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ささやかだけれど、役に立つこと

読書、映画、時事ニュース等に関して感じたことをメモしています。忘れっぽいので、1年後にはきっと驚きをもって自分のブログを読めるはず。

(注意)以下の文章には結末に関する内容が書いてあります。

 

エミリー・ブラント主演、ガール・オン・ザ・トレインをやっと観た。ある殺人事件に巻き込まれた3人の女性(*)を軸に、それぞれの過去や葛藤が描かれる。(*エミリー・ブラント、ヘイリー・ベネット、レベッカ・ファーガソン)

 

最後までジェニファー・ローレンスがメガン役で出演していると勘違いし続けてしまった。。。今回はなんだか顔つきがちょっと違うなあと違和感を感じつつ、でもやっぱりジェニファー・ローレンスかなと思っていたが、ヘイリー・ベネットという女優だった。「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」や「イコライザー」に出ているらしいが、全く完璧に思い出せない。

 

ポスターと予告を見て「殺人事件が関係するみたいだけれど、基本的にはある女性の内面を描く物語」と勝手に思っていたが、予想以上にサスペンスものだった。

 

殺人事件に関するプロットはあまり興味が持てなかった。典型的過ぎる話だし、殺害の動機も軽薄。しかも普段から携帯で遣り取りしている相手で、自分の子供を妊娠した可能性のある女性を自宅近くの森で殺しておいて、落ち葉と土を適当にかぶせて立ち去るとか、あり得ないでしょう。

 

それに比較すると、レイチェル(エミリー・ブラント)の話はもう少し興味深かった。不妊治療、不倫、アルコール中毒、ちょっとした洗脳、DVなど家庭で起こりうる問題が目白押し。ただ、レイチェルの元夫がとても巧妙に彼女の記憶を操作していたか、というとそういうのでもない。彼女がアル中なのをいいことに、様々な責任を自分の都合の良いように押し付けていただけ、のようだ。

 

エミリー・ブラントの演技や作中の雰囲気はとても良かったし、メガン(ヘイリー・ベネット)の辛い過去と現在まで続く苦しみを描いた部分も惹き込まれただけに、レイチェルの元夫のパートの特に後半はやや残念。

 

ただ、最後にアナ(レベッカ・ファーガソン)がとった行動はやや説明不足で唐突な印象は残ったものの、なかなか良かった。

 

私立探偵フィリップ・マーロウが、いつものように奇妙な事件に巻き込まれる。今回の話は、ある女性の滞在先を突き止めて欲しいとの依頼を受けたことから始まる。その女性の隠された過去や、舞台となる街に影響力のある有力者の過去などが錯綜してマーロウを翻弄する。

 

今回もマーロウはクライアントに依頼料を突っ返したりまたもらったり、色々とややこしい遣り取りをする。ただの交渉術というよりは、彼の信念と規範意識に基づいて概ね本気でやっているらしい。基本的に不真面目な人生を送っているくせに、本質的な部分についてはかなり生真面目だ。

 

過去シリーズを読むと、自分が好意を持っていてしかも助けてあげたい人には、殆ど必ず依頼人になって欲しいとお願いしている。そうでないと十分に助けてあげられないからだ。警察とやり合うにも、ただの友人としてだと立場が弱いがクライアントのためという体裁を取ればかなり強く出られるのだ。今回も小切手の受領証に細々と文言を書いて契約関係があるかのような体裁を取ろうとしている。当の女性は全くそんなことを望んでいないけれど。

 

今回意外でもあり印象に残ったのは、以下のようなことだった。

  1. 警察がシリーズで(多分)初めてマーロウを公平で且つ誠実に扱った
  2. マーロウが殺し屋や用心棒に痛めつけられる場面がなかった
  3. マーロウが結構簡単に女性たちと関係を持った
  4. 女性の隠されていた過去が比較的あっさりしていて、それほど深刻な内容でもなかった
  5. 敵対する相手がマーロウに対して「きみには正に完敗したよ」とか「握手しよう」などと言うなど、過去シリーズでは考えられないほど軟弱だった
  6. 結末近くでは、珍しくマーロウが孤独な境遇について感傷的になる場面があった

ロング・グッドバイなど他の代表作と比較すると、登場人物の描写及び話の展開ともにやや軽い印象を受ける。実質的に遺作であり、気力的には厳しい状態で執筆されたらしい。

 

話の最後近くに、ある事柄がきっかけでマーロウの心境が文字通り一変する。その展開はマーロウらしくなく一読者としては寂しい気もしたが、マーロウ自身にとっては救いがあり、それはそれで良いのかもしれない。マーロウも歳をとったのだし。

 

 

 

ザ・シェイプ・オブ・ウォーター(2017)

監督:ギレルモ・デル・トロ

出演:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、オクタヴィア・スペンサー

この映画は、今年のベネチア国際映画祭コンペティション部門で金獅子賞を獲得したことで最近ニュースになった。

 

この映画を早く観たい理由は、この映画の監督であるギレルモ・デル・トロが過去に撮った作品(パシフィック・リム、パンズ・ラビリンスなど)が好きだから。

 

パシフィック・リムは大人になりきれない巨大ロボ好きのおっさんには胸が痛くなる作品だ。パンズ・ラビリンスは幻想的な映像が美しいが故に一層ストーリーが絶望的で、結末にはそれでいいような悪いような両義的な気持ちを持たざるをえない。

 

そんなデル・トロ監督の最新作は、60年代米国の秘密研究施設で清掃員として働く口がきけない女性Elisa(サリー・ホーキンス)が、施設で管理されている魚人と恋仲になる、というおとぎ話。おなじみのマイケル・シャノンもElisaの上司役として出演。どうやら、いつものあの強面で魚人を虐待している様子。

 

このサリー・ホーキンス、良く見るけど誰だっけかなあと思っていたら、「ブルージャスミン」でジャスミンの妹ジンジャーをやっていた人だった。強い印象を残す演技が多いにもかかわらず不思議と名前が覚えられない人だけれど(良い役者の証拠か?)、とうとう主演作品に出会えた。

 

予告編を観る限り、パンズ・ラビリンスと同様に幻想的な雰囲気が良かったけれど、それ以上にサリー・ホーキンスの素晴らしさが際立っていた。単に孤独だが良識のある女性、というだけでは済ませられない何かが観る者に迫ってくるようだ。

 

それにしてもこの映画のポスター、魚人がちょっとマッチョ過ぎるきらいはあるけれど、映画の雰囲気が良く表されていてとても良い。