井上浩二の「現在(いま)を考える。」 -759ページ目

シリーズ「巻き込み力」第3回:他の組織を巻き込む

皆さん、今回は第1回に続き2つめのケースを考えてみましょう。このケースの主人公の星新五は、新星堂株式会社関東営業所営業2課の主任。(詳しくは、第1回ケース の前半をご覧下さい。)主任になり3年が経ち、主任としてチームを引っ張って営業を行っていくことにも結構自信が付いてきました。家庭では、長男の真一(しんいち)ももうすぐ3歳。公私ともに充実した日々を送っており、新しい仕事にチャレンジする気合も十分です。そのような状況で、他部署を巻き込んだ新たな取り組みに挑みますが・・・


何故、他の部門は分かってくれない?

「少子高齢化でマーケットが縮小する国内市場で勝ち抜くためには、提案営業の強化以外にない!」これが、営業本部長から出された今期の営業強化のテーマです。星君も、課員と色々議論しながら何とか他社に勝る提案営業をしていこうと日々考えていました。

そんなある日、家で食事をしている時に妻の冴子(さえこ)からこんな話を聞きました。「新五さん、インターネットってやっぱり便利よね。とっても役に立つ情報が出ているの。真ちゃんに何か良い遊びはないかなぁと思って調べてみたら、子供の遊びがマンネリ化しないように色々アドバイスをネット上でし合っているのよ。そこで、結構パズルが楽しいって出ていたのよね。遊びながら知育にもなるのですって。早速、真ちゃんに買ってあげようと思うのだけど、良いよね?」新五が、「いいんじゃない。」と生返事を返すと、「じゃ、買うからね。でも、そのサイト では新五さんの会社のおもちゃやパズルの話は全く出てなかったわよ。」と冴子は新五をチクリ。しかし、この一言で新五は俄然興味を持ち、「ごめん、ごめん。ちょっと疲れていて。遊びと知育、良いよね。すぐ買ってあげてよ。ところで、そのサイトってどこ?」と冴子からそのサイトのアドレスを教えてもらった。

星は、早速そのページを見ると同時に、競合他社や他の企業がインターネットをどのように活用しているか調べてみた。新聞や雑誌など、これまで色々情報は耳にしていたが、実際に多くの企業がブログを利用したマーケティングを行ったり、自社のサイトでコミュニティを作ったりして、ユーザーを巻き込んだ取り組みを行っていた。星は、人形としては異例の売上を上げている他社製品のサイトも見てみた。すると、サイトでのコミュニティ作りは勿論、各種コンテストや運動会、幼稚園の入園式と言った実際のイベントも開き、ネットと連動させてユーザーとの関係構築を行っていることも分かった。(参考:プリモプエルユメル )このような事例から、多くの企業がネットも利用してユーザーのニーズを収集し、それを基に商品開発や提案活動を行っているのではないかと星は考えた。一方、新星堂はこれまであまり積極的にネットを利用していない。星は、インターネットをもっと活用することで、何か提案活動を強化する施策があるのではないかと思い、課のメンバーと議論してみることにした。

自分が調べたことを説明し、課のメンバーに意見を聞いてみると、おおむね課のメンバーも星の意見に賛成であった。提案営業に生かす顧客の声を拾うために、まずは自社のサイトで各種企画とコミュニティ作りを行うべきではないかと言う見解が多かったので、星はその方向で取り組みを開始できないか近藤課長に相談することにした。すると、近藤課長からは、「面白い取組みだと思うけど、うちで出来るかなぁ?最近は、経費削減でシステムの投資も絞っているところだから、厳しいんじゃないか。システム部が何て言うかなぁ。」と、あまり乗り気ではない返事が返って来た。これでは、事が前に進まないと考えた星は、同期でIT部門のSEをやっている鈴木に相談をしてみた。鈴木は、以前からマーケティングや販売でネットを活用することに興味を持っており、星からの相談に乗り気だった。鈴木の上司の有田課長は、近藤課長の1年後輩で大学も同窓、営業2課からの相談だと言えば前向きに検討してくれるのではないかと星は考え、鈴木から有田課長に相談してくれるように頼んだ。

有田課長は、メーカーとして最も重要な製造管理システムを担当しており、コスト削減に向けた正確な製造原価把握の仕組みを構築するために多忙を極めていた。そんな課長の仕事の合間を見つけて、鈴木は有田課長に相談をした。すると、「鈴木の言うことも分かるけど、そういう新しいことに取り組む予算は今期はないぞ。そもそも、ネットで何をやるの?そう言う事は、マーケティング本部が考えることじゃないのか?」と、つれない返事が有田課長から返って来た。更に有田課長は、「そんな事より、鈴木に頼んでおいたAラインの原価計算の問題点は整理できたのか?よその課の問題に首を突っ込んでいる暇はないぞ。」と続け、鈴木は自分が担当している仕事の話でとばっちりを食らうことになってしまった。鈴木はこの話を星に説明し、「システム部での対応は当分無理そうだよ。」と付け加えた。鈴木に期待していただけに星は落胆し、「今期のテーマは提案営業強化だということを、何故システム部門は分からないのだろう?こう言う新たな領域での取り組みに、何故システム部門は後ろ向きなのだろう?」と鈴木を責めるような事を言ってしまった。

今回のケースは、ここまでです。マーケティングや販売にインターネットを活用すると言うのは、最近では非常に良くある話ですね。しかも、ケースの記述のように上手く取り組んでいる企業も多数あります。そのような状況でこのような形になってしまったのですが、星君はどのように行動すれば良かったのでしょうか?皆さんは、どう思われますか?また、今回も皆さんの意見をアップして下さい。一緒に議論しましょう。そのためのページ を用意しておきましたので、時間のある時に皆さんの意見を是非書き込んで下さい。また、他の方の意見 も参考にして下さいね。多くの方から意見を頂けることを、楽しみにしています。(意見投稿ページ