「安心した報せは、その後・・・」
翌朝、前夜までの豪雨が嘘のように、青空が
広がっていました。
父は、まだ、帰ってきていません。さすがに心配に
なりました。
「どうしたのだろう」
不安に、悶々とした時間が過ぎていきました。
そうしていると、誰かから、父が、
「避難所に無事にいる」
との報せが入り、
「ほう」
と安心しました。
「そうか、それなら、もう少ししたら、帰ってくるだろう」
と、待っていました。
それから数時間後。大人の人2人が来て、庭で、
母に一言、二言、話をしました。
「あの人がいなくなったら、私は!」
母が、悲しい声を上げました。僕は、その場面を、
居間の窓から見ていました。
父の遺体が見つかった・・・
とのことでした。
父の帰りを待つ願いは、叶わなくなってしまいました。
この報せも嘘であってほしかったのですが、悲しい
ことに、事実でした。
その後、お寺で、地区の合同葬が行われました。
父の棺の窓から、父の顔を覗いたのですが、薄暗く、
父のような、違うような、確信が持てません。父で
ないのなら、まだ、父の無事の望みがあります。
でも、兄が先に、明るい所で確認したのですから、
父なのでしょう。
合同葬が終わり、父は、物言わぬ形で、帰りたかった
家に帰ってきたのでした。