最近は沢山の投資情報が溢れています。でも僕の経験に照らした場合、参考になるものとならないものが混在しています。僕が資産を80%以上も溶かした後に取った手法が最善だったかどうかは分かりません。世間一般の投資アドバイスに照らすと無謀に見えることでしょう。でも、結果的には立ち直ったので、そのお話をしてみたいと思います。
僕の資産はピークとボトムで計算すると88%下落しました。正直言って、お先真っ暗という心境で、精神的にはタフな方ですが、言葉に出来ない程に落ち込みました。株式投資に手を出すなと言っていた親に対して申し訳ない、と自己嫌悪に陥りました。
株はギャンブルなのか、ということについて多くの思索に耽りました。落ち込んだ時に相談した人からは自業自得だと言われ、親の忠告に素直に従わなかった傲慢さを猛省せよ、と言われたりもしました。当時の恋人からは、あなたは悪い事をしたから天罰が下ったのですよ、と言われ続けたのです。これは辛かった。皆ではありませんが、それまで理解者だと思っていた人たちが、僕の人間性を株価暴落をきっかけに否定してきたようでした。あなたはギャンブルをするような人には見えませんが、人は見かけによりませんね、と。
考え抜いた後に僕が出した結論は、「自分の信念を貫こう」ということでした。僕は破産をしたわけではないし、誰かに迷惑をかけたわけでもない。借金をして資産を溶かしたわけでもないのです。ただ、株式投資をして、資産を増やして、そしてそれを溶かしただけなのです。僕が投資を始めた理由は、会社の歯車として一生を終えるのではなく、資産を自分の力で増やしたかった。人によっては飲食店を始めたり会社を興したりしますが、僕は企業分析や経済情勢の分析がとても好きだった。だから株式投資を選んだのです。そして、他人に生殺与奪の命運を握られるのではなく、自分のことは自分で決めたい、本来、人は自給自足であるべきだ、そして大切な人たちと価値を共有して楽しく生きていくべきだ、と考えたからでした。
ということで、僕は、ふらふら、あたふたする投資ではなく、信念を貫く投資で勝負しようと決めました。教科書的な分散投資でほぼ全滅になっていた銘柄を売却したのです。
そして少ない軍資金を、たったの2銘柄に絞って集中投資することにしました。しかも、95%は1銘柄への集中投資としました。最低単位で投資したとしても分散するだけのお金がなかったのです。恐らく、これは世間一般で言われている投資戦略ではNGだろうと思います。でも、僕は沢山の本を読んで投資をしていましたが、結局はそれでうまく行ったことはなかった。だから、ギャンブルと言われようが、自分が徹底的に分析した銘柄に集中投資することにしたのです。
入手可能な決算書は穴があくほど何度も読み込みました。展示会などに足を運んで、その会社の従業員とも話をしました。新聞などのメディアの情報も漏れなく確認し、アナリストの評価も過去のものも含めて全て頭に叩き込んだのです。その上で、自分自身の考えをまとめるように努めました。トヨタではありませんが、何故を何回も繰り返して、投資価値の有無を言葉にしたのです。
僕の結論は、その銘柄は絶対に割安だ、というものでした。ただし、そのころのアナリストの評価は、この会社の身の丈に合わない設備投資がシナリオ通りの結果を出すかを注視する必要がある、というものでした。株価は継続的に下落していました。翻って、僕の考えは、その会社が行っている投資や戦略の結果が出てからでは、資産を10倍には出来ない、というものでした。市場の成長性、競合の状況、その会社の技術力、経営陣の姿勢、などを総合的に考えて、基本的にほぼ一点張りのギャンブルと言われても仕方がない方法ですが、この銘柄に集中投資をする方法を取ったのです。
しかし、株価というものは、いつ上がるか分かりません。予想に反して下がることも往々にして起こります。これは本当に苦しい忍耐が必要です。株価が継続的に下がっていくと、素人の自分は企業価値を見誤ったのか、と自信喪失になるのです。世間では10%下がると損切りしましょう、と言われます。僕がこの銘柄に投資を開始した後、更に30%以上も下落しました。この会社の株価が購入平均単価の10倍以上に上昇するまで5年以上もかかりました。しかし、上がりだすと一気に上がり、最終的には14倍程度まで上がりました。
虚しくなることもありましたが、株価が上がった時にどうするか、という思考訓練もしていました。しかし、株価が勢いよく上がると、もっと上がるのではないか、と思って売れないのです。それでも、30%を売却した後に、ウォッチしていた、他の割安に思える銘柄に分散させていきました。最終的には、全て売却しましたが、無理やり強制的に機械的売却を実行しました。思い入れが深くなると割高になったという事実を受け入れるのも案外と大変なのだと経験をして理解しました。
過去に本当に辛い経験をしたので、割安そうな銘柄が当たる確率は上昇しました。でも、僕は、いまだに当たった時は運が良かったと思っています。株は本当に難しい。価値がありそうでも、いつ株価が上がるかが分からないのです。理由も分からないままに、株価が継続的に下がることも日本ではよく起こります。そして、そうこうしている内に世の中の環境が変わり、ある筈の価値が消えてしまうこともあります。新聞、メディア、アナリスト、経営陣の方針、等もコロコロと変わることがあります。実際のプレイヤーでない人たちの評論は無責任なものがとても多いと感じることもしばしばでした。本当に魑魅魍魎が跋扈するような世界だと思います。
こういったことを経験していくと、最終的には、信念を貫き、しかも柔軟に動く、ということの大切さを実感します。よいものは取り入れ、それをもとに自分で考え、絶えず自分をアップデートしようと思います。自分が愚かな人間であることを絶えず思い出し、だからこそ成長できる楽しみがあると。
すべてのものにはサイクルがあります。会社が存続する限り、上がった株は下がり、下がった株は上がる時が来ます。人の心理は楽観と悲観の間を往復しますが、多くの場合、人は感情的になることで間違った判断をするものだと思います。そこを冷静にとらえれば、株価の変動に一喜一憂せず、一歩先の投資ができるようになると信じています。参考になれば幸いです。