人事部29年の社労士 吉崎です。
ある中小企業の社長に「社員の好き嫌いで人事を決めることはありますか?」と質問したことがあります。聞きにくい質問ですから、話の流れで聞いたのです。その社長は「そんなことはない。あるはずがない」と答えましたが、横で聞いていた人事の方は黙ってうつむいていました・・・。
この会話をした後、しばらくたって人事の方にお会いしたとき同じ質問をしました。人事の方の見解はこうです。「社長は好き嫌いではなく、信頼できるか、信頼できないかで決めている。」
更に、「社長が信頼できる人はどんな人ですか?」と聞くと、しばらく考えて「自分(社長)を裏切らない、自分のいうことを忠実に実行する、報連相が多い人ですかね」とのこと。
信頼できる社員に重要な仕事を任せ、人事でも登用することは当然のことですが、問題は信頼できる人材かどうかの判断です。社長からすれば、自分の指示したことを忠実に実行すれば「よくやった」となり、それが積み重なれば「信頼できる人」になります。
ある程度の会社規模になれば、社員の仕事を全て社長が把握できるはずもなく、職制を通じて報告が上がり判断をします。それでも社長肝いりの仕事、会社方針に基づく仕事で成果を上げると「できる」となりやすい。
「できる」と評価された社員は社長や幹部とのコミュニケーションがとりやすくなって、報連相の機会も増えます。仮に仕事でミスしても早めに報連相していれば、傷は浅くてすむ。
いい結果をもたらす社員は信頼され、可愛がられることになります。ある意味当然の結果ですね。それを周囲の人は「好き嫌いの人事」と見るかもしれません。
それは信頼されていない人の「ひがみ」なのでしょうか?
本当に気を付けなければいけないと思うのですが、社長が信頼できる社員は、相手によって態度を変えることが多い。自分が評価されていることを鼻にかけ、周囲の声に耳を傾けないことや、上司や組織の悪口を言うケースも見られます。
管理職であったり、部下を持つリーダーであったとしても、自分の担当業務だけに熱心で、社長に指示されたことは他の仕事を放っておいても実行する人がいます。どうすれば自分が評価されるのか分かっているのです。
また、「できる部下」が現れると早めにつぶして、自分のポジションを守ることもよくあることです。テレビドラマや小説の世界のようですが現実にあります。できる部下の成果を自分の成果のように報告して、手柄を横取りすることを何の抵抗感もなくできてしまう人がいます。個人の成績がいい人=信頼できる人という考え方でマネジメントしていると組織力は高まりません。
たとえ成績の芳しくない社員でも、マイナスの意識を持たせることは得策ではない。できない社員は成果を出すには時間がかかるでしょう。もしかしたら、ずっと出ない可能性もある。
しかし、「できない社員」とされた人にも公平にチャンス与えることによって、「好き嫌いで人事を決めているのではない」と思ってもらえます。結果的に大多数の普通の社員が意欲をなくすこともなく、組織全体の力を高めることになります。
「あいつはよくできるから、仕事が集中して忙しい」と言われる社員がいるときは注意した方がいい。それを認める社風は「個人商店の集まり」組織になりやすい。個人商店の集まりでは、ノウハウの共有がなく、その人が抜けると仕事が途切れてしまう。中小企業が気を付けないといけないことだと思います。
冒頭の社長の「信頼している人」は大丈夫でしょうか。
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