井上浩二の「現在(いま)を考える。」 -760ページ目

シリーズ「巻き込み力」第4回:「他の組織を巻き込む」の解説

皆さん、前回のケース に対するコメント 、有難うございます。ただ、1回目よりコメントを下さった方が減っているのでの、ちょっとへこんでいるのですが・・・ただ、読んで下さっている方は多いので、気を取り直して私なりの解説を書きますね。
今回のケースでは、最初のケース よりも巻き込む範囲が広がっています。これは、星君の立場が上がるに連れて責任範囲が広がってくるので、当然といえば当然のことですね。星君は、最初のケースとは違い、今回は課のメンバーと事前に相談して提案内容を検討し、正式に提案する前に近藤課長に相談しに行っていますね。このような行動、進め方には星君の成長が見られると思います。しかしながら、今回は自分の部署だけでは決定も実行も出来ない内容を考えています。これを実行までもって行きたいわけですが、星君はIT部門にいる同期の鈴木君に相談してシステム部門の有田課長への交渉をお願いし、そこが上手く行かなかった段階で頓挫しかねない状況になっています。折角良いアイデアが、このような形で全く検討もされず、日の目も見ないのはもったいないですね。そのような状況で星君の行動を振返ってみると、どうすればもっと良い結果を生み出せたのだろうか、と言うのが今回のお題です。

今回の件では、
・営業の「提案力強化」に繋がる形でWebをどのように活用するか、それを実現するために何をすべきか、と言う提案内容を具体化する
・この提案を通すために、関係する部署を説得する
と言う2つの大きなプロセスを、いかに進めるかがポイントですね。
提案内容の検討に際しては、
チョコさん:どのような狙いでWebマーケを行い、どんな効果を期待するのか(なぜそれが提案営業に役立つのか)、そしてどのようなWebシステムが必要なのかをしっかりと企画としてまとめ、・・・
れおまさん:(IT部門よりも)もっと先に話をするところがあるのかも。
と言った指摘がある通り、星君の提案内容はまだまだ稚拙だったようです。
提案を実現するプロセスとしては、
鈴木さん:星さんは、同僚の鈴木さんに有田課長の説得を頼みましたが、これはどうなのでしょうね。
チョコさん:必要な予算を取る必要があればその手順をとってから、システム部と営業本部でプロジェクトチームを編成し・・・
と言った指摘がある通り、星君は内容に応じた予算取りを考え、どのような順番で誰から説得すべきかをもっと考えて行動すべきだったようです。
また、星君の今後の活動に関しては、
羅夢翁さん:新しいことを進めるには、抵抗勢力が、たくさんいますが、信念をもって、やるべきと思うことは、粘り強く提案することも大事ですね。
チョコさん:企画を成功させる熱意を持ってがんばる
と言った、星君に対する応援の言葉が寄せられています。これは、とても大事なことで、何事もちょっとやって上手く行かなかっただけで簡単にくじけずに、2の矢3の矢を考えて「諦めずに」取り組むべきですよね。(以前、そのような内容もブログに書いたのでご参考に。「諦めない! 」)

以上のように、非常に重要なポイントを皆さんご指摘頂いています。そこに関して、以下に私なりの見解を書きますね。


◆説得力のある提案を作るための人の巻き込み

・社内他部署の巻き込み
今回の件で内容を考える際に、星君は自部署とIT部門を巻き込むことを考えました。これは、これで良い事ですね。しかしながら、内容と実行方法を考えるには、これでは不十分ですね。Web=ITと言う事で、IT部門だけに相談するのは、あまりにも安易ですね。目的が「提案力強化」、手段が「Web」を考えているわけですから、ここに関わる部署、そこでの重要な人物を巻き込んで内容を検討した方が、提案内容はより具体的になるはずです。そう考えると、今回の件で巻き込むべき部署はどのような部署でしょうか?「提案力強化」、「消費者との関係強化」と言う事から考えると、当然のことながら自部署も含めた営業部門、マーケティング部門は考えないといけない。それ以外に、Webと言うと、最近は広報やIR部門、時には社長室などが関係している企業が多いですね。このような方々は、Webでどのようなコンテンツを何の目的で展開すべきかという事を、専門に色々と考えています。このような部門の主要人物をいかに巻き込み、どのように内容を検討するかは、まず考えるべきなのでしょう。(最終的に内容を形にするIT部門との議論は当然必要ですが、内容はIT部門が決めているわけではないですからね。)また、そのような方々をいかに巻き込むかは、当然のことながら自分の上司や同僚の力を借りることも含めて考える必要がありますね。

・やっていないのはやっていない理由がある
このような自社のメンバーの巻き込みをする際に、必ず注意しておくべきことがあります。社内で何か新しい取り組みを検討したいと相談する時には、必ずやっていない理由を考えてから相談する必要があります。勿論、時には社内でこれまでに全く考えられていなかったこともありますが、多くの事は既に検討されたり、試みられたりしています。しかし、何らかの理由でそれが実現していない。そう言う事を再度実行しようと相談したり、提案する際には、以前の取り組みが何故上手くいかなかったのかを押さえた上で、今回の取り組みが以前とどう違うのかを考えた上で話をする必要があります。これを怠ると、「以前同じ事をやって上手くいかなかったでしょ。」とか、「(以前取り組んだ)xxさんの意見は聞いたの?」と、剣もほろろに突き返されてしまう事が起こりがちです。星君は、残念ながら全くこのよう事をしていませんし、気にもかけていませんね。皆さんは、このような事がないように気をつけて下さいね。

・社外の人の巻き込み
今回の取り組みでは、「消費者」との関係作りが重要なポイントとなっています。その内容、やり方を考えるに当たっては、やはり「消費者」の方々の嗜好や行動を考える必要があります。そのためには、想定される「消費者」の巻き込み、あるいはそのような事に見識の高い識者のような方の巻き込みも考えた方が良いかもしれません。そもそも、今回の事の発端は、星君の奥さんから聞いた話ですね。予算や時間がないのであれば、奥さんの友人を巻き込んで意見を聞くという方法もあると思います。社外の方を巻き込むのは、社内の方を巻き込むよりも、多くの場合難しいですよね。しかし、自分の周りにいる方でも、十分有意義な意見をもらえる事があります。そういう方々も巻き込んで、内容を具体的に検討すると、最初のステップとしては十分機能することもあります。星君も、奥さんをもっと巻き込んでもよかったかも知れませんね。(どうやら、自分よりも消費者としてWebをどう使うかの見識は高いようですし。


◆提案を通すための人の巻き込み
次のポイントは、提案を通すための巻き込みの話ですね。言うまでもない事ですが、各企業には「意思決定のメカニズム」があります。内容に応じて異なる場合がありますが、誰が、何に関して、どのようなプロセスを通じて意思決定するか、と言う事です。これは、その取り組みを実行するために誰がどれだけ関わるのか、コストと期間はどれだけかかるかと言ったポイントが影響を及ぼします。
今回の件ではどうでしょうか?内容からすると、営業部門とマーケティング部門の巻き込みは必須のように思います。ここに関しては、星君は営業部門でも自部署の課長止まりですね。これでは、IT部門に相談しても、IT部門の意思決定者には相手にされない確率が高い。また、Webを通じてやると言う事は、対外的な反響が広く、やり方によってはコストが結構かかることも考えられます。そう考えると、近藤課長を通じた事業部長、及びマーケティング部門の巻き込みを考えた方が良いでしょう。
また、IT部門の巻き込みに関しても、第一ステップとして同期を巻き込むことは悪くないのですが、意思決定に近付けるためには不十分ですね。そもそも、近藤課長と有田課長の関係まで知っているのであれば、上司を通じて他部署と相談していく方が良かったように思います。
このように、意思決定の段階や内容に応じて、自分が相談や説得に言った方が良いか、仲間や上司にお願いをした方が良いかなどを、臨機応変に考えて、実行して行くべきですね。
色々な場面で、「お前に言われる筋合いはない」と言われた、などと言う事を聞くことがあるのですが、それは内容が悪いのではなくて、「筋」が悪いわけですね。そうすると、「筋」を変えれば、話が通ることも多々あります。話を持っていく「筋」を考えるのも、人の巻き込みには重要です。


以上が、今回のケースに対して私が考えたポイントです。如何でしょうか?補足や追加意見などありましたら、是非コメントを書いて下さい。今回は、その意見を寄せて頂くページ 、皆さんのコメントを共有するページ も用意しました。是非、一緒に議論を膨らませましょう。
ところで、これまで今回のような件を進めるにあたってどのような事を考え、どのように行動すべきか、と言う事を書いてきましたが、これはポイントにすぎません。何を言いたいかと言うと、何かを実行する際に時間は限られています。考えたこと全てを実行することは、多くの場合不可能ですよね。また、自分で力を及ぼすことが出来る範囲も限られている。そのような中で、やるべき事に優先順位をつけ、相談できる上司や仲間にはどんどん相談して、最善の結果を得られるように行動することが大事ですね。私も心がけます。
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