会社も、人も、想いも、ともに育つ。|共育

会社も、人も、想いも、ともに育つ。|共育

中小企業の経営者と、人・組織・働き方について一緒に考える社会保険労務士のブログ

こんにちは。

 

今日は、社員とのコミュニケーションについて、少し考えてみたいと思います。

 

「うちは社員とよく話している方だと思う」

 

そんなふうに感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。

 

朝は「おはよう」と声をかける。

現場では「昨日の件、どうだった?」と立ち話をする。

昼休みには、仕事以外の話で笑い合う。

 

社員との距離が近いことを、大切にしている会社もあります。

 

でも、ときどき、こんなことが起こります。

 

長く働いてくれていた社員から、退職の申し出がある。

 

理由を聞いてみると、以前から仕事について悩んでいたことや、将来のことを考えていたことが、少しずつ語られる。

 

社長にとっては、初めて聞く話です。

 

「毎日のように話していたのに、そんなふうに思っていたとは知らなかった」

 

もし、こんな出来事があったとしたら、皆さんはどう感じるでしょうか。

毎日の何気ない会話は、会社の財産

まず、大切にしたいことがあります。

 

社員と日常的に話せていることは、それ自体が会社の大切な財産だと思います。

 

毎朝の挨拶。

何気ない声かけ。

昼休みの雑談。

 

一つひとつは小さなことですが、そんな積み重ねの中で、少しずつ関係が育っていくことがあります。

 

「この人には声をかけやすい」

「困ったら相談してみよう」

 

そんな気持ちが生まれることもあるでしょう。

 

社長が社員の顔を見て、名前を呼んで、声をかけてきたこと。

 

それは、これまで大切に積み重ねてきたものの一つです。

 

だから、雑談や日常会話が多いことを否定したいわけではありません。

 

むしろ、とても大切なことだと思っています。

 

でも、普段はどんな話をしていますか?

そのうえで、少しだけ考えてみたいことがあります。

 

皆さんは、普段、社員さんとどんな話をしていますか?

 

「今日の予定は?」

「昨日のお客さんの件、どうだった?」

「最近、忙しいね」

 

こうした会話は、仕事を進めるために欠かせません。

 

一方で、こんな話はどうでしょう。

 

「今の仕事、どんなところが難しい?」

「最近、仕事をしていて嬉しかったことはある?」

「これから、どんな仕事をしてみたい?」

 

仕事が順調に進んでいるかを確認することと、その仕事を本人がどう感じているかを知ること。

 

似ているようで、少し違います。

 

例えば、

 

「最近どう?」

 

と声をかけたとき、

 

「大丈夫です。変わりないです」

 

と返ってきたら、ひとまず安心しますよね。

 

もちろん、本当に何も困っていないのかもしれません。

 

ただ、まだ自分でも整理できていないことがあるのかもしれません。

 

だからといって、「大丈夫」という返事を疑う必要はありません。

 

たくさん話していることと、話したいことを話せていることは、必ずしも同じではない。

 

そんな視点も、持っておきたいと思います。

 

社長に何でも話せなくてもいい

では、社員が悩みを話してくれないのは、信頼関係が足りないからでしょうか。

 

私は、必ずしもそうではないと思います。

 

社長に直接話したい人もいれば、直属の上司の方が話しやすい人もいます。

同僚との会話の中で、気持ちが整理される人もいるでしょう。

また、自分の中でまだ言葉になっていないこともあるかもしれません。

 

誰に、いつ、どこまで話したいか。

 

それは、人によって違います。

 

社員全員が、社長に何でも話せる必要はないのかもしれません。

 

大切なのは、無理に本音を聞き出すことではなく、

 

「話したい」と思ったときに、話せる相手や機会があること。

 

その相手は、社長でなくても構いません。

 

一方で、話しにくさの背景に、会社として対応が必要なことが隠れている場合もあります。

 

だからこそ、話していないことをすぐに問題と決めつけず、今の関係や状況を少し丁寧に見ていきたいと思うのです。

 

 会話の回数よりも、少し目を向けたいこと

社員とのコミュニケーションを考えるとき、私は次の三つのことに目を向けてみたいと思います。

 

① 何を話しているか

仕事の確認だけでなく、仕事を通じて感じていることも話せているでしょうか。

 

② 誰と話せているか

社長だけでなく、上司や同僚など、社員が安心して話せる相手はいるでしょうか。

 

③ どのように話せているか

忙しい合間の立ち話なのか。

少し落ち着いて話せる時間もあるのか。

 

これは、何かをチェックして、良し悪しを判断するためのものではありません。

 

普段の会話を、少し違う角度から眺めてみるための視点です。

 

「もっと社員と話さなければ」

「面談の回数を増やさなければ」

 

と、すぐに考える必要はありません。

 

まずは、今ある会話が、会社の中でどんな関係を支えているのか。

 

そして、これから少し大切にしたい会話があるとすれば、それはどんな会話なのか。

 

そんなことを考えてみるだけでも、何か見えてくるかもしれません。

 

最後に

毎朝の「おはよう」も、

現場での立ち話も、

昼休みの何気ない雑談も。

 

その一つひとつが、今の会社の関係を支えているのだと思います。

 

それを大切にしながら、ときどき普段の会話を振り返ってみる。

 

どんなことを話しているだろう。

誰となら話せているだろう。

まだ話す機会がなかったことはないだろうか。

 

そして、これは社員だけでなく、経営者自身にも関係することかもしれません。

 

皆さんの会社では、本当に話したいことを話せる時間がありますか?

「もっと自分で考えて動いてほしいと、何度も伝えているんです」

 

経営者や管理職の方なら、一度はこんな気持ちになったことがあるのではないでしょうか。

 

朝礼でも話した。

会議でも伝えた。

個別に声をかけたこともある。

 

それなのに、社員は何かあるたびに確認に来る。

 

「これ、このまま進めてもいいでしょうか?」

「念のため、確認してからにしますね」

 

社長としては、少しもどかしく感じるかもしれません。

 

「何度も伝えているのに、どうして分かってもらえないんだろう……」

 

でも、ここで少し考えてみたいことがあります。

 

「伝えたこと」と「伝わったこと」は、本当に同じなのでしょうか。

 

同じ言葉でも、受け取り方は違う

例えば、

「もっと自分で考えて動いてほしい」

という言葉。

 

社長としては、

 

「社員を信頼している」

「もっと仕事を任せたい」

「自分で判断できるようになってほしい」

 

そんな思いで伝えているのかもしれません。

 

ところが、社員の側では、

 

「どこまで自分で決めていいんだろう?」

「もし判断を間違えたらどうしよう」

「確認しないで進めても大丈夫なのかな?」

 

と受け取っていることも考えられます。

 

同じ言葉を聞いていても、その意味を同じように理解しているとは限りません。

 

もちろん、実際にどう感じているかは、本人に聞いてみなければ分かりません。

 

ただ、言葉を伝えたことと、その意味が伝わったことは別なのかもしれません。

 

社長が知っていることを、社員も知っているとは限らない

経営者が何かを伝えるとき、その言葉には、いろいろな背景があると思います。

 

これまでの会社の歩み。

今の組織の状態。

これから社員に期待していること。

 

社長の頭の中では、そうしたことが自然につながっているのかもしれません。

 

でも、社員がその背景まで知っているとは限りません。

 

例えば、社長が、

「これからは、もっと主体的に動いてほしい」

と伝えたとします。

 

社長の中では、会社のこれからを考えたうえでの言葉だったとしても、社員には、その一言だけが届いていることもあります。

 

だからといって、すぐに「社長の説明が足りない」と決めつける必要はないと思います。

 

社員にも、これまでの経験や、それぞれの事情があります。

 

以前、自分で判断して注意された経験があるのかもしれません。

確認を重ねることが、丁寧な仕事だと考えているのかもしれません。

 

伝える側にも、受け取る側にも、それぞれの背景がある。

そこに目を向けると、少し違った見方ができるように思います。

 

「何度も言ったのに」と感じたときこそ

 

社員に何度も伝えてきた。

 

それでも、思うように行動が変わらない。

 

そんなとき、

 

「ちゃんと話を聞いていないのかな?」

「自分の伝え方が悪かったのかな?」

 

と考えることもあるでしょう。

 

もちろん、伝え方を見直した方がよい場合もあります。

 

でも、すぐに誰かの問題と決める前に、

 

「あの言葉は、社員にはどう聞こえていたんだろう?」

 

と考えてみることも大切ではないでしょうか。

 

共育では、経営者と社員の認識が違っているとき、どちらかをすぐに間違いとは考えません。

 

まずは、その違いを知ろうとします。

 

なぜ、そう受け取られたのか。

どんな背景があるのか。

 

そこから、今まで気づかなかった会社の姿が見えてくることもあります。

 

あの言葉は、どう届いていただろう

 

社長が「自分で考えて動いてほしい」と伝えたのは、社員を信頼しているからかもしれません。

社員が何度も確認するのは、慎重に仕事を進めたいからかもしれません。

 

その行動には、それぞれの理由があるのでしょう。

 

大切なのは、伝えた回数だけではなく、相手がどう受け取ったかにも目を向けること。

 

最近、社員に伝えた言葉を、一つ思い浮かべてみてください。

 

仕事のお願いでも、会社の方針でも、何気ない一言でも構いません。

 

その言葉は、自分が思っていたとおりの意味で届いていたでしょうか。

 

最近、「伝えたつもり」になっていることはないでしょうか。

「うちは、社員との距離は近い方だと思います」

 

例えば、ある社長がそんなふうに話してくれたとします。

 

毎日、社員と顔を合わせる。

雑談もする。

「困ったことがあれば、いつでも言ってね」と声をかけることもある。

 

社長としては、社員が話しやすい会社でありたい。

 

そう思って、日々接してきました。

 

ところが、社員に聞いてみると、こんな声が出てくるかもしれません。

 

「相談しやすいこともあります。でも、社長にはなかなか言いにくいこともあります」

 

社長は、話しやすい会社だと思っている。

社員は、言いにくいこともあると感じている。

 

では、どちらが本当なのでしょうか。

 

もしかすると、

どちらも本当なのかもしれません。

 

同じ会社でも、見えている景色は違う

社長は、会社全体のことを考えています。

 

売上や資金繰り。

お客様との関係。

社員の採用や育成。

 

そして、これから会社をどうしていくか。

 

一方で、社員が日々向き合っているのは、

目の前の仕事やお客様への対応。

 

上司や同僚との関係。

日々の忙しさや、仕事の進めやすさ。

 

もちろん、会社全体を考えている社員もいますし、社長も現場のことを気にかけていると思います。

 

ただ、立場や役割が違えば、普段見えているものも違います。

 

同じ建物でも、窓の位置が違えば、見える景色は違います。

 

ある窓からは道路が見える。

別の窓からは公園が見える。

どちらも、本当の景色です。

 

会社も、それと少し似ているのかもしれません。

 

どちらかが間違っているわけではない

経営者と社員の見方が違うと、

「社員は、会社の事情を分かっていないのでは?」

 

あるいは、

 

「社長は、現場のことを分かっていないのでは?」

と思うことがあるかもしれません。

 

でも、どちらかが間違っていると、すぐに決める必要はないと思うのです。

 

例えば、有給休暇について。

 

社長は、

「有休は自由に取ってもらっていいと思っています」と考えている。

 

ところが社員は、

「休んでいいとは言われています。でも、忙しい時期は取りづらいんです」と感じている。

 

社長としては、休んでもらって構わない。

社員としては、周囲の忙しさや、自分が休んだ後の仕事が気になる。

 

どちらにも、それぞれの見え方があります。

 

もちろん、法律上必要な対応は、きちんと確認しなければなりません。

 

ただ、ここで考えてみたいのは、

「なぜ、同じ会社なのに、違って見えているのだろう」

ということです。

 

違いに気づくと、会社の新しい一面が見えてくる

もう一つ、こんな場面もあります。

 

社長は、会社全体の仕事の量を見ながら、

「最近は、少し落ち着いてきたかな」

と感じている。

 

一方で、ある部署の社員は、

「毎日忙しくて、なかなか余裕がありません」

と感じている。

 

会社全体では仕事量が落ち着いていても、一部の部署では忙しさが続いていることがあります。

 

社長の感覚も、社員の感覚も、それぞれの立場から見た会社の姿です。

 

こうした違いに気づいたとき、

 

「どちらが正しいのか」

と考えるよりも、

 

「どうして、そう見えているのだろう」

と考えてみる。

 

必要であれば、実際の仕事量や勤怠の記録なども確認してみる。

 

そうすることで、それまで見えていなかった会社の一面に気づくことがあります。

 

違いは、会社を知る手がかりになる

会社には、いろいろな立場の人がいます。

 

入社したばかりの人。

長く働いている人。

現場をまとめている人。

そして、経営を担っている人。

 

それぞれが、違う場所から会社を見ています。

 

だから、全員がまったく同じ見方をする必要はないのかもしれません。

 

大切なのは、違いをすぐに間違いと決めないこと。

 

「そういうふうに見えているんだな」

「なぜ、そう感じているんだろう」

 

と、少し考えてみることだと思います。

 

私が大切にしている「共育」でも、経営者の考え、社員の声、数字や資料から見える事実を、それぞれ大切にしています。

 

一つの見方だけで決めるのではなく、違いが生まれている背景を一緒に考えていく。

 

その積み重ねが、会社をより深く知ることにつながるのだと思います。

 

社長が見ている会社。

社員が見ている会社。

 

同じ会社でも、見えている景色は違うことがあります。

 

だからこそ、一つの景色だけでは分からないことがある。

 

皆さんの会社では、経営と現場で少し違って見えているものはありませんか。

 

「それは○○さんに聞けば分かるよ」

「現場は、○○さんがいれば大丈夫」

「新人が入ったら、とりあえず○○さんにお願いしよう」

 

皆さんの会社でも、こんな会話はありませんか?

 

困ったときに、まず声をかけたくなる人。

お客様からも、周りの社員からも頼りにされている人。

 

社長自身も、

「あの人がいてくれるから安心だ」

と思える人。

 

そんな社員さんがいることは、会社にとって本当に大きな財産だと思います。

 

今日は、そんな「頼れる人」のことを、少し考えてみたいと思います。

 

頼れる人は、会社が育ててきた財産

頼れる人には、長年積み重ねてきた経験があります。

 

困ったときの判断力。

お客様との信頼関係。

新人に声をかける気配り。

そして、マニュアルには書かれていない、その会社ならではの仕事の進め方。

 

こうしたものは、すぐに身につくものではありません。

 

本人の努力はもちろん、会社が仕事を任せ、経験する機会をつくり、信頼を重ねてきたからこそ、育ってきたものもあると思います。

 

「あの人がいたから、ここまでやってこられた」

 

そう思える社員さんがいる。

 

それは、とても心強いことですよね。

 

気づいたら、その人しかできない仕事が増えている

ただ、頼れる人がいる会社では、こんなことも起こりがちです。

 

最初は、ちょっとした相談だった。

 

次に、少し難しい仕事をお願いした。

 

うまく対応してくれるので、また次の仕事を任せる。

 

そうしているうちに、

お客様対応も、トラブル対応も、新人教育も、いつの間にかその人に集まっている。

 

頼む側は、

「あの人なら安心」

と思っています。

 

頼まれる側も、

「自分がやった方が早いし、会社の役に立てる」

と思っているかもしれません。

 

そうした積み重ねの中で、気づいたら「その人しかできない仕事」が増えていた。

 

そんなこともあるのではないでしょうか。

 

大切なのは、誰かが悪いと決めつけることではなく、どうして今の状態になったのかを見てみることだと思います。

 

もし、その人がしばらく休んだら?

ここで、一つだけ考えてみていただきたいことがあります。

 

その頼れる社員さんが、少し長めの休暇を取ることになったら、どうでしょうか。

 

そのとき、

 

何か止まってしまう仕事はありませんか?

その人しか知らないことはありませんか?

その人にしか判断できないことはありませんか?

 

たとえば、

 

「お客様とのこれまでの経緯は、その人しか知らなかった」

「トラブルが起きたとき、誰に聞けばいいか分からない」

「新人が安心して質問できるのは、その人だけだった」

 

そんなことが見えてくるかもしれません。

 

これは、会社の弱点を探すための問いではありません。

 

むしろ、その人がこれまでどれだけ多くのことを支えてくれていたのかを、あらためて知る機会でもあります。

 

「代わりをつくる」より、「一緒に持てるもの」を増やす

こうした話になると、

 

「後継者を育てないと」

「マニュアルをつくらないと」

 

と考えたくなるかもしれません。

 

もちろん、それも大切なことです。

 

でも、私はもう少し手前から考えてみてもよいと思います。

 

その人が一人で持っているものの中で、誰かと一緒に持てるものはないだろうか。

 

たとえば、

 

・大事な打ち合わせに、後輩を一人同席させてみる

・お客様への対応を、一度だけ一緒に行ってみる

・新人教育を、二人で担当してみる

・仕事の判断をしたときに「なぜそうしたのか」を少し話してもらう

 

そんな小さなことからでもよいと思います。

 

特に、「なぜそう判断したのか」という話には、その人の経験が詰まっています。

 

仕事の手順は見て覚えられても、判断の理由までは、なかなか伝わらないものです。

 

一緒に考え、一緒に経験する。

 

その積み重ねが、次の人を育てることにつながっていくのではないでしょうか。

 

次の人を育てることは、今いる人を大切にすることでもある

もう一つ、考えてみたいことがあります。

 

頼られている本人は、どう感じているでしょうか。

 

頼られることに、やりがいを感じているかもしれません。

 

一方で、

 

「自分が休んだら、みんなが困るだろうな」

「結局、自分がやらないと進まない」

 

そんな思いを抱えているかもしれません。

 

誰かと仕事を分け合えるようになれば、少しずつ安心して休める環境につながるかもしれません。

 

また、自分がすべてを担当するだけでなく、次の人を育てることに、新しいやりがいを感じることもあるでしょう。

 

ただ、長年大切にしてきた仕事だからこそ、簡単には手放せないこともあると思います。

 

だからこそ、一方的に仕事を渡すのではなく、本人の気持ちも聞きながら考えていきたいところです。

 

次の人を育てることは、これまで会社を支えてくれた人を大切にすることでもある。

 

私は、そう思います。

 

頼れる人がいる「今」だからこそ

私たちが大切にしている「共育」では、今ある状態をすぐに問題とは考えません。

 

まず、その人がこれまで会社の何を支えてきたのかを見る。

 

そのうえで、これからも同じ形がよいのか、少しずつ誰かと分け合っていく時期なのかを考えます。

 

すべてを一度に変える必要はありません。

 

ただ、頼れる人がいる「今」だからこそ、できることもあると思います。

 

その人が積み重ねてきた経験や、大切にしてきたものを、少しずつ次につないでいく。

 

それは、その人の代わりを探すことではなく、会社の中ですでに育っているものを、さらに育てていくことなのかもしれません。

 

皆さんの会社にも、

「あの人がいてくれるから安心だ」

と思える社員さんがいらっしゃるでしょうか。

 

もし、誰かの顔が浮かんだなら、こんなことを考えてみてはいかがでしょうか。

 

その人が安心して誰かに渡せる仕事は、何から始められそうでしょうか。

「プレイヤーとしては、本当に優秀なんだけどね」

 

管理職の育成について話していると、そんな言葉が出てくることがあります。

 

「自分の仕事はしっかりやってくれる。でも、部下のことまでは、なかなか見られていないみたいで」

「もう少し自分で判断してほしいんだけど、結局こちらに確認が来るんですよね」

 

そして、こんな話になることもあります。

 

「一度、管理職研修でも受けさせた方がいいのかな」

 

中小企業の経営者にとって、管理職の育成は悩ましいテーマの一つだと思います。

 

もちろん、管理職研修が役に立つ場面はたくさんあります。

 

ただ、その前に、一つだけ考えてみたいことがあります。

 

そもそも、管理職に何を任せたいのでしょうか。

 

「管理職らしく動いてほしい」の中身

仕事ができる社員を管理職にした。

これまでの頑張りを見てきたからこそ、今度は自分の仕事だけでなく、周りの人やチームのことも見てほしい。

 

そんな期待があったのだと思います。

 

ところが、しばらく経っても、以前とあまり変わらない。

 

相変わらず、自分の仕事を一生懸命こなしている。

 

でも、部下の育成までは手が回っていない。

 

そんな姿を見ると、

「もう管理職なんだから、もう少し考えて動いてほしい」

と感じることもあるでしょう。

 

ここで少し考えてみたいのが、

 

「管理職らしく動いてほしい」とは、具体的にどういうことでしょうか。

 

例えば、

 

・部下を育ててほしい

・現場の仕事をまとめてほしい

・自分で判断してほしい

・社長の考えを現場に伝えてほしい

・現場の声を経営に届けてほしい

 

どれも大切な役割です。

 

でも、求められる経験や能力は、それぞれ違います。

 

部下を育ててほしいなら、人と向き合う経験が必要でしょう。

 

自分で判断してほしいなら、どこまで決めてよいのかを共有する必要があります。

 

社長と現場の橋渡しを期待するなら、会社がこれから目指す方向を話し合う時間も大切です。

 

つまり、

「どう育てるか」の前に、「何を担ってほしいのか」がある。

 

そんな順番で考えてみてもよいのではないでしょうか。

 

同じ管理職でも、会社によって役割は違う

管理職に求められる能力については、さまざまな本や研修で紹介されています。

もちろん、参考になることもたくさんあります。

 

ただ、それがそのまま自社に当てはまるとは限りません。

 

社員が10人の会社と、100人の会社。

社長が毎日現場に出ている会社と、複数の拠点がある会社。

これから事業を広げたい会社と、今ある仕事の質を高めたい会社。

 

会社の規模や状況によって、管理職に期待する役割も違ってくるはずです。

 

ある会社では、現場をまとめること。

別の会社では、若手社員を育てること。

また別の会社では、経営者と一緒に会社のこれからを考えること。

 

大切なのは、一般的な「理想の管理職」に近づけることだけではないと思います。

 

自分たちの会社では、これから何を担う人が必要なのか。

 

そこから考えてみることも、管理職育成の大切な出発点になるのではないでしょうか。

 

管理職本人も、迷っているかもしれません

少し、管理職の立場からも考えてみます。

 

例えば、現場で何か問題が起きたとき。

 

社長は、

「それくらい自分で判断してほしい」

と思っている。

 

でも、管理職本人は、

「勝手に決めてしまっていいのかな」

と迷っているかもしれません。

 

どこまで自分で決めてよいのか、聞く機会がなかったのかもしれません。

 

そうなると、念のため社長に確認する方が安心です。

 

社長から見ると、

「いつまでも自分で判断できない」

 

本人から見ると、

「確認してから進めた方がいい」

 

同じ行動でも、その背景には違う考えがあるのかもしれません。

 

もちろん、期待を伝えるだけですべてが解決するわけではありません。

経験を積むことも必要です。

 

ただ、何を期待されているのかが分からなければ、本人も動きにくいのではないでしょうか。

 

「もっと自分で考えてほしい」と伝える前に、

「どんなことを自分で判断してほしいのか」

「どんなときは相談してほしいのか」

 

そんなことを、一度話してみる。

 

それだけでも、少し見え方が変わるかもしれません。

 

「育てる」だけでなく、「一緒に担う」

管理職育成というと、研修や知識の習得に目が向きやすいものです。

 

もちろん、研修も大切です。

 

でも、管理職が育つ機会は、日々の仕事の中にもあります。

 

これまで社長が決めていたことを、次は管理職と一緒に考えてみる。

最初は一緒に判断しながら、少しずつ任せていく。

うまくいかなかったときも、すぐに答えを伝えるのではなく、「どう考えたのか」を聞いてみる。

 

そんな経験の積み重ねの中で、育っていくものもあると思います。

 

ただし、任せる以上は、必要な情報や判断する範囲を伝えることも大切です。

 

責任だけが増えて、権限や支えが伴わなければ、本人にとって大きな負担になってしまいます。

 

だからこそ、

「これから、この部分を一緒に担ってもらえないだろうか」

 

そんなふうに考えるところから始めてみてもよいのではないでしょうか。

 

管理職は、育成される存在であると同時に、これから会社を一緒につくっていく人でもあります。

 

社長が大切にしてきたものを伝える。

管理職本人が、どんなことを担っていきたいのかにも耳を傾ける。

そして、お互いの役割を少しずつ考えていく。

 

管理職だけが一方的に成長するのではなく、経営者も、これからの会社との関わり方を考えていく。

 

そんな関係の中で、会社も人も、ともに育っていくのだと思います。

 

もし今、

「うちの管理職は、なかなか育たないな」

 

と感じているとしたら、

今いる管理職の顔を、一人思い浮かべてみてください。

 

その人に、どんなことを期待しているでしょうか。

そして、その期待を、これまでどんな言葉で伝えてきたでしょうか。

 

最後に、一つだけ問いを置きたいと思います。

 

今いる管理職に、これから何を一緒に担ってほしいでしょうか。