井上浩二の「現在(いま)を考える。」 -762ページ目

シリーズ「巻き込み力」第2回:「チームのメンバーを巻き込む」の解説

今回は、シリーズ「巻き込み力」の第2回と言うことで、前回のブログのケースに対する私なりの解説を書かせて頂きます。前回のケースに対してコメント を頂いた皆さん、本当に有難うございます。皆さんのご指摘通り、星君の進め方には、色々と問題がありますよね。

・そもそも、目的をメンバーと共有しているか?達成のための手法を、メンバーと議論したか?
・5S活動のメリット、デメリットをちゃんと考えているか?
・伝え方が適切か?
・メンバーが納得しているか?
・メンバーが行動できるように手法を考え、伝えているか?
・実行するためのメンバーの役割を考え、伝えているか?
・そもそも、どういう状態になることが理想なのかを考えているか、伝えているか?
・・・

皆さんのご意見をまとめてみると、星君の行動は上記のようなポイントを押さえられていないのではないかと言うご指摘だと思います。まさにその通りですね。皆さんのコメントも踏まえた上で、星君はどう行動すべきだったのか私なりの考えを書きますね。


目的と目的達成の手段を個人・組織で考える

今回の取り組みの目的は、「社員のモチベーションアップ」ですね。しかし、何故モチベーションが落ちている(ように思える)のは、業績が低迷しているから。この2つの事象は、「卵と鶏」のような話ですね。業績が上がる→モチベーションが上がるのか、モチベーションが上がる→業績が上がる(そうならない場合もありますが)のか。しかしながら、「モチベーションを上げて業績を上げたい」と言うことになると、やはり課題は業績を上げるためにどうするかということが課題のようですね。そのためには、
・攻め方を変えて効果を出す
・攻め方を変えずに効果を出す
は、考えないといけない。攻め方を変えると言うと・・・色々考えられると思いますが、そこは本題と逸れるので今回は深追いしませんね。攻め方を変えないとなると、
・組織/個人の能力アップによる生産性向上
・無駄を止めて生産性向上
となる。組織/個人の能力アップの一つとして、「姿勢」や「やる気」を変える施策が考えられます。その中で、5Sによる仕事場の環境改善と言う施策が出てくるわけですね。
当然のことながら、各施策にはメリット・デメリットがあるわけですから、そこをちゃんと考えないといけない。星君の場合は、恐らくそれなりに考えたのでしょうが、このような事をメンバーと議論せずに提案したところに問題がありますね。やはり、周囲のメンバーと考えられる施策、その効果と実施に向けての負荷など議論し、優先順位を考えた上で提案すべきでしたね。
しかし、そこまでやらずに提案してしまうこともあり、それが上手くいくこともあります。何故、そうならなかったのでしょう?


メンバーの感情も配慮してきちんと説明する

星君は、5S活動を行って上手くいっている取引先を見て、その活動を当社に取り入れるべきだと提案しました。しかし、周りのメンバーはそれを見ていません。取引先では、何故上手くいっているのか、どうやっているのか、その取り組みの効果がどれだけ出ているのか、具体的にイメージできていないメンバーもいるはずです。そこで、いきなりこの活動を取り入れようと言っても、なかなか納得できないでしょうし、中には「忙しくてそれどころじゃないでしょ。何言ってるの」などと思っているメンバーもいるかもしれません。皆さんご指摘の通り、メンバーの「納得」を得るために、メンバーが引っ掛かりそうなことは、具体的に説明しなければいけませんね。説明で「納得感」が得られないのであれば、実際に取引先を見に行ってもらったり、取引先の方から話を伺ったりするのも良かったかもしれません。(取引先の協力が得られればの話ですが。)何れにせよ、この活動のメリットが何か、どうやったら実現できるのか、何を協力してもらいたいのか、役割分担をどうするかなどを、どちらかと言うとこのような取り組みに後ろ向きになる人の感情も配慮して説明すべきでしたね。また、自分で説明するより、他の人が説明した方が全員の賛同を得やすいのであれば、そこも考えるべきでしたね。
しかし、このような事をやらなくても上手くいく場合もあります。今回の取り組みは、定着するどころか、2週間も経つと元の状態に戻ってしまった。課長も賛成したのに。星君は、どう行動すべきだったのでしょうか?


賛同者を上手く巻き込んで活動を広げる、定着化する

今回の活動に対して、前向き、つまり賛同してくれていた人は誰でしょうか?課長は、会議の場でこそ賛同していましたが、行動が伴っていませんね。しっかりと行動してくれたのは、営業事務の女性陣です。主任の旗振りと言うことで動いた人もいるでしょうが、全員が机拭きまでやってくれた。最も若手の田中さんは、「綺麗にしていた方が、気持ち良いのに。私も、みんなに机の上を片付けてくれるように頼むように心がげますね。」とまで言ってくれています。その方々に対して、残念ながら星君は動いていません。ただ愚痴を言っただけです。実にもったいないですね。こうやって賛同してくれるメンバーがいるのであれば、その方々を巻き込んでどんな活動にしていくべきか考え、行動すべきです。私だったら、最初のターゲットは吉田君ですね。田中さんや営業事務の他のメンバーを巻き込んで、吉田君の机を綺麗にする。例えば、田中さんに手伝ってもらって、吉田君がいる時に田中さんに机の上を整理するのを手伝ってもらう。その結果、あわよくば吉田君のミスが減る、事務処理効率があがるなどの効果が出ると嬉しいですけどね。いずれにせよ、このような賛同者を巻き込んで、なんとか取り組みが広がる、定着化するための行動をとるべきです。そうしないと、賛同しないメンバーの心ない言動が心ある人たちのエネルギーまで吸い取ってしまい、結局は誰もやらない、取り組み自体が自然消滅するということになりかねません。そうならないうちに、行動すべきです。会議の最後に逆切れして、黙っている場合じゃありませんね。

以上が私の考えなのですが、皆さん如何思われましたか?企業内の取り組みは、だれかが良かれと思っても、また多くの人が本来そうすべきと思っても、なかなか上手くいかないもの。論理的に考えることも重要ですが、上手く周りを巻き込んで、良い取り組みに持っていって下さい。

そうそう、最後に一つ蛇足かもしれませんが、付け加えておくべきことがあります。星君が提案した時に、課長が「星、良い事言うなぁ。」と言っていますが、これはどういう意味と皆さんはとりましたか?勿論、提案自体が良いと言う事だったかも知れません。しかし、課長の行動を見ていると・・・どうも、5Sに積極的に取り組んでいるとは思えませんね。そうすると、星君が会議で課を良くするための提案を考えて来た、それを発言したという行動を褒めているのかも知れません。そうだとすると、課長にリーダーを任命されたとしても、どこまでサポートしてくれるのか、課長は何をやってくれるのか、などしっかり確認して、梯子を外されないようにしないといけませんね。そもそも、上司が褒めたからと言ってホイホイとリーダーを引き受けてはいけないかもしれない。そんなことも考える必要がありますね。

今回コメントを下さった皆さん、またコメントする時間はなかったが自分なりに考えて下さった皆さん、私の考えでは十分ではないことも多々あると思いますので、またご意見を下さい。今回は、特にコメントを頂くためのページは作成していませんので、このブログのコメントにご意見お願いします。