昨夜の気分は最高で最悪だった。
べったりとひっついてるその女は亭主持ち。
アルコールからわき出す泡のような感情をふつふつと浮き上がらせて、
最後には気がぬけてしまう。

あの人への興味は失ってしまっていたはずなのに
同じ部屋にいると目で追ってしまうのはどういうわけだろう?
冷静に解析することなんて出来るわけがなくて
甘ったるい声で喋ってる女とあの人の隣をすり抜ける。
目も合わせずに。

黒いふちの眼鏡を書けた男の子が隣にやってくる。
「つまんなそうだね」
「そんなことないよ」
広い肩幅。
あの人にはなかったものだな、と想うと妙に切ない。
肩をじいと眺めながら話をしていたら、男の子の肩ごしにあの人が見えた。


目が合った。


あの人は微笑んだ。ほんの1,2秒ぐらいのこと。
何か口惜しくて目を逸らしてしまったけど、
もうあの微笑みを間近で見ることは無いんだろうなと想うと悲しかった。
男の子の顔はさっきより近くなっていたけど、ふりきって外へ出た。

手袋をはめる。
左手の薬指にはあの人がくれた指輪の日焼けの跡。
はずしてもはずしても自分がかけた呪縛はとけない。