「偉大な嘘」
(原題:The Great Lie)
1941年4月5日公開。
ベティ・デイヴィスの名演技が光る傑作。
原作: ポーラン・バンクス「January Heights」
脚色:レノア・J・コフィ
監督:エドマンド・グールディング
キャスト:
- マギー・パターソン:ベティ・デイヴィス
- ピーター・ヴァン・アレン(マギーの夫):ジョージ・ブレント
- サンドラ・コヴァック:メアリー・アスター
- エイダ:ルシル・ワトソン
- ヴァイオレット:ハティ・マクダニエル
あらすじ:
飛行家で、探検家として知られているピート・ヴァン・アレン(ジョージ・ブレント)は、ある夜、女流ピアニストのサンドラ・コヴァック(メアリー・アスター)のパーティに招かれた。
そして彼は、したたかな酒やふん囲気にほろ酔い気分となり、われにもあらずサンドラと結婚してしまった。
翌日、サンドラがまだ正式に先夫と離婚していないことを知ると、結婚を後悔していた彼は、早速飛行機でかねての恋人マギー(ベティ・デイヴィス)のもとへ飛んでいった。
マギーは彼の幼なじみで、メアリーランドの農場に孤独の生活をしているのだが、新聞記事でピートの結婚を知り、悲しくあきらめていたのである。
マギーは、ピートとサンドラの結婚が正式でないことを打ち明けられると、彼の失策を許し、2人は結婚する。
新婚後、間もなくピートは政府の命令で、南米ゆき探検隊に加わり発っていった。
マギーはニューヨークの伯母エイダ(ルシル・ワトソン)の家でサンドラに紹介され、サンドラから近くピートの子を産むと打ち明けられる。
暫くして、南米へっいた探検隊の一行がジャングルに不時着して以後、消息を断った旨の報告がマギーのもとに届いた。愛する夫が死んだと信じたマギーは、サンドラの話を思い出し、せめて生まれる子供を夫のかたみに引取って育てたいと思った。
彼女はサンドラを訪れ、承諾を得ると、2人でアリゾナの牧場にある貸し別荘に移り、子供が生まれるまで、親身になってサンドラを世話した。
生まれた男の子を抱いて、マギーは我が家へ帰った。
ところが死んだと思ったピートは奇跡的に救われていて、その無事な姿を、ある日ひょっこりあらわしたのである。
マギーは子供を見て大喜びするピートに真相をいうに忍びず、自分の子供だとうそをつく。
一方、ピートの無事帰還を知ったサンドラは、事実を打ち明けてピートを取りもどそうとマギーを訪れてくる、
やむなくマギーは涙のうちに、愛児はサンドラが腹をいためた子であると告白する。
しかし、もはやピートのマギーに対する愛は変わらなかった。
サンドラは今は己の敗北を認め、子供をマギーの手に託して去ってゆくのだった。
コメント:
身勝手で浮気性の男を巡る二人の女性の生き様を描いた異色作である。
女性の母性を深く感じることが出来る作品になっている。
主役マギーを演じたベティ・デイヴィスの熱演が光る佳作である。
男を奪い合う相手役の女性・サンドラを演じたメアリー・アスターも、アカデミー賞助演女優賞を獲得している。
ニューヨーク・タイムズは、「ミス・デイビスが巻き込まれたこの複雑に絡み合ったジレンマには、ほとんど中身がない。だから、この完全に作り込まれた物語の唯一の言い訳は、ミス・デイビスが苦悩に対する優れた才能、母性、高潔さを発揮する機会を与えているということだ。そして、その役柄で彼女が立派に振る舞っていることは疑いようがない。メアリー・アスターは、冷たさと毒のあるうぬぼれの美しい対比を提供している。要するに、演技は印象的で、エドマンド・グールディングの演出は品格があるが、ストーリーは取るに足らないものだ。しかし、嘘は面白みを誘うので、女性たちはおそらく気に入るだろう。」と評した。
バラエティ誌は、この映画を「俳優たちの素晴らしい演技、エドマンド・グールディングの巧みな演出、レノア・コーヒーの簡潔な脚本」により「バランスのとれたドラマチックな娯楽作品」と評した。
あり得ない男女の恋と結婚と出産、育児を描いているメロドラマである。
自分の子ではない赤ん坊を自分が産んだと嘘を言ってまで育てるという涙ぐましい愛の物語だ。
こういうことは通常は起こりえないストーリーなのだが、名優デイヴィスが演じると、ちゃんとしたドラマになってしまうのだから、恐れ入る。
映画とは、原作と脚本と監督と俳優のすべてがかみ合わないと立派な映画にはならないと言われているが、こういう俳優の演技力でしっかり作品が出来上がるケースもあるのだ。
この映画は、Amazon Primeで英語版が動画配信されている:
https://www.amazon.com/Great-Lie-Bette-Davis/dp/B07CT2151R