昭和51(1976)年9月11日③ | 瞳 まもるのブログ

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    「帰ってこない父」


  その衝撃から何時間経ったでしょうか。暗くなり、


 庭に出てみると、縁側のすぐ下まで、水が流れて


 いまず。縁の下から、幼稚園で使った、ゴムボール


 など、いろんな物が出てきています。


  「これは何だ!」


 驚き、周りを調べてみますと、家の裏側、屋根の高さ


 まである、畑の石垣が崩れ、我が家の壁を覆って


 います。そのため、雨が行き場を失い、溢れてしまっ


 ているのです。


  すぐ、父に帰って来てもらおうと勤務先に電話を


 かけると、


  「ちょっと前に出た」


 との答えでした。台風のため、いつもより、何時間も


 早い退勤ではあったのです。


  夜、激しい雨の中、


  「消防団が来ました!」の声と共に、


 消防団の皆さんが、この石垣の崩れによる浸水を


 見てくれました。


  その後も、父はまだ、帰ってきません。


 当日は、テレビのプロレス中継がありましたので、


 いつも楽しく見ていた父のこと、


  「プロレスを見ているのだろう」


 と、家族で呑気なことをいっていました。


  まさか、その時、そこで、そんなことが起こって


 いるとは、つゆ知らず・・・。


  父は、その日は帰ってきませんでした。僕と


 弟は、そのまま床につきました。


  母は、起きていたのかもしれません。