【監督】Режиссёр
ヴラジーミル・イリイチ・タラーソフ
Владимир Ильич Тарасов
【脚本】Автор сценария
ヴィクトル・ヨーシフォヴィチ・スラーフキン
Виктор Иосифович Славкин
【美術】Художник-постановщик
ニカライ(ニコライ)・コシュキン
Николай Кошкин
【スタジオ】Студия
ソユーズムリトフィルム
Союзмультфильм
【時間】Длительность
10分3秒(10 мин. 3 сек.)
【初公開】 Премьера
1985年
【資料】
Контракт (мультфильм) - Wikipedia Русский
アメリカの作家、
ロバート・シルヴァーバーグ(Robert Silverberg)
のSF「社内販売」(Company Store)に基づく。
無人の星に入植した男が、突然モンスターに襲われる。
その時ロボット「QBF-41」が出てきて助けられるも、
実はモンスターたちは、ロボットが用意したトリックだった。
このロボットは、危機を演出して商品を売りつけるための、
販売ロボットだったのだ。
怒った入植者はそのロボットを追い払った。
彼は「人生に必要なものをすべて“無料”で」
提供する会社と契約しており、
その会社から受取った端末装置を起動させ、とりあえず、
かみそりとシェービングクリームを注文する。
戻ってきたQBF-41は、
脱毛クリームの無料サンプルを提供する。
使い心地に満足した入植者は、1本のチューブ購入を希望する。
一方で、注文していた剃刀とシェービングクリームが届いたものの、
無料の筈なのに請求書が添付されていた。
理由を訊くと、「送料は有料」の上、
かみそりは「贅沢品」扱いとなっており、
「無料提供対象外」との事だった。
怒った入植者は、支払いを拒絶し、返品する。
また、契約によると、
「競合する他社からのサービスを受けてはならない」
との事であった。
入植者の置かれた困難な状況を見たQBF-41は、
無料でチューブを提供するが、
代表者から違反行為を警告され、電源を絶たれてしまう。
そして、入植者の契約していた企業と、
QBF-41を所有する企業との間に紛争が勃発してしまうが…。
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このアニメーション、数年前のこどもの日に行われた、
本郷のロシア欧州雑貨店Mitteさん主催の
ロシアのアニメーション上映会で上映していた様な…。
(違っていたらすいません)
中々見応えあると思いました。
デザインといい、展開の仕方といい、
センスが優れているというか。
QBF-41も、外見上もろに機械機械していますが、
行動が、仕草が、妙に人間臭い、人間臭すぎます。
困った入植者に情けを掛けるところとか、
ヘラヘラ笑うところとか。
BGMもジャズですかね?
雰囲気がマッチしているというか。
「共産趣味者」が多いのも頷けます。
ソビエト体制は多くの人を不幸に陥れたので、
政治体制自体は評価されないでしょうけど、
その社会で生活していた人々の大衆文化には、
興味をそそられるものが多々あります。
でも、Wikipediaの「共産趣味」を見てみると、
私の認識とはちょっとズレているみたいで。
主に「左翼ウォッチャー」の事をさすらしい。
私がこの言葉を知ったのはつい最近で、
Twitterからなので、
単にソ連文化好きの事なのかなと思っていました。
もちろん、そういう意味も含まれているのでしょう。
話を戻しますが、アニメーションの方も、
発想の凄さに驚かされるものが多々あるのですね。
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例えば、この作品では、
製品を発注する端末装置を起動させる時の形状が、
ルービックキューブを彷彿とさせるのですね。
時期的に、ブームと近いですし。
ルービックキューブは、
日本では1980年代に大ブームを巻き起こしましたが、
元は、ハンガリーの建築学者、発明家である、
ルビク・エルネー(Rubik Ernő)が、
1974年に考案し、1977年に製品化されたそう。
そして、日本での発売はツクダオリジナルで、1980年だそう。
(今は「メガハウス」という社名となっているそう。知らなかった)
それから、端末装置のタキシードの人物は、
最初、モニターの向こう側の人だと思っていましたが、
実はロボットだったという。
なんという凝った作りをしているのでしょう。
更に、競合企業の親玉が、
砲台に変身した端末装置(これも凄いですけど)に
砲弾を打ち込まれるのですけど、
その様が、ジョルジュ・メリエスの1902年の映画
「月世界旅行」(Le Voyage dans la Lune)の、
ロケットが月の片目に刺さる場面を彷彿とさせるというか。
こういう小ネタが色々組み込まれているのが魅力ですね。
そして最後に、
無人の星と思っていた所はじつは…というオチが。
個人的に、最後まで魅せてくれる作品だと思いました。
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この記事の前記事ですが…、
2015年11月19日
この記事でご紹介した、
「ここに猛虎が棲んでいる」(1989年)
Здесь могут водиться тигры
という作品は、
レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)の短編小説
「ここに虎あれ」(1951年)
Here There Be Tygers
をアニメーション化したものなのですけど、
こちらもアメリカの作家なんですね。
で、気になったのは、
元々はソ連とアメリカはライバルだった筈ですけど、
その割には、
アメリカの作家の作品を原作とするのは何故?という。
時期的に、どちらもソ連崩壊頃なので、
米国への認識の状況が、
色々と錯綜としていたのかも知れませんが。