「アレキサンダー」
(原題:Alexander)
2004年11月24日公開。
史上初めて世界を統一したとされるアレキサンダー大王の生涯を描いた歴史劇。
興行収入:$167,298,192。
制作費:1億5000万ドル。
脚本:オリヴァー・ストーン、クリストファー・カイル、レータ・カログリディス
監督:オリヴァー・ストーン
キャスト
- アレキサンダー: コリン・ファレル
- 少年時: コナー・パオロ
- オリンピアス: アンジェリーナ・ジョリー
- フィリッポス: ヴァル・キルマー
- プトレマイオス: アンソニー・ホプキンス
- 青年時: エリオット・コーワン
- ヘファイスティオン: ジャレッド・レト
- ロクサネ: ロザリオ・ドーソン
- カッサンドロス: ジョナサン・リース=マイヤーズ
- クレイトス: ゲイリー・ストレッチ
- アリストテレス: クリストファー・プラマー
- フィロタス: ジョセフ・モーガン
- ペルディッカス: ニール・ジャクソン
- ダレイオス3世: ラズ・デガン
- パルメニオン: ジョン・カヴァナー
- アッタロス: ニック・ダニング
- アンティゴノス: イアン・ビーティー
あらすじ
地中海を一望できるテラスで、エジプト王プトレマイオス(アンソニー・ホプキンス)が、若き日に仕えたアレキサンダー(コリン・ファレル)の生涯を語り始める。
紀元前356年、アレキサンダーは、マケドニア王フィリッポス(ヴァル・キルマー)とその妻オリンピアス(アンジェリーナ・ジョリー)との間に生まれる。
息子を王にすることだけに情熱を燃やす母と、権力を奪われることを恐れる父は絶えず争い、両親の愛に飢えたアレキサンダーは、ヘファイスティオン(ジャレッド・レト)ら同年代の友人との友情に心の平穏を見出していた。
そんなある日、フィリッポスが暗殺される。
突然、王になった20歳のアレキサンダーは、ギリシア、そして西アジア全域に進軍して圧勝し、24歳でエジプトの王となる。
紀元前331年には、世界最強と言われたペルシア帝国を壊滅させた。
アジア侵攻の途中で、アレキサンダーはバクトリアの王女ロクサネ(ロザリオ・ドーソン)を第一夫人に迎えるが、アジア人との結婚を将軍たちは激しく批判。
やがてアレキサンダーは仲間に命を狙われるようになり、疑わしい者を次々と処刑。
だんだん孤立していくアレキサンダーは、ついにインドの地を踏むが、バビロンに戻って新たな遠征計画に取り掛かった頃、32歳の若さで謎の突然死を遂げるのだった。
コメント
ギリシアの弱小国であったマケドニアとは?
当時は、世界がギリシャと、エジプト、ペルシャ、インドしかないと信じられていたらしい。
その中でマケドニアというギリシャ北部の小さな国の王様が世界制覇したというお話だ。
この映画は、ベトナム戦争の悲惨さを訴えた『プラトーン』や『7月4日に生まれて』で有名なオリバー・ストーンが2004年に制作した異色の映画である。
非常に評判が悪い。
この映画は、伝説的なマケドニアの英雄アレキサンダー大王の生涯を描いた歴史大作。
「トロイ」に「キング・アーサー」など、ハリウッドの歴史大作が流行していたことから、この題材を映画化してみようとストーンが思いついたようだ。
紀元前4世紀。
わずか20歳でマケドニア王に即位したアレキサンダーは、宿敵・ペルシャ帝国を攻め滅ぼすと、さらに東へと軍を進め、遠くインドまで軍を進めた。
しかし、世界の果てを目指したアレキサンダーの遠征は、その中途で挫折し、帰路についたアレキサンダーは32歳と言う若さでこの世を去る・・・
西洋文化と東洋文化が融合して生まれたヘレニズム文化を生んだきっかけにもなった、マケドニア軍の東方大遠・・・それを指揮したアレキサンダー大王とは、いかなる人物だったのか。
この映画は、アレキサンダー大王の友にして後のエジプト王、プトレマイオスの回想と言う形で、それを描き出そうとしている。
この映画、回想形式のよい所と悪い所が如実に出てしまっている感じだ。
確かに、32歳と言う短い生涯ではあるものの、人の一生を描くのに、大胆な省略と、後知恵によるまとめが出来るのは回想形式のいい所だろう。
悪い点は、どうしてもダイジェスト的な感じが強くなり、ドラマの連続性が感じられなくなってしまう事。
この辺り、語り手のプトレマイオスをもっと上手く使えなかったのか、と思うのだが・・・
また、この映画はドラマとしての盛り上がりが感じられないのも惜しい。
特に、前半のポイントである、ペルシャ軍を撃ち破るガウガメラの戦いの描写は、何とも締まらないものになっている。
大損害を出し、ペルシャ王ダライオスは取り逃がし・・・自らも傷つき、味方の負傷者たちの中で泣き崩れるアレキサンダーの姿を見て、これが「勝ち戦」だと思えるだろうか?
この直後の、バビロン入城のシーンに、「あれっ?」と思った人は少なくないだろう。
実際、この後のマケドニア軍は、統制を失って内部から崩壊して行くのだが・・・その終焉との対比の意味で、このガウガメラの戦いは(嘘でもいいから)映画としては、華やかに勝ち、栄光と歓喜に包まれたアレキサンダーを描いておくべきだった。
確かに見応えのある映画ではあるが、神に並び立つといわれた伝説の大王・アレキサンダーを描いた映画としては、何とも物足りない仕上がりになっている。
エピローグのプトレマイオスの台詞に、「我々はあの人の夢について行けなかった」とあるが、これはオリバー・ストーン監督の代弁ではなかっただろうか?(笑い)
恐らく、不世出の偉才、アレキサンダーの考える事など、常人の理解できる事ではないのだ。
この手の昔話を映画化する場合は、どうやったらウケるか、どうやったら真実味が出るかのいずれかだ。
だが、この映画は興行的にも1.6億米ドル程度の小ヒットで、映画評論家の評価は最低だったようだ。
制作費が1.5億米ドルだったようなので、宣伝費を含めるとまちがいなく赤字だ。
Rotten Tomatoesによれば、207件の評論のうち高評価は16%にあたる33件のみで、平均点は10点満点中4点、批評家の一致した見解は「3時間近くもある、この退屈で、語りの多すぎる、感情移入できない伝記映画は、アレキサンダーの人生を照らし出すことに失敗している。」となっている。
Metacriticによれば、42件の評論のうち、高評価は8件、賛否混在は16件、低評価は18件で、平均点は100点満点中39点となっている。
マケドニアという国が昔存在していたことは認知されているが、その後のマケドニアは、ローマ帝国、東ローマ帝国、オスマントルコなどに占領され続け、ずっと大国の下でその属国として生き延びてきた。
その後も、何度も分裂や併合を繰り返して、現在は「北マケドニア共和国」という名前で残っているだけのようだ。
前身はユーゴスラビア連邦の構成国であったらしいが、今は一応独立国ではある。
人口は2百万人。
地図で見るとこんなに小さい:
南はギリシャ、東はブルガリア、西はアルバニア、北はコソボと、四方を他国に囲まれた内陸国である。
現在開催中のパリ・オリンピックには、周囲の国の名前が時々出てくるが、マケドニアという国名はついぞ見たことがない。
アレキサンダー大王の歴史は本当だったのか信じられない元気のなさである。
まあ、紀元前にマケドニアという名前の国がギリシャの近くに存在していて、或る日、瞬間的にアレキサンダーという王様が飛び出してきて、たくさんの国に攻め入ったということがあったということだけ覚えていたら良いだろう。
あまり欧州の歴史に爪痕を残したという話ではないかも。
次回からは、古代ローマ史を描いた映画をレビューして行く。