11月25日は、新宿・紀伊国屋ホールでセミナーがあった。

題して、『表象とアフォーダンス-芸術の身体-』


表象とアフォーダンス


アフォーダンスで有名な佐々木正人先生。
表象文化論の小林康夫先生。
都市・身体・イメージ論の田中純先生。

この3人によるディスカッションである。

ギブソン、エドワード・リード、セザンヌ、メルロ・ポンティ、ダーウィン、

ベンヤミン、シャルコー、ヘルダーリン、アルド・ロッシ、木村敏

などを引用しながら、収束することのない熱い議論が展開されていた。

しかし、さっぱり分らない・・・


会場の約90%の人は、目が点になっていた。
そして、残りの10%の人が、目を輝かせて頷いていたのである。


そこでの議論を引用しよう。

「感動するとは極めて能動的な受動性である」??

「世界の肉と私の肉が重なっている」??

「主観的時間の繰上げ」??
「微分回路的認知と積分回路的認知」??
「知覚は死んでも終わらない」??
「過去の索引と未来の兆候、それらをズラすのがアートである」??
「ミミズは知能をもっている」??

なんのことなのでしょうか?


興味深かったのは、佐々木先生による卵割りと靴下を履くときの行動観察であった。
そうか、靴下を履くとは、転ばないようにする意識が重要だったのか。


唯一わかったのは、アフォーダンスが二項関係なのか三項関係なのかということであった。
つまり、アフォーダンスに表象・解釈は必要か?ということである。


というか、まだやっていたのか、この議論・・・
ギブソンの『生態学的視覚論』とナイサーの『認知の構図』の対立は、すでに約30年前の論争である。
ノーマンが『誰のためのデザイン?』でアフォーダンスの新たな定義を確立したようにも思えたのに。


こんな不毛な議論をしているから、建築学界に「心理学は苦戦している」などと批判されるのである。


そろそろ、マーの『ビジョン』に歩を進める時期がきたのかもしれない。
私の嫌いな計算理論を消化する必要がありそうだ。



[今回の参考文献]


デザインの生態学―新しいデザインの教科書/後藤 武

¥2,310

Amazon.co.jp


ダーウィン的方法―運動からアフォーダンスへ/佐々木 正人
¥3,360
Amazon.co.jp
生態学的視覚論―ヒトの知覚世界を探る/古崎 敬
¥4,384
Amazon.co.jp
認知の構図―人間は現実をどのようにとらえるか/アルリック・ナイサー
¥1,838
Amazon.co.jp
誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論/D.A. ノーマン
¥3,465
Amazon.co.jp
ビジョン―視覚の計算理論と脳内表現/デビッド マー
¥3,000
Amazon.co.jp

生命倫理学で有名な問。
「人間の命の値段は、いったいいくらでしょう?」

人体の構成要素は、酸素60%、水素10%、炭素18%、窒素3%、

カルシウム1.5%、リン1%、

その他少量のイオウ、ナトリウム、鉄、塩素などで構成されている。


体重60kgの人間で考えた場合、

これらの構成要素を現在の市場で全部買うと、約2000円になる。

つまり、体重3000gの新生児で考えると、100円ということになるのである。
まさに、1コインベイビーというわけだ。

これが命の値段だろうか?


例えば、NYの同時多発テロにおける被害者への補償は、
2億4000万円くらいだったらしい。
一方、アフガニスタンでは13万円だったという。


例えば、中学生がいじめを苦に自殺し、親が学校に損害賠償を請求すると、
その額は平均6000万円くらいになるらしい。


また、どこかの国の大統領には40億円という懸賞金が懸けられていた。
(Dead or Alive)



そして、生命保険会社では人間の寿命を確率論で計算し、

人間の価値を決定している。

生涯の推定年収や病気の有無、健康状態などから算出するのである。


すべてに共通して言える事は、命の値段は何かしらの付加価値を付けられ、
他者に決定されているということだ。

自分の値段を自分で決められる人は、あまりいない。


自分の値段は、いくらくらいだろう?
でも、それを考えること自体が安っぽいことなのかもしれない。



[今回の参考文献]

生命倫理とは何か/市野川 容孝
¥2,520
Amazon.co.jp
生命倫理学入門/今井 道夫
¥2,520
Amazon.co.jp
ホムンクルス 6 (6)/山本 英夫
¥530
Amazon.co.jp

この企画は、日本各地に点在するミステリースポットを紹介していくものである。


第1回目の今夜は、岐阜県養老町にある「養老天命反転地」を紹介しよう。

「養老天命反転地」 は、荒川修作とMadeline Ginsの作品である。

    

広大な敷地内には、平坦な路が全くなく、すべて凹凸で構成されている。


突如として真っ暗な闇の中へ至ると思いきや、小高い丘が開けたりする。

家具やキッチンが壁で真っ二つになっている家があり、地図のようなオブジェがある。


    

この不可思議な庭には、

もののあはれ変容器
地霊
極限で似るものの家
陥入膜の径
想像のへそ


など、ユニークな名前がつけられたオブジェが点在している。

現代芸術に疎い私には理解不能である。


しかし、荒川修作氏 のいうように「養老天命反転地」が知覚・イメージ・建築の降り立つ場であるならば、

心理学にとって重要な場になるのかもしれない。

この地では、人間の感覚器官が全く役に立たないような感覚に陥る。
それでいて、身体と感覚との連動性を強く認識させられる。


身体の傾きによって、

遮蔽、陰影、光学的流動、テクスチャーなどが一様に定まらず、絶えず変化を繰り返す。


哲学的、心理学的、そして建築的な匂いがするのである。

ギブソンの『生態学的視覚論』をもう一度読み直そうと思う。

そんな「養老天命反転地」は、言うまでもなくミステリースポットであろう。



[今回の参考文献]


生態学的視覚論―ヒトの知覚世界を探る/古崎 敬

¥4,384

Amazon.co.jp


養老天命反転地―荒川修作+マドリン・ギンズ 建築的実験/毎日新聞社
¥2,548
Amazon.co.jp


「S(サディスト)ですか?M(マゾヒスト)ですか?」

という質問を会話の取っ掛かりとして頻繁に使用する。

これは、私の中で血液型と並び、可もなく不可もないし当たり障りもないが、

まぁまぁ盛り上がる話題として位置づけられている。
もちろん、話題をふる相手は選びますけども。

サディズムとは、

他者を精神的・肉体的に虐げることによって満足を得る性的倒錯である。

また、マゾヒズムとは

他者から身体的・精神的な虐待・苦痛を受けることによって満足を得る性的倒錯である。


ある変態によると、人間はサディズムとマゾヒズムのどちらかに偏ることはないという。
完全に偏っている人間は、かなり壊れているらしい。


これが本当だとすると、ドSとかドMという表現は、あまり適切ではないようだ。
また、「Sですか?Mですか?」という質問も改めなくてはならない。

「S寄りですか?M寄りですか?」という表現が適切なようだ。


しかし、そもそもSとMという性質が、

同じ数直線上に位置づけられるような1次元的なものなのかは、疑問が残るところである。

誰しもSという性質とMという性質を兼ね備えているように思えるからだ。
まるで、心理的両性具有のアニムスとアニマのようにである。


やはり私は、SとMの両方の性質を兼ね備えているように思う。

人をいじめるのが大好きだった。

ある友人から「遠距離恋愛は究極の放置プレーだ」と聞かされ、遠距離恋愛における放置プレーを身につけた。

しかし、それをある女の子に話したら、本気で説教されました。

一方、筋トレで自分の体をいじめ抜くことに快感を覚えてしまう。
ゼミの先生に言われる何気ないがきつい一言は、ある種の楽しみと化している。

だが、恐らくムチで叩かれたらキレるでしょう。
蝋を垂らされたらキレるでしょう。
それはそれとして。


[今回の参考文献]


心理学辞典

¥7,140

Amazon.co.jp


殺し屋1(イチ) 1 (1)/山本 英夫

¥510

Amazon.co.jp

庭は小宇宙だ。





庭を見ていると心が和む。
庭を見ていると心が吸い込まれるようだ。
庭を見るのは飽きない。

庭は命の洗濯だ。





ししおどしの音に脅されることもなく、盆栽の枝を誤って切り落とすこともない。

そこには、庭と私しかいない。

庭は見る者によって、見る角度によって違う様相を呈する。
庭は季節を感じさせ、喜びや悲しみを抱かせる。




かつて日本人は、庭で山を海を川を模し、庭で宇宙を創造していった。

小さな世界に大自然を感じ、自分の想いをぶつけた。

枯山水を見て、回遊式の庭園を歩き、虎の子渡しで禅問答を行うことで、想像力を養っていった。



春には桜・・・
夏には星・・・
秋には月・・・
冬には雪・・・

これを見て酒がまずいと感じる者は、心が病んでいるという。

じゃあ、大丈夫だ。
月を見ているだけで、お酒がこれほど美味く感じるのだから。


季節を感じ、大自然に想いを馳せる。
そして、自宅の庭を手入れしながら余生を送る。

それこそが想像力への扉を開くことにつながると信じてやまない。


[今回の参考文献]

人間環境学
¥3,900
株式会社 ビーケーワン
るろうに剣心 9 完全版―明治剣客浪漫譚 (9)/和月 伸宏
¥980
Amazon.co.jp
NEON GENESIS EVANGELION vol.01
¥3,990
Amazon.co.jp