昨夜の気分は最高で最悪だった。
べったりとひっついてるその女は亭主持ち。
アルコールからわき出す泡のような感情をふつふつと浮き上がらせて、
最後には気がぬけてしまう。

あの人への興味は失ってしまっていたはずなのに
同じ部屋にいると目で追ってしまうのはどういうわけだろう?
冷静に解析することなんて出来るわけがなくて
甘ったるい声で喋ってる女とあの人の隣をすり抜ける。
目も合わせずに。

黒いふちの眼鏡を書けた男の子が隣にやってくる。
「つまんなそうだね」
「そんなことないよ」
広い肩幅。
あの人にはなかったものだな、と想うと妙に切ない。
肩をじいと眺めながら話をしていたら、男の子の肩ごしにあの人が見えた。


目が合った。


あの人は微笑んだ。ほんの1,2秒ぐらいのこと。
何か口惜しくて目を逸らしてしまったけど、
もうあの微笑みを間近で見ることは無いんだろうなと想うと悲しかった。
男の子の顔はさっきより近くなっていたけど、ふりきって外へ出た。

手袋をはめる。
左手の薬指にはあの人がくれた指輪の日焼けの跡。
はずしてもはずしても自分がかけた呪縛はとけない。
学生時代に付き合っていたあの人からメールがきた。
わたしは(とても薄情なことに)すっかりあの人のことを忘れていたのだが、
「相変わらず不健康です」の一言で、
色々思い出してしまったのだった。

高校3年生の冬だった。
あっさり5ヶ月で去っていった恋人。
保健体育の実技にどっぷりだった所為で、受験は大失敗。
しかし間違ったことをしていたなんて思ったことは一度もなかった。


それから数年たった昨日、
しかも丁度別れを告げられた日と同じ日のメール。何か図っているのかとすら思った。
文末には「よかったらまたお茶でもしたいです。今も同じ家に住んでいます」。


正直、ぐらっときた。
あの顔で、あの手で、あの声で、あの舌で迫られたら断れる気がしなかった。
1日中返信をするべきか、するならどう書くべきか考えて、こう返信した。




「メール有り難うございます。忙しいので遠慮しておきます。」




メールを送り終わるとなんだか一仕事終えたような気がして、妙にほっとした。
そしていつもの友人に電話をする。
-あいつからメールがきたよ
-うん、そう、セックスが一番上手かった男。
そういうと友人は笑った。
わたしは忍び笑いをした。


決別した。
ルーズソックスの呪縛から。
思い出のあの曲から。
最後のメールから。
そして、あの人から。
『ああ、強くなったなぁ。』
朝よそんなに輝くなー♪
ヨエコ最高。

毎日自分を忙殺しようと思ってるけど、難しい。
憤死の次に難しいんじゃなかろうか、忙殺。
一瞬でも考えることを忘れられたらいいんだ。特にまわりのことを。

毎日自分のことばかり考えてられたらいいんだけど、そうもいかない。
ポヤポヤ妄想して好きな人がいて文章書いてご飯たべてた時間が懐かしい。
そういう時間がもっと欲しいなー今。24時間中23時間そういう時間でいいとすら思う。

あー、仕事ってなんのためにするんだろう。わからなくなってきました。