蘭のブログ -68ページ目

「父親たちの星条旗」

アメリカ、ウィスコンシン州で葬儀屋を営むジョン・ドク・ブラッドリーは病で余命幾ばくも無い。
彼は今まで戦争について子供たちに語ったことは一切なかった。そんな彼の息子が周りの人たちから
聞き取った1945年の戦時中の様子が息子の目を通して語られる。

硫黄島に星条旗を立てる一枚の写真がアメリカの新聞を飾り、その旗を立てたうちの3人が帰国させら
れる。英雄として祭り上げられ戦争の資金集めのためのシンボルにされる。3人は英雄扱いされること
に違和感を覚えながらも協力せざるを得ない。



本当は写真に写っている旗は2本目であり、最初に立てられた星条旗があるということ。
戦場の悲惨さの中で、英雄という位置づけは不似合いであること。
もし英雄と呼ぶのにふさわしい人がいるとしたら、それは自分たちのことでは無く自分達を守り死ん
でいった他の仲間たちであること。


この思いを引きずったまま戦後を生きなければならなかった彼らの生きにくさが、戦時中の話に全く
触れなかった理由の一つだと思います。

「英雄とは人間が必要に駆られてつくるものだ。そうでもしないと命を犠牲にする行為は理解しがたい
からだ。父親たちが戦ったのは仲間のためだ。国のための戦いでも、死ぬのは友のため。共に戦った男
たちのためだ。」

最後の息子の台詞がすべてだと思います。


「ディア・ハンター」でも思いましたが、それにしてもアメリカという国は戦地にいる兵士は戦争と
いう悲惨さの中にいますが、その他のアメリカ国内にいるほとんどの人たちは特に日本の戦時中の様子
と比べると、なんとのどかに暮らしていることか。
唯一戦場になっていない国であるということをひしひしと感じました。

この映画では日本人の姿がはっきりと描かれていません。続く「硫黄島からの手紙」と対で見ると、
アメリカと日本両方の立場でこの硫黄島の戦いを見ることができます。

アメリカ軍は圧倒的に有利であり、軍隊は日本に比べリベラルではあるものの、戦場の兵士にとって戦争は日本もアメリカもなく、地獄なのだとつくづく思いました。

「白バラの祈り」

イメージ 1

「白バラの祈り」 2005年 ドイツ                             

          
1943年 反政府運動組織「白バラ」のメンバーでミュンヘン大学の学生のゾフィー・ショルは
同大学の医学生である兄ハンス・ショルと一緒にミュンヘン大学で反ナチ運動のビラを階段から
ばら撒いたところを大学職員に見つかりその場で逮捕されてしまう。
二人は反ナチのビラだとは知らずに階段から落としたと否認していたが、ハンスの机から大量の切手
やビラの草稿、ブローブストからの手紙などがでてきたことにより、裁判にかけられてしまう。
たとえ死刑が確定しても本来99日間の猶予があるはずであったにもかかわらず、ゾフィー、ハンス、
ブローブストの三人は判決の出たその日のうちにギロチンにかけられてしまう。



「白いバラ」はドイツのミュンヘン大学の学生が中心となって活動した非暴力主義の反ナチス運動組織
です。1942年から1943年にかけて活動し、その間に6冊のリーフレットを作成していますが、6冊目の
リーフレットをまいた際にゾフィーとハンスが逮捕され、その後メンバー6人が処刑されてしまったため、7冊目が出ることはありませんでした。



21歳のゾフィーの意志の強さにただただ驚くばかりです。冒頭では友人と音楽を聴きながら一緒に
口ずさむごく普通の女子大生なのですが、その最中に「出かけなければ…」といってアジトでのリーフ
レット作りに出かけていきます。学生としての普通の生活と、命をも脅かすような危険な反ナチス運動
とが同時に存在しているというのが戦時下というものなのだなと思いました。
自分達の命が危険だとわかっていても行動に移さざるを得なかった、そういう思いは二度としたくない
のですが。

「牛に願いを」

はじめ題名から敬遠していたのですが、このドラマはこの夏のクール
一番のお勧めドラマかもしれません…。


北海道北美別に東京から実習にきた関東農業大学の6人の
ひと夏の成長物語です。

このドラマが面白そうなのは、この6人が抱えているそれぞれの複雑な背景です。
登場人物一人一人がとてもよく設定されています。

主人公の高清水クンは、もともとこの地元の出身。
しかし稼業の酪農を継ぐつもりは全くなく、奨学金まで借りて大学へ通っているのに、
大学をやめて都会で暮らしたいと思っています。
実習先である実家の父親とことごとく対立します。

このチームのリーダー的存在の真野クンは、父親が農水省、兄が論文をバンバン出して
活躍している農学博士というエリート一家の次男です。
いつも期待されているのは兄で、自分の存在を家族になんとかアピールしたいと思っています。

若松クンは本来画家志望。環境デザイン科を美術学科と間違えて入学してしまったという
とぼけた学生です。性格もいたってマイペースでぼんやりしていて、つかみどころがありません。

藤井さんは在学中になんとか結婚相手をみつけようと頑張っています。そのために短大から
編入してきました。

末永さんは実家がペットフードで有名な会社を経営しているお嬢様で、実習など全くやる気が
ありません。作業にも非協力的でいつもヒラヒラした服を着ていて、常になるべくサボろうと
しています。

千葉さんは優等生で、自分の離散してしまった家族を思い、家族で楽しんでもらえるような
牧場を作りたいという夢を持っています。張り切りやですがその張り切りが空回りして
みんなに迷惑をかけ、落ち込みます。

克也クンは北美別で母親と二人で競走馬を育てている、素朴な青年です。
昔からよく知っていて兄と慕う高清水クンが帰ってきたことをとても喜んでいますが、
都会へ出て変わってしまった彼に戸惑いを感じています。


この人物設定を見ただけでも面白そうだと思いますが、さらにこの町が財政破綻に追い込まれ
そうで、それを回避するためには、この実習を成功させなければならないという政治的な問題も
絡んできて、事態はいよいよ複雑なのです。


実習生6人ともがそれぞれマイペースで、なかなかうまくまとまらないのですが、
この夏が終わるまでの間に、どのように変わっていくのか楽しみです。