PikuminのCancer Staging Manual -11ページ目

PikuminのCancer Staging Manual

がんのステージングは治療や予後判定において極めて大事なものです。

がんの診療においてステージング(進行度分類)は極めて重要です。


まず、ある人ががんがあると診断された場合、医者はそのがんがどこまで広がっているかを調べます。

進行度はがん患者の予後がどれくらい期待できるかを、がんの予後に強く関係する3つの因子(それ以外の因子が加わることもあります)

  がんの発生した局所での広がり(T因子: T-umor)

  局所リンパ節への転移(N因子: lymph-N-ode)

  遠隔臓器への転移(M因子: M-etastasis)       3つの組み合わせによって

0・I・II・III・IVの5つのグループに分けたものをステージ(進行度)、ステージを調べる行為をステージングといいます。

(5つではなくさらにIA, IBなどとさらに再分類されることもあります)


進行している方(ステージを表すローマ数字が高い方)が、生命に与える危険度は高くなり、予後に関する期待値(余命)が短くなります。

一般に進行しているがんの方が外科切除が難しく、また進行している方が悪性度も高いのが普通です。

外科切除は現在でもがんに対する最も効果的な治療法の一つなので、がんが局所にとどまって完全切除が可能である場合は良い予後が期待できます。

いまでは外科切除以外にもいろいろ効果的な治療法が利用可能になりましたが、外科切除をしない場合でもがんの進行度が低い方が治療効果が高いケースが多いのです。・・・競馬でいうオッヅのようなものとも言えます


ですから、ステージは予後予測だけではなく、治療方針の決定に使われます。


また、ステージは治療の善し悪しの判定にも使われます。ある治療法の効果を判定するのは同じステージのもの同士を比較しないと全く意味がありません。ちまた(ネット)にあふれるあやしげな○疫療法、キ○ント○ン、○ガ○ス○etc etcの宣伝。この手のものはステージングされた症例検討とは無縁です。


もちろんがん登録もステージ込みで登録されます。

というわけで、ステージングはがん診断の中でがんの有無の診断と並んで重要なステップなのです。


ステージには、各臓器の臨床系学会・放射線学会と病理学会の担当者が集まって決めた『取り扱い規約』にもとづくステージとUICCとAJCCが共同で決めたUICC-AJCC TNM分類があります。詳細は続く

まず1番目、これは問題ではありませんでしたが・・・


『おおむねの症例についてcTNMが依頼紙などに記載されていますか? 』

回答

Yes: 26, No: 34, どちらとも言えない: 17


正解は・・・・ないんですが、

基本的に、pTNMというのは、病理所見によってcTNMを補正することによってつけるものです。

ですから、cTNMを知らずにpTNMをつけるなんてことはありえません。

別取りしたリンパ節標本以外に、肺門部気管支周囲のリンパ節への転移を検索するため組織切片をルーチンに作製していますか?

YES:49

N0:28


思ったより、YESが多かったが、『こういう書き方をすれば、YESが多くなるよな・・』と反省しています

胸膜進展が疑われる場合、もっとも浸潤が疑わしい部分は必ず切り出ししていますか?
Yes: 76 No: 1 総計77

そうですね、切り出しましょう。


では、その結果をどう解釈しましょうか?


胸膜浸潤はTを分ける因子ですが、そのT2の基準は次のどれでしょう。 (N=77)


臓側胸膜近くまで進展する             

臓側胸膜のelastic membraneまで浸潤する  31 正解(43.7%)

腫瘍細胞が臓側胸膜面に露出する        37

壁側胸膜へ浸潤する                

その他:                                


これは取り扱い規約とUICC-TNM 6thの大きな違いです。取り扱い規約は2003年に出ているのに2000年版のUICC-TNN 6thではなくて5thに基づいて取り扱い規約のTNMを作ってる。

おもしろいですな

IV UICC-TNMに関するクイズ (YES・NO)

  正答率(%)
1:T1かT2か迷ったら、患者のことを考えてT2にする 
Yes: 11, No: 49, IDK: 17 63.6 77
2:リンパ節への直接浸潤はN因子とする
Yes: 47, No: 17, IDK:13 61.0 77
3:切除中に癌の組織をボトッと体腔内に落としてしまった。M1とする。
Yes: 0, No: 54, IDK: 23 70.1 77
4:術前化学療法を施して効果があった症例は、瘢痕の広がりを持ってpTを判断する。
Yes: 10, No: 42, IDK: 25 54.5 77
5:TNM分類がある臓器の原発性悪性腫瘍(血球系は除く)はすべてTNM分類される。
  Yes: 33, No: 20, IDK: 24     26.0 77
正解は色字下線で示す。 Ref: 正解の根拠となるreferenceのNumber. IDK: I do not know that. 無回答はIDKとして集計した

T1T2か迷ったら、患者のことを考えてT2にする』・・・と、とてもheartfulだけど

UICC-general rule より、『迷ったら、小さい方、証拠が充分でない場合は小さい方』

必ず守りましょう。

『リンパ節への直接浸潤はN因子とする』

補則ルール より

大事だから必ず覚えましょう


切除中に癌の組織をボトッと体腔内に落としてしまった。M1とする』

 ぶ~~っ!

体腔に落とすのはtumor spilageといいますが、これはTNMに数えません。

例外は卵巣癌のみ。T1ならT1cにT2ならT2cになります。


問:『術前化学療法を施して効果があった症例は、瘢痕の広がりを持ってpTを判断する』

ぶ~~っ

5版まではそうでした。

治療後に再判定したTNMにはyをつけてyTNM(あるいはycTNMあるいは ypTNM)と表記します。

6版からは生き残っている癌の範囲でyTNMを決めます。

問:『TNM分類がある臓器の原発性悪性腫瘍(血球系は除く)はすべてTNM分類される』

ぶ~~っ

肉腫、悪性黒色腫は大抵TNM分類されません。CarcinoidTNM分類されません。

軟部腫瘍の肉腫、皮膚の悪性黒色腫など臓器によってはそれらもTNM分類されます。がん取り扱い規約ではそういうことに一切関わらず、各臓器の取り扱い規約に従ってStagingされます。

V: 肺癌UICC-TNMに関するクイズ

4:Bronchioloalveolar cell carcinoma (BAC) is now defined as non-invasive tumor according to WHO tumor classification. ではBACpT分類はどうなるでしょう?

答えは、

BACの最大径を測り、そのサイズでpTを決める  正解率 53.9


5:UICC-TNM supplementには、"When size is the criterion for the T/pT category, it is the measurement of invasive component"と記載されています。では、BACを伴う浸潤癌の場合(例えばmixed BAC and papillary adenocarcinomaの場合)pTはどう決定しますか?


答えは、

BACを含めたサイズを測ってpTを決める   正解率 59.2


6:胸膜浸潤はTを分ける因子ですが、そのT2の基準は次のどれでしょう。

答えは、

臓側胸膜のelastic membraneまで浸潤する   正解率 43.7

7:肺癌の標本を検鏡したところ、癌主病巣から離れた部分に肉眼では気がつかなかった小さな癌結節を見つけた。どちらも浸潤癌のみよりなるpurepapillary adenocarcinomaであった。

答えは、

肺内転移と見なさない  正解率 11.7


解題は次↓


4と5:UICC-TNM においてBACは未だ例外扱いです。

BACは非浸潤なので、pure BACはpTisとし、BAC&Papillary adenocaならサイズに入れずに浸潤部のみを計測するのが当然ですが、現在UICC-TNMの規定の方が、肺がんの腫瘍組織学に追いついていません。



6:胸膜浸潤はTを分ける因子ですが、そのT2の基準は次のどれでしょう→臓側胸膜弾性線維を超える浸潤

これはsupplementやfaqには書かれています。

おもしろいことにUICC-TNM5thですでにこの規定はありましたが、UICC-TNM5thをタネ本にしている肺癌取り扱い規約はなぜか、完全露出が必要とされています。

更におもしろいことに、取り扱い規約の規則でTNMをつけている人でも多くの人が、弾性線維・完全露出ともに選択していませんでした。



7:X-pでも肉眼でも見えないような組織学的なサイズの病変は肺内転移と見なされません

AJCC参照のこと

子宮頸癌はIB1(T1b1, N0, M0)までは予後がかなりいい。

IB2(T1b2, N0, M0)からはI期とはいえ、予後が悪くなる。


で、その分類は割と難しい。

T1b2は¢4cm超の腫瘍。

T2aは子宮頸を超え膣に進展するが、腟上部1/3にとどまる。

T2bは子宮頸を超え、子宮周囲結合織に浸潤する。

定義は簡単だが・・・・実はその定義はほとんど間違えている。


まず、T1b2。

CIN3の部分を腫瘍径に含めてはいけない。浸潤癌の部分だけを測る。実際にはほとんどpT1b2は存在しない。MRIで腫瘍径を測って4cm強というのはよくあるが、手術してみると浸潤部は割と小さいことが多い。


おそらく日本で診断されるpT2aは半分が間違っている。頸癌と連続したCIN3(あるいはVAIN3)がどこまで広がってもpT2aにもpT3aにもならない。コルポ・肉眼でCIN3(VAIN3)は粘膜粗造としてわかるので、臨床的にはしばしばFIGOIIA, cT2a, cN0, cM0と診断されている。しかし、それは間違い。実はpT1b1だ。


T2bは周囲結合織に”あきらかな”浸潤がないといけない。病理標本で脈管内侵襲とか、『わずかに』とかいうのは基準に達しない。かなり間違っているだろう・・・というか手術症例では極めて難しい。


ま、こういうpitfallには全て落ち込むのが日本のStagingの現状だろう。