石川達三の映画「四十八歳の抵抗」 初老のエロ狂いを面白おかしく描いたコメディ! | 人生・嵐も晴れもあり!

人生・嵐も晴れもあり!

人生はドラマ!
映画、音楽、文学、歴史、毎日の暮らしなどさまざまな分野についての情報やコメントをアップしています。

「四十八歳の抵抗」

 

四十八歳の抵抗|人生の盛りを終えようとする男の焦りが切ない【サライ名画館】 | サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト

 

1956年11月14日公開。

四十八歳のサラリーマンが十九歳の少女に魅せられて、倫理と自らの肉体に抵抗してゆく。

 

原作:石川達三「四十八歳の抵抗」

脚本:新藤兼人

監督:吉村公三郎

 

キャスト:

  • 西村耕太郎:山村聡
  • 妻さと子:杉村春子
  • 娘理枝:若尾文子
  • 能代雪江:小野道子
  • 弟・敬:川口浩
  • 曾我法介:船越英二
  • ユカ:雪村いづみ
  • マダム:村田知栄子
  • 島田課長:石黒達也
  • 矢崎部長:三津田健
  • 杉野の妻:竹里光子
  • 白竜館主人白井:伊東光一
  • 白竜館の番頭:春本不二夫
  • 松東ホテル主人:潮万太郎
  • モスコーの女A:瀬戸ヱニ子
  • モスコーの女B:大浜千鶴子

四十八歳の抵抗 作品詳細 | シネマNAVI

 

あらすじ

あと二年で初老の五十歳を迎える西村耕太郎(山村聡)は昭和火災保険の次長である。

妻さと子(杉村春子)と結婚適齢期の一人娘・理枝(若尾文子)との三人暮しは至極単調で毎日が退屈で仕方がない。

彼は、忠実な部下と称する曽我法介(船越英二)の誘いで、ふと過ぎにし青春の夢を追い、冒険を試みたくなった。

夜の熱海、銀座のキャバレー・モスコーと、法介の暗示にかかったように遍歴を始めた耕太郎は、バー・マルテで瑞々しい少女ユカ(雪村いづみ)を知り、このロマンティックな少女に情熱を燃やす。

そんな時、娘の理枝が突然の家出。

相手はなんと、耕太郎の下で働く能代雪江(小野道子)の弟・敬(川口浩)という、理枝より三つ年下の未成年の学生である。

耕太郎には世間の常識を超えた娘の行動が不可解。

じゅんじゅんと諭すが理枝は、彼を愛していると叫ぶばかりである。

敬のことを知っている法介の話から、耕太郎は、共々敬に会うことにした。

だが約束の場所で法介を待つ彼の前に現われたのはユカ。

法介は急用で来られないという。

止むなく、耕太郎はユカを食事に誘うが、酒に酔った彼女を思わず抱いてしまう。

二人は熱海へ遊びに行こうと約束した。

日曜日の午後、敬は結婚許可を求めて西村家を訪れる。

気負い立つ耕太郎も、物静かだが理路整然とした敬の態度に押され気味である。

敬の帰った後、理枝も彼の後を追い、もう家には戻らない。

雪江から、若い二人は大洗に行き、理枝は既に妊娠していると聞いた耕太郎は愕然とする。

ある日、漸くユカを熱海へ連れ出した耕太郎は、旅館の一室で結婚をと迫る。

だが彼の腕から飛び出すユカ。

その瞳が涙と共に“勘忍して、お嫁に行けなくなるの”と訴える。

二人の姿は美と醜の奇妙な対照を見せる。

耕太郎は孤独の中に敗北を痛感する。

翌朝、出社した彼は島田課長から、曽我製薬の社長御曹子だと判った法介が辞めたと聞く。

耕太郎は妻の電話で娘の帰宅を知り、改めて部下の雪江に若い二人を結ばせるよう願うのだった。

 

コメント:

 

原作は、石川達三の読売新聞連載小説。

難しい反戦小説などの社会派小説家という印象とは真逆の、初老のエロ狂いを描いた作品である。

 

現在の高齢化社会では48歳など、まだ働き盛りの真っ最中といったところで、とても老齢を手前にしがない抵抗を試みるという感じではないのだが、1950年代ぐらいではそういった世相だったのだろうか。

現在なら“抵抗”どころか、60歳定年後の第2の人生をどう元気に過ごすかを考えて楽しむか、下手をしてまだ子供が小さかったりすると、抵抗などしてる暇もなく働き続けなければならないかもしれない。

 

本作の山村聰が血迷う雪村いずみは、そこまで可愛いかというとちょっと首を捻りたくもなるが、老人にとっては若いということだけで充分に眩しく映るものであることは実感としては分かる。

 

若尾文子は娘役で恋人が川口浩なのだが、オープニングから二人のキスシーン、そして若尾文子が上半身だけだが、下着姿を見せてくれるなど、嬉しい展開。

 

やはり、ボディダブルのヌードなどより本物の下着姿の方がはるかに魅力的。

もっとも主役ではないので、その後の出演場面は限られてしまうのだが、こんな綺麗で可愛い恋人は、頼りない川口浩などにはもったいなく思うのは僻みか。

 

この作品は、ストーリーとしては、かなり当時斬新だったと思うが、ヒットしなかったようだ。

 

なぜだろうか。

 

おそらくキャスティングのミスだろう。

 

主人公の西村耕太郎を山村聡が演じているのは全く問題ない。

初老のエロ狂いを演じさせたら、この人の右に出る役者はいない。

 

肝心なのは、相手役のユカという少女だ。

なぜ、雪村いずみなのか。

 

この人は歌手としてがトップクラスだったが、俳優としては特に魅力を感じない。

絶対に、若尾文子にすべきだろう。

 

大映が成功した映画の典型は、ヒロインを若尾文子が演じ、その魅力に狂う年配の男が山村聡というコンビネーションなのである。

いくつも成功例がある。

 

この色香がただよう最高の美人女優を主人公の娘役にしてしまうとは!

 

おそらく娘の将来を気遣う初老の父という姿を撮りたかったのだろうが、観る者にとっては、やはり若尾文子の色香に狂う初老の男・山村聡ということでないと全然つまらない。

 

撮り直しせよ!