~資地計築~ 建築デザイン 木下 稔 -75ページ目

熊の谷 〜無風マイナス4℃〜

大阪で住宅の設計打合せを終わり

そのまま米子へ

途中、いつもの「蒜山 ベアバレー スキー場」 のナイタースキーへ。

天気予報は雪ですが

無風での雪はカクテルライトに当たって幻想的

幻想的といえば
~資地計築~ 建築デザイン 木下 稔

唯一あるリフト降り口のこの


~資地計築~ 建築デザイン 木下 稔
何かわからんキャラクター

雪の鼻くそが出てますが、誰かのいたずらでしょうか。


~資地計築~ 建築デザイン 木下 稔
この通り、無人に近いゲレンデを

ツレもなく一人で滑ってます。

しかし、さすがに年ですね

耐久力が落ちました。

テコンドー辞めたせいでしょうか?


今日のコンディション

マイナス4℃で雪面はアイスバーン

結構楽しめました。




南極の冷蔵庫 〜勝手に閉ざす扉〜最終話

南極の冷蔵庫 ~勝手に閉ざす扉~⑤のつづきです。


奇跡的コーヒーが売れ
 

それが2時間で200杯近く売れると言う出来事に


4日目の朝


僕は意気揚々と食堂へ行き
 

ボイラーのお湯を確かめ
 

手際よくコーヒーを出せるように粉を入れて並べ
 

ゴンドラに行列が出来始めると
 

引戸をパーン
 


立て板に水のコーヒー売り口上が始まり


「よ!おもろいど!にいちゃん!」のかけ声に気を良くし


魔法に掛かったように売り口上が良くなって来ます。



この日、あれ程売れなかったコーヒー21000円を越える売上。
 

バブルの好景気も後押しして、高々100円のコーヒーに目くじら立てる人も少なかったということでしょうか。
 


その次の日はもう23000円の売上を上げ、


そうなってくると、調子に乗った僕も鼻息荒く
 

食堂、宿屋を闊歩していきます。

近寄りもしなかった従業員たちが近寄って来、媚びうるように話しかけて来ます。
 

しかしながら、このコーヒー売り


突然終わる事となります。



宿屋のおやじが「おい、木下くんよ。コーヒー売るのやめてくれ」
 

「え?何でですか?こんなに売れてるんだからもっとやりましょうよ!」
 

「いや、近所の食堂、宿屋から

『あそこのおかしなコーヒー売りのせいで、うちの自動販売機でコーヒーが売れない。止めさせろ!』


という苦情が来て…」
 

「そんなの、関係ないじゃないですか!

だったら近所の連中もコーヒー売ればいいじゃないですか。

無視、ムシ!」
 

「い、いやいや、止めてくれ、ここ(野沢温泉)は村社会だからダメなんだ。村八分になる!
 

「♪売れてるんだから、無理、ムリ♪」

おやじが止めるのも聞かずコーヒーを売りに行こうとする僕に
 

「頼む、木下くん、や、やめて~!!」
 


立場が逆転しました。



宿屋のおやじの商機について

「こんなインスタントコーヒーでお金取っていいの?」
 

「インスタントコーヒーをお盆で運んで売れる訳ない」

「こんなの売りつけられた客の方が迷惑と感じるでしょ」
 

「こんな仕事、俺がやるのはみっともない。バカバカしい」

「売れないのは宿屋のおやじのせい。俺のせいじゃない」

etc…



この時は分かりませんでした。

出来ない理由を選べば

この場に居る事もあたわぬ結果しかなく

出来る理由が思いつかなくとも

出来るまで疑わずやり続けることを選べば

僅かかもしれませんが

奇跡を呼ぶ結果もあることを。


この後、家を売っている会社とも知らず

入社した会社で「注文建築を売る」仕事をすることになりしたが

三流大学文系法学部卒業の僕が

「注文建築」を売る事が出来ました。

知識も経験もなかったのですが

この冬山でなり振り構わず売ったインスタントコーヒーが

この時の僕を支えました。


自分が「売る」という行為を明確に認識したとき

自己欺瞞でも尊大でもなく

「僕は南極で冷蔵庫を売る自信がある」

今もそう思っています。


南極で冷蔵庫を売ったことはありませんし、そんなの売れるかどうか分かりませんが

そのような理解、解決不可能な状況になっても、出来ない理由を並べて

「何もせずに階段に座り込むバイト君」には絶対にならないという

確固たる意思があるということです。


僕の前にいた9人は勝手に「売れない」と扉を閉ざしましたが

結果的には売れました。

この現在においても、人は勝手に扉を閉ざします


より良きを求めるなら

扉は「開くもの」でなないかと思いつつも。



僕の冬山時代

この後「伝説のいそうろう」となっていきますが

それはまた、別のお話。


僕のスキーの腕前

それもまた、別のお話。







南極の冷蔵庫 〜勝手に閉ざす扉〜⑤

南極の冷蔵庫 ~勝手に閉ざす扉~④のつづきです。

ゴンドラリフト待ちの列に


1杯のコーヒーも売る事が出来ずに迎えた3日目の朝


鉛で出来た服を着る方がよっぽど軽いと思いながら


ズタ袋に手足をくっつけただけの木偶人形が店に向かいます。
 

正月も3日を迎え、宿屋のおやじの商機は


この日が天王山だったと思います。


先にクビになった9人と比べ、確かに一番売る事に必死です。
 

この日、コンチクショー!と思いながら


食堂の4枚引戸をパーンと開き


吹っ切れたというより、開き直った人間はこうなるのかと


自分が全く他人と思えるほど
 

昨日より立て板に水で喋りまくります。


多分、コーヒーが冷めてしまう5分以内に
 


「どないかせなあかん!!」
 


という切迫感が、ここに来て急成長させたのだと考えます。



変な民芸調ハッピを着て、大声で必死にインスタントコーヒーを売る姿


冷静に考えれば、20歳の多感な学生にはかなり恥ずかしい事だったはずです。



しかし、そんな事すら気づかない程必死だったのです。



半分笑顔、半分泣きそうになりながら

みるみる冷めていくコーヒー
 

心の中で「嗚呼…どうしよう」と気持ちが折れそうになった時



ゴンドラリフト待ちの列から大きな声で



「おい!にいちゃん!コーヒーもらうわ!

あんた一昨日から見てるけど、おもろいな~!

あんたに感心してそのコーヒーもらうわ!」
 



奇跡が起こりました。
 



転けそうになりながら、声を掛けてくれた男性の下へ駆けつけると


「家族4人おるんや、4つ貰おか」
 

「あ、ありがとうございます!」
 

「あんたの言う通り、缶コーヒーよりあっついコーヒーやな明日も居るから、また買うたるわ!



この男性がそう言いながら買ったことがきっかけで
 


「おい、にいちゃん!こっちにもコーヒーくれ!」「おい!こっちもや!」
 

「おーい!こっちも来てくれ!」
 


堰を切ったように、こんなインスタントコーヒーが


飛ぶように売れて行くではありませんか!
 


食堂と行列を行き来して、ボイラーのお湯が無くなるほど売れまくり


わずか2時間で売上はなんと19000円を超え
 

200杯近くのコーヒーが売れました。
 


僕はお盆に乗せた100円玉の山と


コーヒーが売れて喜んでいる宿屋のおやじを呆然と見ながら


言葉を失っていました。



(これでまだ野沢温泉に残ることができた…)
 


しかし、これはまだ始まりにしか過ぎなかったのですが



~つづく~