「オズの魔法使」
(原題:The Wizard of Oz)
1939年8月25日公開。
アメリカの童話作家の童話をテクニカラー映画化。
興行収入:$16,538,431。
原作:ライマン・フランク・ボーム『オズの魔法使い』
脚本:
監督:
キャスト:
ドロシー:ジュディ・ガーランド
オズの大魔法使い・占師マーヴェル:フランク・モーガン
案山子・ハンク:レイ・ボルジャー
ブリキ男・ヒッコリー:ジャック・ヘイリー
ライオン・ジーク:バート・ラー
グリンダ(北の良い魔女):ビリー・バーク
ミス・ガルチ(西の悪い魔女):マーガレット・ハミルトン
あらすじ:
カンザスの農場に住む少女ドロシー(ジュディ・ガーランド)はある日愛犬トトが近所のミス・ガルチ(マーガレット・ハミルトン)からいじめられたといって泣きながら帰ってきた。
だが、誰も相手にしてくれないので、トトと家出することにした。
田舎道を歩いていると家出を見破った占師マーヴェル(フランク・モーガン)から伯母さんが心配して病気になったといわれて、家へ帰る。
すると、折から大竜巻が襲来して農場は大騒ぎ。
こわくなってベッドにうつぶせになっていたところを、風で外れた窓枠が彼女の頭をしたたか打った。
--ふと気づくと、ドロシーは家もろとも大空高く吹きあげられ、やがてふわりと落ちたところは、見たこともない不思議なオズの国だった。
シャボン玉から現われた北の良い魔女グリンダ(ビリー・バーク)から、ここはマンチキン・ランド(小人の町)だと教えられる。
さらにグリンダは、ドロシーの家が落ちて、東の悪い魔女が押しつぶされて死んだと告げた。
そこへミス・ガルチそっくりの西の悪い魔女が現れた。
姉である東の魔女のルビーの靴を奪おうとしたが、グリンダによって靴はいつの間にかドロシーの足にあった。
西の魔女が去った後、グリンダは魔女の復讐がドロシーに向けられるのを心配して故郷へ帰るよう勧めるが、それにはずっと離れたエメラルド・シティに住むオズの大魔王の力を借りなくてはならないと言う。
こうしてドロシーはエメラルド・シティを目指して黄色いレンガの道を歩いて行くことになった。
ドロシーとトトは、途中、彼女をいつも可愛がってくれた農夫ハンクそっくりの、脳みそをほしがっている案山子(レイ・ボルジャ)と、同じくヒッコリーにうりふたつで鍛治屋が心を入れ忘れたため心をほしがっているブリキのきこり(ジャック・ヘイリー)と、ジークそっくりで、臆病なため勇気をほしがっているライオン(バート・ラー)を仲間に加えた。
エメラルド・シティの見えるケシの花畑に達したところ、西の魔女の魔術にかかってドロシーとライオンは眠ってしまったが、グリンダの力で事なきを得た。
そうして一同はようやくエメラルド・シティの城内に入ることができた。
オズの大魔王に対面すると、皆の望みを叶えてやるかわりに西の魔女の箒を持ってこいと命じられてしまう。
しかたなくドロシーたちが魔女の城へ向かったところ、途中、森の中で空飛ぶ猿の軍勢に襲われ、ドロシーとトトは魔女の城の一室に閉じ込められてしまった。
隙を見て逃げ出したトトの案内で、臆病ライオンまでが勇みたって城内に突進し、ドロシーを救い出したが、再び西の魔女が立ちはだかる。
魔女は炎を操って、藁で出来た案山子を焼こうとしたが、とっさにドロシーが水をかけて火を消した。
すると、その水がかかった魔女はみるみるうちに溶けてしまった。
一同は箒を持ってオズの大魔王のところへ行くが、トトの活躍で恐ろしいオズの大魔王の正体は、占師マーヴェルそっくりのいかさま魔法使いだと分かった。
しかし魔法使いは「案山子は旅の困難を切りぬけようと頭を使い、ライオンは危険に立ち向かい、ブリキ男はドロシーの運命に涙を流したから願いは果たされた」といい、3人の望みに叶う贈り物をくれた。
そうしてドロシーには一緒に気球でカンザスへ帰ることを提案した。
ところが出発間際ふとしたことから気球は魔法使いだけを乗せて舞い上がってしまい、ドロシーはオズの国に取り残されてしまった。
そこへグリンダが現れ、ドロシーの履いているルビーの靴こそ、彼女の願いを叶えてくれるものだと言う。
ドロシーは仲間に別れを告げて目を閉じた。
そして靴の踵を3回鳴らして、「お家がいちばん」と強く願うのだった。
--やがてドロシーが目を開けると、そこには窓枠で頭を打ったドロシーを心配する、伯父伯母をはじめ、ハンク、ヒッコリー、ジークがいた。
そこへドロシーの様子を見に来たマーヴェルもやって来た。
ドロシーはオズの国の不思議な出来事を皆に話して聞かせるが、きっと夢をみたのだろうと、誰も信じてはくれないのだった。
コメント:
主人公のドロシーは、原作では11歳だが、演じるのは当時16歳のジュディ・ガーランド。
この時すでにスターだったガーランドが歌う『虹の彼方に』は、今やスタンダード・ナンバーだ。
大人っぽい顔立ちのガーランドが、子供を演じるのに少しムリを感じるが、ガーランドの歌がなければ、本作の魅力が半減することは確かだ。
危険に対して、知恵と勇気と信頼を持って切り抜ける力の尊さを描いている。
そしてまた、本当に欲しい物は他人に頼るのではなく、自ら努力しなければならないという教訓もある。
では、ドロシーの願いである「お家に帰りたい」はどうか。
オズの大魔王がペテン師だったため、ドロシーはカンザスへ帰る術を失う。
一節によると、「黄色いレンガの道」は金本位体制の象徴であるとされている。
ドロシーは黄色いレンガの道(金)をたどっても帰る道を見つけることはできなった。
つまり金は何の役にはたたないという隠喩なのである。
原作は、世界的に有名なライマン・フランク・ボームの児童文学『オズの魔法使い』。
この作品の魅力は、カンザスに住む普通の少女ドロシーが、不思議の国のアリスよろしく、オズという不思議の国での冒険物語だけでなく、登場するキャラクターの魅力が最大の面白さだろう。
アリスの不思議の国にはヘンテコな変わり者しか登場しないが、オズの国にはヘンテコかつキュートで、好きにならずにいられないキャラクターが多数登場する。
その魅力あふれるキャラクターの代表格が、ドロシーと共に旅をする、カカシ、キコリ、ライオンだ。
本作は映画史上に残る名作である。
1939年に公開された作品だ。
人間界とは違う異世界を描くファンタジー作品だが、現代のような特撮技術がまだなかった時代なので、特撮技術は現代の目から見るとはっきり言ってチープだ。
だが、このチープさこそがオズの国の世界観とマッチしており、逆に現代では決して作ることのできない魅力となっている。
ゆえに名作として語り継がれているのである。
竜巻に飛ばされてたどり着いたオズの国。
モノクロで描かれるカンザスのシーンから一転、ドロシーがドアを開けた瞬間に色彩溢れるカラー映像で現れるオズの国。
このワクワク感!
カラフルでポップでオモチャ箱をひっくり返したようだ!
こうしてドロシーの冒険が始まった。
ドロシーはカンザスへ帰る道を尋ねるため、“エメラルドの都”に住むオズの大魔王に合うために黄色いレンガの道をたどる。
その旅の途中で出会うのが存在感たっぷりのキャラクターたちだ。
頭にはワラしか詰まっていないので、脳みそが欲しいカカシ。
体の中は空洞なので、心が欲しいブリキのキコリ。
百獣の王なのに臆病なため、勇気が欲しいライオン。
それぞれがそれぞれの欲しい物を貰うために、ドロシーと一緒にオズの大魔王に合いに行くことにする。
とにかくこれらのキャラクターが大変カワイイ。
ワラでできているため足腰が弱く、たびたび膝ガックンするカカシ。
何かにつけ泣いてしまって、そのつどサビついてしまうキコリ。
常に自分の尻尾を持ってモジモジしているライオン。
一流の喜劇役者が演じるキャラクターの妙。
ドロシーがカンザスへ帰る方法も、実は彼女の中にちゃんとある。
竜巻によって飛ばされたドロシーの家の下敷きになって死んだ東の悪い魔女が履いていた「ルビーの靴」。
北の良い魔女によってドロシーにもたらされたその靴には、願った場所へ行くことのできる魔力があった。
しかしそれは、“心からの願い”でなければならない。
単なる「お家に帰りたい」だけでは効力がないのである。
ドロシーは思う。
その家にはドロシーを愛して、心から心配してくれている「家族」がいるということを・・・。
「家」は「House」ではなく「Home」なのだということを・・・。
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