「株価は短期的には人気投票の結果だが、長期的には本質的価値への収斂が見られる・・・」 これはバリュー投資家がBuy & Holdをして値上がりをじっくりと待つ場合のバックボーンだと思います。でも、これは本当でしょうか?リスクがある商品において、潜在的なリスクが顕在化する確率を考えた場合、その顕在化が明日起きる確率、1年以内に起きる確率、10年以内に起きる確率、という風に考えると、長期間特定銘柄を保有すればするほど、未来のある時点からリスクが顕在化する確率は上昇しますね。長期投資はリスクが低いという言葉で、思考停止にならないように注意する必要があります。
一般的に言われていることは真実の一部を表していることが殆どなので、自分の投資戦略に照らして解釈していく必要があると思います。リスクが顕在化しにくそうな銘柄を長期保有していれば、本質的価値が想定通りに変化しないか、更に促進された場合はReturnが増大すると思います。なので、神がかっているような目利きが、良い銘柄を選考した場合はバリュー投資家のバックボーンは正しいと言えます。しかしながら、世界中の投資家やAIが血眼になってファンダメンタル分析やチャート分析をしている中、個人投資家がそのような割安銘柄を独自に探し当てる確率は低いと言わざるを得ません。昔と違って今は情報格差が世界規模で縮小しているのです。オマハの賢人と呼ばれるウォーレン・バフェットでさえ、割安なバリュー株を見つけ出すことはできなくなったと思います。経済ショックが数年に一度起きるため、その時に下がった優良株を潤沢な手元キャッシュを使って買うという方法が、結果的なここ20年ほどの投資手法になっていると思います。天才的と言われる投資家でさえも、ノーマルな状態下での投資対象が極めて少なくなってしまったのです。余談が過ぎるかも知れませんが、バフェットの過去20年の投資成績はS&P500と比較しても勝敗では半々程度、アップルという銘柄がたたき出した利益に救われているという状況だと思います。
ところで、ウォーレン・バフェットと個人投資家の違いは、透明でフラットな時代においては、詰まるところ運用資金の多寡だと思います。個人投資家はウォーレン・バフェットが投資できないような株に投資することが可能なのです。流動性が比較的に低く、上場からの日数もそれほど長くない小型株であればバリュー株を見つけられる可能性があるということです。これはプロの投資家やAIが流動性不足やData不足であるという理由で選考対象から意図的に外すようにしているからでしょうね。そのような銘柄は、市場で価値が認められ始めると、様々な投資家が集まりだして、100倍株になる可能性もあります。ただ、そのようなことを期待して取り組むことは、投資というよりも投機に近い運用になるかも知れません。
えっ、じゃあ、何のためにそんな投機の話をしてるの?ということになるかと思いますが、これがリスク管理と関係するからです。投資はリスク管理のフィールドに対象を引き寄せることで可能になるというのが僕の考えです。
ところで、High Risk High Returnという言葉を聞いた人も多いと思いますが、これは本当でしょうか?私の経験では必ずしもそうとは限りません。Riskを数値化する場合、これは自分の総資産の変動率のバラツキを見るのが良いと思います。頻繁に倍になったり半分になるような投資はリスクが高いですよね。バラツキを小さく抑え、Returnとのバランスをとることが賢明だと思います。そして同じ程度のReturnでもバラツキを小さくする工夫は可能だと思います。これは金融の世界ではよく知られていてSharpe Ratio(シャープ・レシオ)で数値管理することが可能で、
(自分の総資産の収益率-無リスク資産の収益率)÷(自分の総資産の収益率の標準偏差)
で求めることができます。僕の場合は、無リスク資産の収益率は米国10年国債の利率を使って計算しています。この管理をする目的は自分の資産構成を変化させた場合、全体の総資産の変動率のバラツキがReturnに対してどのようになるかを可視化することです。言葉を代えると「Risk-Rewardを最適化する」ということを目標にしているのです。すると必然的に自分の総資産構成を最適化することが求められ、リスク管理の観点からどのようなポートフォリオが望ましいかが試行錯誤を通して数値化されていくのです。数値化は独善を防止し、結果を謙虚に受け止めることに大変役立つのです。