ますます英語ができない日本人(『STAY TUNE』の酷さ) | An Ulterior Weblog

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Read-only, not set communicative and periodical updating, sorry.

次を見てほしい。

https://www.youtube.com/watch?v=ma-VWL225XE

視聴した人は多いはずだ。車は関係ない。BGMを聴いて何か気が付いただろうか?このBGMは若者を中心として今とても人気らしい。

 

以前に『錦織圭の英語に違和感』という記事を書いた。彼の英語は真似ない方がよいという趣旨のものだが、今回も同じ。このBGMの歌詞がある。著作権があるので、ベタで埋め込みはせず、別枠表示にした。

http://www.uta-net.com/song/200718/

 

さて、タイトルだが、こんな表現は存在しないはず。 Stay tuned. ならある。引退したCNNの Larry King が自分の番組で Stay tuned! Don't go away! (チャンネルはそのままで!)の一連のフレーズは有名だ。最近の若者の言葉や黒人の言葉など、新しいあるいは崩れた表現がよくあるので断言はできないが、stay の用法から言ってこのタイトルはあり得ないし、意図している意味がわからない。おそらく、tunedのdが聴き取れなかったのだろう。Stay tuning ならあり得るし、そうかとも思ったが、tuning 東京では意味をなさない(tunedでもわからないのは同じだが)。tune、tuned、tuning、別にどれでもいいじゃないかって?相手が、「てにをはが」の使い方が出鱈目な会話をしてきて話が成立するか、イライラしないか、それぐらいはさすがにわかるだろう。

 

Oh Good time 癒えない like The “Dead rising” soon

 

意味不明。A good time (冠詞を付けなさい。もしくは複数)でも癒すことができない(何をかは記載がない)という意味なのだろうと思うが、それはthe dead(死人たち) がすぐに現れてくるからだと言いたいらしい。"Dead rising"が何かはすぐにわからなかった。固有名詞か何かかと思ったら、ゾンビゲームの商品名と判った。それで引用符で挟んでいたわけだ。しかし、引用符のままでは使えない。それにTheはないだろう。ここでは素直にtheでいい。likeの使い方もおかしいが、言いたいことがわからないのでどうしようもない。

 

Oh even a good time can't heal me, the dead (are) rising soon.

 

といったところが言いたいのだろうか。。。A good-timeであれば享楽的な過ごし方のことと言えるが(good time と a good time は全く別ものという認識がない)、とにかく英語が悪く、内容が不明過ぎでわからない。曲は良いのに、歌詞にゾンビゲームの名前とか、まるでお子様ランチ。

次にあーぁと溜息のこの文章。

 

I always searching for a piece so long time

 

名詞句とかの小さな塊りでなく、英文1つ丸々が日本の歌詞の中に入っているのはそう多くないと思うが、それがこのレベル。。。

中学生でもわかる欠点。どうして進行形なのにbe動詞がない?主語が I だから amかwasあるいはbeenといったものがついていないのは違反。分詞構文でないのは明白だからだ。さらに正確には amやwasは使えない。long timeがついているからだ。always まであるとなると完了形しかない。しかも、so long time などというおかしな表現を使っている。soを使うならso longで形容詞どまりとする。long timeが大事ならvery をつけるか such をつけるか。もちろん、冠詞を忘れてはいけない(どうしてもsoを使うならso long a timeだが、あまり使わないし、男性のきつい表現の中でこのやや女性っぽい印象はそぐわない)。long timeがなければ、always search for と現在形で表現することもできるが、感情が強そうな意図があるようなので、以下の方がやはりまだ適すと思われる。

 

I've always been searching for a piece such a long time.

 

句読点も全く考えていないので(幼児っぽく映る)、それも加えた。堅苦しい内容では無いから I've と短縮形にもした。 とここまで来ると十分かというと、この歌詞の内容とこの英文はまったく似合わないのだ。求める女性を a piece としているようだ。とすると、探し求めるという感覚とは合わない。the oneとか the queenみたいな表現が適切だ。「探す」という意味合いでsearch for を採用しているが、まず、会話とかで使われることは多くない。よく知らない相手にしても滅多にないだろう。使うとすれば評論ぽい対話の中で出てくる場合だ(他の出鱈目さからすると、なぜここだけ和英辞典で調べて引っ張ってきたようなことをするのか理解不能。伊藤和夫とか構文主義者は気にもしないだろうが)。普通は look for 。このことからしても、この詞を書いた人物は留学経験は無いだろう。無理に訳すと

 

「あまりの長間、ハッキリとはわからない上玉そうな女を、調査探索してばかりいた」

 

みたいな、ヘンテコな日本語になる。正直、どこもまともに納まっている部分がないので、手直しのしようがない。感覚だけで英文を書くとこういう何を言ってるのかさっぱりのものしかできて来ない。

以上から、この詞を作った人たちは英語の曲とかはよく聴いても現地での英語にほとんど触れていない。どれほど自分たちの英語がナンセンスかをわからない人間が書いているからこういうことが起きる。

 

この歌は、曲は90年代を想起させるちょっと古い感じのもの。歌詞の方は何がいいたいのか自分にはさっぱりだ。今の身の回りへの不満が爆発しているのは間違いないと思うが、どうも、これといった女性が見つからず、こうして東京をさまよっているとでも言っているのか。

大体、この歌には話の筋があるのか、それをきちんと歌詞にする気があるのかさえよくわからない。ボブ・ディランの最も対極にあるいい加減さに見える。(『ハリケーン(英文学の片鱗)』参照)

 

また、演奏バンド名が”Suchmos”(サチモス)となっている。Satchmoに肖っているとのことだが、地域の違いはあるにせよ、ほとんどの英米人は”サッチモゥズ”と発音するはずだ。つまり発音もわかっていない。Such-mosとすれば意図通りに呼んでくれるだろうが、本来の狙いとは違う(まあ、サッチモの偉大さを真似るのは土台無理な話だが)。

 

英語をきちんとしたレベルで使うことができるように、特に歌詞のようなレベルでまともにというには相当にハードルが高い。そのことについては『英語習得法』『英文法』のところで詳述した。今回の彼らは反例としていいサンプルだ。彼らは英語らしきものを作り上げ歌っているが、中身は無茶苦茶だ。どうしてか。上っ面ばかりでちゃんとやらなかったからだ。ではちゃんとやろうとするとどうなるか?かなりの時間を要する。だから、彼らのような若さで自在に使えることは勝手気儘にやっていてはできないことを見事に証明してくれている。簡単に習得することは不可能だ。両言語は違い過ぎる。

ほかにもおかしいところが一杯あるが面倒だ。この1件を、彼らの歌詞で言うとこうだろう。

 

英語を偶然に身につける?うんざりだもうっ!

きちんと学ばないヤツ もうGood night!

 

ゾンビは歌ってる本人たちだった。見た目生きたまともな人間のように見えて実はそうではない、というのが彼らの英語にそのまま当て嵌る。

では、彼らはどうすべきだったか。せいぜい、名詞句とか動詞句とかいった程度で抑え、かつ表現が正しいかどうかを辞書で調べるぐらいのことはすべきだった。もしくは日本語だけにする。手抜きの上に公表しているのだから目も当てられん。日本の歌の中の英語の質としては明らかに30年以上前より悪い。中学からやり直せ。いくら何でもこんなもので世界に打って出られたら、日本が笑い者になるだけだ。

 

 

ちゃんと英語を身に付けるなら、彼らの歌は害なだけだ。しっかりした英語での歌を聴くべき。下手に口ずさんで間違った英語が最初に沁みついたら取り返しがつかない。黒人ヴォーカルでも発音や歌い方は良いという見本を名曲中の名曲2つから。前者の歌詞はかなり易しい部類だ。

https://www.youtube.com/watch?v=youYairWMFM

https://www.youtube.com/watch?v=Njwasr1OOuc(ちなみに「ジャスコ 中央バス」と聞こえる)

いけない、いけない。Stayという単語からすると次のを上げないわけにはいかない。

https://www.youtube.com/watch?v=F9w9nG6O74k

オリジナルはもっと古い。

https://www.youtube.com/watch?v=BAVsEkgH_NQ

次は50年近く前の子供向け映画のエンディング。「Go ahead!」と正しい表現を使っている(航海用語の「前進」)。大阪万博を控え、アポロ11号が月面に着陸したとは言え、日本の子供向けアニメ映画で状況に適した英語表現が使われていたことに今は驚きを覚える。

https://www.youtube.com/watch?v=JOPjiEKIeZ4

音楽ならYouTube含め、学ぶ場はネット上にいくらでもある。その恩恵を存分に受けてきた世代でこの体たらく。日本の未来は明るい。まったく。

 

※※

出だしや間奏などでバックで喋っているフレーズは何と言ってるかはエフェクトや日本人式発音の崩れもあって聴き取れない。terrific goddam, terrific goddam counterspy ではないかと思うが(正解だとして、'terrific, goddam' のミスで terrific and goddamの意なのか'terrifically goddam'の間違いなのか不明)、冠詞に無頓着だし、まともなフレーズになってるか疑問で自信はない。

 

日本に生れ育った人間が英語に学校以外で最初に触れるのはTV・ラジオから流れる音楽と思う。親が映画やニューズを見ていたなどは多くないだろう。ビートルズ、カーペンターズ、ビリージョエル、U2、マドンナらの歌が好きでその意味を知りたいと勉強した人は少なくないはず。原書からなんてのは稀だろう。私もそう。そしてそれらの歌詞に驚いた。以来、中身の無い日本の歌にはほとんど興味を持っていない。もともと歌詞の意義が違う。向こうはメッセージ性が強い。文化における詩の位置づけの違いからだ。

英語は各地域で独自発展している。シンガポールやフィリピンなど。英本国とは違う英語ができる(米語もそう)。 pidgin English などと揶揄されることがある。だから日本語式でもいいという意見はあるだろう。残念ながら違う。日本のは日本語を通してできた和製英語という全くの別物。pidginでもない。和製英語は英語圏の人間には理解不能。今回の歌は和製英語でもなければpidginでもなく、単語は英語だがネイティブには暗号的にしか聞こえないような中身で英語ではない(ゾンビ英語?)。ネイティブに訊いてみるといい。日本滞在が長い、配偶者が日本人という人を除き頭が?となるはずだ。

なぜ、英文を挿れたか知る由もないが、ネットで世界で視聴できるところに配信した以上、当然海外でも視聴され、日本人の英語としてみられる。挿れなければ純粋に日本の歌として受け入れられるだろう。思うに英語と日本の歌詞は親和性が低い。単語程度にしておいた方がいいと思うし、バイリンガル級でないと無理だろう。らしかったのは宇多田ヒカルぐらいか。でも、英詩のエッセンスは感じられないから英語的とも言いにくい。日本人の新たな英語表現と言えるかは現時点では不明。STAY TUNEにその可能性はない。因みに非英語圏の有名歌手グループABBAの歌は英語だが、中身がないとネイティブも言う。

英歌詞から英米文化を覗き見れる。物の見方がわかる。The Eagles の Hotel California などはその典型。英文をただ取込んでも英語にならない。低い英語力ででも歌詞に入れたのは意図あってのことだろうが、日本を浅はかな国とみなされるようなことはやめてくれ、力をつけてからにしてくれということだ。

最後にエルトン・ジョンにご登場頂き、歌詞らしくない歌詞に曲をつけてもらおう。

https://www.youtube.com/watch?v=8GuI4UUZrmw