内で浸潤していても、欧米ではdysplasiaと呼ばれたりするし、Carcinoma in situと呼ばれたりもするし、TNMではTisとなる。

胃癌では、厳密に言えば微小な間質浸潤が示唆されるback-to-backやcribriformな増生を示す粘膜内tub1-2はintraepithelial carcinomaとしてTisとされる。(日本の一般のTNM分類は間違ってる)。

子宮内膜類内膜癌なんて、浸潤が小さいうちは上皮内癌としてすら扱われない。

乳腺のCarcinoma in situなんて、実際には半数くらい間質浸潤している(どこからをDCISと取るかで比率は変わる)。


だから、Carcinoma in situを上皮内癌と訳すのは完全に間違っている。

あえて日本語に訳すとすれば、カタカナで『カルチノーマインサイチュ』と書くか、少々の不都合を承知で『粘膜内癌』、本質を元に造語して『母地癌』なんかを使うべきだ。


確かに上皮は上皮内が本来の場所だから、間質に浸潤したら本来の場所から離れている・・・と思う人もいるかもしれない。

でも、それは違う。癌も上皮だから、single cell infiltrationをするごく異型の高い癌を除き、どこへ浸潤しようと上皮巣の中にある。殆どの癌は上皮内にある・・・屁理屈だが・・・・


もしこれを読む人の中に医学部の学生がいたら、病理の授業ではこういう難癖を先生につけてみよう。

文献

UICC-TNMのメインテキスト

これだけ読んでもステージングはできない。しかも英語

Tnm: Classification of Malignant Tumours (UICC)
Tnm: Classification of Malignant Tumours (UICC)

UICC-TNMの公式ガイドブック

これを読んでないと何もわからない。General ruleやfaqが載ってる。でも英語

TNM Supplement: A Commentary on Uniform Use, 3rd Edition(UICC)
TNM Supplement: A Commentary on Uniform Use, 3rd Edition(UICC)

UICC-TNMのアトラス

これは図解だから解剖学が苦手だと便利。でも英語

TNM Atlas: Illustrated Guide To The TNM Classification Of Malignant Tumours (UICC)
TNM Atlas: Illustrated Guide To The TNM Classification Of Malignant Tumours (UICC)


UICC-TNMアトラスの日本語版

でも第五版

最新 TNMアトラス―TNM/pTNM悪性腫瘍の分類イラスト・ガイド


がん登録関連テキスト・初級/中級

がん情報センターが作ったもの。非売品


Accuracy of pTNM classification for lung cancer - a single institutional report at a Japanese comprehensive cancer hospital
Pathology International 2009, vol 59, issue3 (未リンク)


Self-assessment of pTNM classification for lung cancer - a single institutional report at a Japanese comprehensive cancer hospital
Pathology International 2009, vol 59, issueX (未リンク)


Link

UICCのHP

FaqやHelp Deskがある。


AJCCのHP SEERのHP

マニュアルのたぐいは殆どダウンロード可能。ただし英語


がん情報センター

院内がん登録などのマニュアルやMLがある。日本語


PikuminのCancer Staging Manual

ここ

殆ど更新していなかったが

現在Googleの検索順で


”TNM cancer”ではCNiI、アマゾンについで3番目

”pTNM"でもアマゾンに次いで3番目

”cTNM”では、国立がんセンターがん情報センターについで2番目

”UICC-TNM"では、オンライン書店や知ってる人の論文よりあとに来るけど6番目

"Cancer Staging Manual"でも日本語設定のGoogleだけの結果かも知れないが、AJCCのHP、Amazonなどについで堂々6番目


いずれも個人HP、ブログではトップ。

"がん ステージング”ではなんとトップ!

ただし”がん ステージ”ではランク外。『ステージをつけること』=『ステージング』をテーマにしてるのでステージと言う言葉をあまり使ってないからかな


こりゃ、まじめに更新しなきゃいかんかな

さて、マイナーなポイントかもしれませんが、子宮体癌で手術される例の大半はT1b-cです。

T1b-cは子宮に限局し筋層浸潤がある群をさします。

当然Stagingが大事な群です。

子宮体癌取り扱い規約を見ると、子宮筋層浸潤が50%以下がT1b、50%を超えるとT1cとなっています。

UICC-TNMおよびAJCCの第六版をみると子宮筋層浸潤が50%未満がT1b、50%以上がT1cとなっています。

50%丁度の事なんて滅多にないから、そんなに気にすることないじゃないか・・・と思うかもしれませんが、そうではありません。『50%くらいだな』『筋層の半分くらい浸潤している』と思うことはよくあります。とくに画像検査や肉眼では。そう言う症例を、T1bとcに分けるときにごそっと動くわけです。


これは、誰のミスというわけでもなく、体癌取り扱い規約がUICC-TNM第五版に基づいており、第五版までは50%以下はT1bだったからです。

そもそもUICC-TNM general rule 4によって、When in doubt, lowerですから、%であらわす基準があれば『以下』、サイズの基準があれば『以下』、と規定するのがUICCの標準です。

しかし、第六版ではFIGOの規定に準じることにしたために起こった『例外』です。

知ってる人が少ないので注意しましょう。


ま、clinicalにはそんなに重要ではないかもしれませんが。。。。

09年3月に、

『日本のがん診療連携拠点病院におけるpTNM分類に関するアンケート調査結果』をまとめた論文が出る(Pathol Int 2009, vol 59, issue 3)。

ただし、論文が出たあと1年はネットに載せるのは不可なので、abstractの日本語版をここに載せることにする。



日本のがん診療連携拠点病院におけるpTNM分類に関するアンケート調査結果


ABSTRACT
pTNM分類を行うことはがん手術標本に対する病理診断の重要な要素の一つである。
国際的には、UICC-TNMが標準のTNM分類として用いられている。今回我々はれた
日本のがん診療連携拠点病院の病理部門にpTNMに関するアンケートを送った。ア
ンケートは、TNM一般と肺癌のTNMに関する質問・クイズを主要な内容にしている。
回答者は78人、平均経験年数18.4年、70人が病理専門医であった。病理医として
の研修中や学会などでpTNMに関する満足な教育を受けたと回答している病理医は
2人しかいなかった。
UICC-TNM分類の基本的なルールのうち、『TNMの判断が困難なときは軽い方に分
類する』 『リンパ節直接浸潤はN1とする』『癌の周囲への進展によってTが変わ
る場合、浸潤癌の進展のみが評価される』等の重要な原則の認知率は、それぞれ
49/77(63.6%), 47/77(61.0%), 35/77(45.5%)であった。肺多発病変がmetastasis
かmultiple primaryかを判断するUICC-AJCCの基準を把握しているものはほとん
どいなかった。肺癌の場合病理診断依頼紙にcTNMが記載されている施設が26/
77(36.4%)にとどまる点などから考えて、病理医・臨床医ともにpTNMに関する意
識が高いとは言えなかった。日本におけるpTNM分類の現状は改善する必要がある。
また日本以外のpTNMの現状についての調査も望まれる。


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