先々週初め、久しぶりに、母校(高校)の前を
通ることになりました。今まで、ここを通る時は
いつも、無人の校庭、古びていく校舎を眺め、
感傷的になっていました。
この日、母校に近付いて行った車のフロント
ウィンドウに映った物、それは、工事用の幕が
掛けられた校舎でした。
「そんなことがあって欲しくない!」
悲痛な胸の僕の目に、さらに飛び込んできた物、
それは、一部が取り壊され、瓦礫と化した、校舎
の壁でした。しかも!僕が入学し、初めて学んだ
教室のある棟だったのです!
僕が通った幼稚園、小学校、中学校、高校は、
すべて統合により廃園、廃校になりました。
小学校が廃校になった時、
「どうせ、公民館になるんだろうけど、愛着なん
か、湧かないぞ!」
と思ったものでした。そして、朝、出勤時に車で
取り壊し中の校舎の前の道を進む僕の前に、
歩道から、「気を付け!」の姿勢で凝視する、高
齢男性の姿があったのを、強く憶えています。
恐らく、卒業生なのでしょう。
中学校も取り壊し現場を見続けました。今は、
病院が建っています。
こうして、唯一残っていた高校。
「いつか、ここも取り壊されてしまうのだろう
か・・・」
と切なくなっていました。
そのきて欲しくない日が、とうとうやってきたの
です。
週末に再び通ると、校舎はさらに多く壊されて
いました。
悲しみ、苦しみ、悩み、喜び、恋・・・僕の人生で
最も密度の濃かった3年間、勿論、想い出には
いつまでも残り続けます。
でも、実際に見ることが二度とできなくなると
いうことは、寂しくて寂しくてたまりません。
「ああ、クラスのみんなで星空にロマンを描いた
あの屋上のプラネタリウムも、壊されてしまうの
か!」
かつて、こんな句を詠んだことがあります。
「主(あるじ)無き母校に花が咲き誇り」
ここも、やがて、更地になり、何がしかの建物が
姿を現すのでしょう。でも、小学校取り壊しの時
に抱いた想いと同じ、
「決して、愛着なんか湧かないぞ!」
今は、その日、合掌する自分の姿を思い浮か
べています。