これも平成23年(2011年)に出展し、入選した作品。五月の晴れた空に、こいのぼりが何匹も泳いでいる中で、まだ地面に係留されていて、これから上げられようとしている一匹を擬人化し、早く泳がせて!と言わせている。(次はここ)
「鯉のぼり」と父に関しては一つ、想い出がある。
昭和40年代の初め頃、家になぜかあった、岩波の「日本唱歌集」。ちょうど、幼稚園でオルガンを習い始めたときで、楽譜が読めるようになっていたので、その本の中の曲を、いくつか、口ずさんでいたら、夕方、帰宅した父親に習ったのが、尋常小学唱歌、第五学年用(文部省)大正二年版の「こいのぼり」である。
歌詞の中の知らない単語、いらか、とか、たちばな、とか、なかぞら、とかの意味も教えて貰ったような気がする。
それだけなら、記憶にも残らなかったのであろうが、そのちょうど翌日、幼稚園で、先生から「一人ずつみんなの前で好きな歌を歌いなさい」と言う指示があり、この歌を歌ったのである。歌う前に、先生に伴奏をして貰うために、曲名を言わねばならない。もし、「こいのぼり」と言ったら、きっと昭和版の屋根より高いの方を弾かれてしまうだろう。と、当時、年長組だった自分は必死に考えたのを覚えている。そこで思いついたのが、
〔先生〕何を歌いますか?
〔私〕いらか。
〔先生〕え?
〔私〕いらか。
〔先生〕…、黙って前奏を弾き始める。
〔私〕♪い~ら~か~の波と
何とか最後まで歌い上げ、先生に「よくこんな難しい歌を覚えたわね?誰から教わったの?」と聞かれ「お父さん」と答えた。
その日の夜、父親に話すと、「いらか? あれは題名はこいのぼり、ってんだがな」と言われたので、もし、こいのぼりと言ったら、先生はきっと屋根より~の方だと思うから、「いらか」と言ったんだと言うと、父親は「う~ん、そうだな、、、」と納得していた。
それにしても当時、「いらか」で、尋常小学校唱歌のこいのぼりを思い出してくれた、近先生(ちか先生)に感謝。
▽「なっとく童謡・唱歌」さんのサイトより拝借
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