従業員の健康と組織の生産性との関係については、
様々な議論がされてきました。
従来は従業員の健康を重視して、職場環境の改善を行ったり、
仕事量を減らすなど労働負荷を軽減すれば、コストがかかり
生産性は低下すると考えられていました。
特に中小企業の場合は、「大切なことは分かっているけど
そこまで手が回らない」や「健康は自己管理すべき」と言った声も
よく聞かれます。
また、メンタルヘルスに関しては、「最近の若い人は打たれ弱い」とか
「どう対応すれば分からない」ので放置しているケースも多いようです。
そのために、従業員の健康問題は経営上の優先課題には
なりにくい状況でした。
しかし、従業員が健康、特にメンタルヘルスを悪化させて
いれば、集中力や注意力が低下し、仕事の生産性低下や
事故を引き起こすことになります。
また、その従業員が休職することになれば、職場は戦力ダウン
になります。最小限の人数で職場を運営している中小企業
などは、休職者の穴を埋めることができず、他の従業員に
しわ寄せがいき不満がたまる、意欲が低下することがあります。
メンタルヘルス悪化による労働力の損失は、決して小さくは
ありません。
●ストレスチェック制度との関連
平成27年12月に労働安全衛生法改正により、従業員50人以上の
事業場では、ストレスチェック実施が義務づけられました。
既に実施済み、または計画中の企業も多いのですが
経営者の方や人事部門の方と話をしても、「法律で決まったから
とりあえず実施する」という感想をよく聞きます。
ストレスチェック制度が導入された趣旨がうまく伝わって
いないようです。
厚労省のマニュアルに従って形式的に実施しても、
ストレスチェック制度の目的を達成できないばかりか、
無駄な費用を使うことになってしまいます。
●メンタルヘルスの現状
・仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスがある
という労働者は58%(厚労省「労働者健康状況調査2007年」)
・心の健康問題を有する労働者がいる事業場56.7%
・過去1年間に心の健康問題で1か月以上休職、
または退職した労働者がいた事業場25.8%
(独立行政法人労働政策研究・研修機構調査2010年)
・精神障害による労災認定件数
請求件数1,456件(前年比47件増)、認定件数497件
(前年比61件増)いずれも過去最高(厚労省2014年度)
※この状況下で、メンタルヘルス不調を未然に防止のためには
①職場環境の改善等により心理的負担を軽減させること
(職場環境改善)
②労働者のストレスマネジメントの向上を促すこと
(セルフケア)が重要であり、
そのためにストレスチェック制度が設けられました。
ストレスチェックの主目的は「一次予防」です。
一次予防とは、身体的な病気の予防と同じように「病気」に
ならないための取り組みです。また、単に病気にならない
ことだけでなく、従業員の生活の質の向上、働く意欲の
維持向上、そして会社の生産性や活力の向上に貢献するという
重要な取り組みです。
法律で決まったから実施するということだけではなく、
目的を達成するために手段を選ぶことが必要になります。
(※「二次予防」は早期発見と対処、「三次予防」は
治療と職場復帰と再発防止、とされています)
●健康職場モデル
従業員の健康や満足感と組織の生産性を両立させることは
可能であり、むしろ両者には相互作用があり、お互いに強化
できるという考えが示されています。しかし、従業員個人だけ
の問題ではなく、組織特性に原因がある場合は、その原因と
なる組織特性にアプローチしないと抜本的な解決は難しい
とも言われています。
これは、米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が示した
考え方で、「健康職場(Healthy Work Organization)」モデル
と呼ばれるものです。
同モデルが示す組織特性は次の3つに分類されます。
・マネジメントの側面
・組織文化/風土の側面
・組織の価値観の側面
これらの問題はメンタル不全の原因として統計に表れている
上位の「職場の人間関係」「仕事の質・量」と関係しており、
「セルフケア」だけに力を入れるのではなく、
「職場環境の改善」と同時に改善していくことが必要です。
ストレスチェックの実施は、健康職場をつくるために
実施すると考えて、前向きに捉えれば、職場の雰囲気も変わり、
生産性向上のきっかけにすることができるでしょう。
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